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この展覧会はまさに「漫画でわかる“ルーヴル美術館”」
アート好きや漫画好きはもちろん、そうでなくても、
誰もが知的好奇心を掻き立てられる初体験ができる!

東京、大阪、福岡と巡回し、話題となっていた展覧会がついに名古屋で開幕しました。この展覧会は、いまやクールジャパンの代表格として世界的な人気を誇る“漫画”を、普段慣れ親しんだ感覚とは違った視点で体験できる刺激的な場になっていたのが印象的です。人気声優・神谷浩史の音声ガイドや米津玄師によるイメージソングも聞けるなど盛り沢山の展覧会でした。 ※写真はクリックで拡大表示します

まず最初の感想は、事前に目にした「ルーヴルNo.9」というタイトルからは展覧会の内容が想像しづらかったのですが、実際に体験してみるとかなり分かりやすく面白い内容だったという嬉しい驚きがありました。美術展に行き慣れていない筆者にとっては展覧会自体に敷居の高いイメージがありました。しかし本展は鑑賞対象が“漫画”ということで、“絵”だけの鑑賞とは違い、“絵と文字を読む”まさに漫画を読むような感覚で、美術展初心者でも楽しめるハードルの低さも感じました。

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館内入ってすぐに今回選ばれた16人の漫画家の名前が並びます

今回の展示物である“漫画”は、フランス語圏では“バンド・デシネ(以下BD)”という独自の漫画文化として発展しており、“9番目の芸術(No.9)”とも呼ばれるほど注目されているそうです。2005年に世界最高峰の美術の殿堂・ルーヴル美術館が“漫画&BDでルーヴル美術館を表現する”というプロジェクトをスタート。本展ではそのプロジェクトに招待された日仏16人の漫画家による“ルーヴル美術館”をテーマとした漫画が展示されています。ちなみに日本人漫画家は7人。谷口ジロー(『孤独のグルメ』)、荒木飛呂彦(『ジョジョの奇妙な冒険』)、松本大洋(『ピンポン』)、ヤマザキマリ(『テルマエ・ロマエ』)、五十嵐大介(『リトル・フォレスト』)、坂本眞一(『イノサン』)、寺田克也(『西遊奇伝 大猿王』)です。なんと偶然にもこの7人全ての漫画を所有する、ただのファンである筆者にとって、彼らが世界的な漫画家として認められた事実は単純に嬉しかったです。むしろ国内でもっとメジャーな存在として知られるべきとの思いも強くしました。逆に言えば、この7人の作品が一堂に会すこのような展覧会は、今後2度とないかもしれません!※カッコ内は代表作

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音声ガイドのレンタルは600円

さて、まず入場するとすぐに音声ガイドの受付があります。ナビゲーターは人気声優・神谷浩史さん。各作品ごとに文字解説もあり神谷さんのナビと被る部分もあります。とはいえ音声でしか聞けない情報もあり、なにより神谷さんの軽やかでワクワクを誘う解説は、まるでアニメ作品のナレーションを聞く感覚で楽しめるのでオススメです。またマルチクリエイター・米津玄師による公式イメージソング『ナンバーナイン』を聞けるのも音声ガイドならではです。


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ニケ像を中心に漫画が乱舞!この漫画は残念ながらお触りNGですが、写真撮影はOK。SNS映えもよさそう

音声ガイドを借りた筆者を最初に出迎えてくれたのは、ルーヴル美術館を代表する展示作品「サモトラケのニケ」の原寸大レプリカ像と漫画で創られたインスタレーションです。その前を通り抜けるとシアターが現れます。シアターではルーヴル美術館の歴史やBDについて簡単に知ることができるアニメーション映像を見ることができ、本展への予備知識のない筆者にも最低限の情報がインストールされ、一気に興味が高まります。
 

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最初の展示はフランスのBD作家、クリスティアン・デュリユーの『魔法』。彼の作品に限らず、どの原画も大きくて驚き!

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『孤独のグルメ』で知られる谷口ジローの『千年の翼、百年の夢』。色と細部までの書き込みが美しい!

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エティエンヌ・ダヴォドーの『寄り目の犬』は、筆者的には言葉が分からないなりにユーモアを感じられた作品

そしていよいよ展示スペースです。最初に“漫画を読むような感覚”と書きましたが、もちろん漫画雑誌や単行本のようにページをめくるわけではなく、展示された原画とフキダシに入る文字(入っていないものやフランス語のものは原画の下に台詞が用意されています)を読んでいくスタイルです。ページの欄外に落書きがしてあったり、修正ペンで直してあるのが見てとれたりするのは原画ならでは!さらに基本的には多くの漫画がカラーなので、日本の漫画雑誌に慣れた目からすると、かなり美しくて、見入ってしまいます。
 

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荒木氏が展示内の映像で語っていた「日本の漫画はエンタメ寄り」という言葉に納得!フランスのBDはどちらかというとアート作品のよう。あくまで一般論です

個人的に印象的だったのは荒木飛呂彦『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の展示コーナー。荒木氏がルーヴル美術館に取材に行った場所の映像も見ることができ、原画とのリンクが分かるのも面白かったのですが、なにより作中の主人公・岸辺露伴の特大パネルと擬音のインスタレーションが、ジョジョ(の奇妙な冒険)好きの筆者としてはニンマリさせられる空間でした(擬音はジョジョの特徴のひとつ!)。他にもマルク=アントワーヌ・マチューの『レヴォリュ美術館の地下』では額縁が大量に出てくる作中のイメージを展示にも反映させていたり、エンキ・ビラルの『ルーヴルの亡霊たち』ではタイトル通り亡霊が現れそうな鳥肌が立つほどの雰囲気が漂っていたり。各漫画の世界観にあわせて原画の展示方法も作りこまれています。


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マルク=アントワーヌ・マチュー『レヴォリュ美術館の地下』。筆者はあやうく鏡にぶつかりそうに……

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松本大洋『ルーヴルの猫』は、全ページを原画で読めます!

正直なところ、全ての漫画の全てのページの原画が展示されているわけではないので、全てのストーリーをきちんと追えるわけではありません。とはいえ、どの漫画もテーマがルーヴル美術館なので、所蔵作品が数多く登場し、例えば“サモトラケのニケ”ひとつ取っても各漫画家によって扱い方が違う点などは展覧会を通して楽しめる面白ポイントだなと思いました。
 

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ニコラ・ド・クレシ―『氷河期』は「偏見や先入観のない人がルーヴルの所蔵品を見た時にどんな解釈をするか」がテーマの作品。水彩画の美しさと内容に惚れて筆者はBDを購入!

ちなみに、この展覧会は3章構成になっていて、16人の漫画家の漫画やその原画が展示されていますが、それら以外にも「No.9」をキーワードにしたルーヴル美術館の9つの名所や9つの名作、日本の漫画とBDとの9つの違いなども分かりやすく紹介されています。そのおかげで無知な筆者は知識が補完され、漫画をさらに深く楽しめるというなんとも親切な構成になっていたのもよかった!当初2時間ほどで見終える予定が、気付けば3時間以上も経っていて、時間を忘れるほど面白いとはこのことだと納得。というか、もう一度訪れて漫画を読みたい欲が止まりません。

漫画やBDという表現方法の自由さと可能性、各漫画家の想像力やユーモアがひしひしと伝わってきた本展。人生の多くのことを漫画から学んだ筆者は、今回改めて漫画の面白さを実感しました。さらにパリの有名な観光地としての認識しかなかったルーヴル美術館が、死ぬまでに絶対に行く場所のリストに加わったことも付け加えておきます。
 

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気になった漫画やBDは物販スペースで購入可能。クリアファイルやポストカード、Tシャツなどの他、米津玄師による本展オリジナルグッズも売っています!



取材・文:澤井 敏夫




(7月20日更新)


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DATA

9月3日(日)まで開催中
松坂屋美術館

一般-1300円
大学・高校生-1000円
中学・小学生-600円

※開館時間=10:00~19:30。
9/3(日)は10:00~18:00。
入館は閉館の30分前まで。期間中無休。
未就学児童無料。
障がい者手帳・特定疾患医療受給証を
お持ちの方とその付添の方1名まで無料。

公式サイト
http://manga-9art.com/

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