ホーム > インタビュー&レポート > “所在不明高齢者”“児童虐待死”“ドラッグ依存” 現代の社会問題に切り込みながら、希望を謳う作品が 2年以上ロングランを続け、ついに愛知に登場

“所在不明高齢者”“児童虐待死”“ドラッグ依存”
現代の社会問題に切り込みながら、希望を謳う作品が
2年以上ロングランを続け、ついに愛知に登場

監督は、劇団などの経験を経て、映画制作のために会社を設立、これが第一作目なる小林克人・健二の兄弟。オリジナル脚本で、完成まで5年の歳月をかけた思い入れのある映画だ。しかも、この作品、最初の公開は2年以上前だという。様々な地方を回ってロングランし続け、ついにこのエリアまでたどり着いた。現代の社会問題に切り込みつつ、不思議なストーリーの中で、人と人の繋がりを希望する作品。この映画が初めての演技経験となる、主人公・俊介役の大垣知哉が、この作品にかける思いを語った。

――この作品は、監督にとって、とても思い入れのある作品のようですが、大垣さんが最初にこの作品に出会ったときの感想を教えてください。

「最初はオーディションだったんです。自分は、この役で初めて演技をしたので、それまでと比べてといういのはないんですよね。ただ、脚本を頂いたときに、この本は自分でやってみたいと思ったし、やることへの責任も感じました。涙が止まらなかったんですよ、脚本をもらって読んだときに」

――主人公が初めてという意味ではなく、演技をすること自体がこの作品で初めてなんですね。初めてだというのに、大変難しい役どころだったんじゃないですか?
「これまではずっとミュージシャンをやってきたので、演技は初めてだんたんです。本当に難しかったですね~。でも何が1番難しかったかっていうと、関西弁を治すのが大変だったんですよ。俊樹役の日和くんも演技が初めてだったんですよね。だから監督が僕らにみっちり演技指導してくださって。セリフってどういう風に言うんですか?ってところから始まったんです。ゼロからのスタートなので、大変というよりガムシャラにやって、スタッフやキャストに支えられてできたと思います」

――今回の役柄は、自分と重なる部分はあったのですか?
「僕自身にも武田俊介という役柄に投影できる部分がありました。昔はあんまり人とコミュニケーションとりたくない、役のようにめんどくさいなって思ってる時代があったんです。僕は、音楽と出会うことによって、初めて人との関わりを知っていくわけです。そういうどうしようも出来なかった若かった時代をつい思い出してしまいました。たぶんこういう話って、誰でもあると思うんですよね。自分の中で追い込んでしまって、手を差し伸べてもほしくないっていう状況。そんな中で一歩進むためには、やっぱり人の関わりが必要だと思うんです」

――この作品は、“所在不明高齢者”“児童虐待死”“ドラッグ依存の若者”など、現代社会にある問題点がテーマになっています。実際に演じきられて思うことはありますか?
「僕その当時、ちょうど東京に出たばっかりだったんです。東京でひとり暮らししてると、横に誰が住んでるかわからない、挨拶も交わさないというのが、本当に生活の中にあったんです。その中で、人との繋がりを築くことはすごく難しいって、改めて実感したんですよね。自分のその時の状況もうまいことハマって、深く考えさせられました。だからこういうテーマで、今の若者たちに提案できるものがあるんじゃないかという思いもあります」

――公開から2年以上も各地をまわって上映され続けています。長期間上映の間にお客様の声を聞く機会も多いんじゃないでしょうか?
「よく監督とも話すのですが、3.11の震災以前と震災以降では、反応が大きく分かれたんですよ。3.11前は俊樹のようなゲイなどのマイノリティな人物とかに対して、こういうテーマはよく分からないという意見が多かったんです。だけど、3.11以降はそういう声は全く聞こえなくなった」

――もちろん作ったときは、震災が起こることは知らなかったわけですが、ちょうど震災で人との絆が見つめなおされたことが、この作品の思いとちょうどあったんでしょうね。
「1年半前に石巻で上映したんです。その近辺は、劇場の手前まで津波が押し寄せてきて、本当に多くの方が亡くなられたそうなんです。そんな方々に、これがどういう風に伝わるんだろうかと不安だったんですが、上映が1週間延び、3週間延びって、最終的に1000人以上の人が観てくださったんです。その中で本当に忘れられないことがあるんです。舞台挨拶のときに質疑応答があるんですが、1人の女性の方が自分の身の上話をはじめたんですよ。家族も会社も全部流されてって。そしたら会場の全員がワンワン泣き出したんです。皆の気持ちが開けられたのかどうかは分からないですけど、この映画は、今の時代に必要だし、たくさんの方に伝えていきたいなって本当に思えた瞬間でした」

――マイノリティ側の人と、それに対する人という図式があったと思います。それは実際にも起こりえていることですよね。
「よく監督が言うんですけど、これを作るにあたって、何を大切にしたかっていうと、誰も間違ってないということ。この中に悪人は誰もいないんですよね。対立する人も、おばあさんを守る意見として成立されてるわけなんですよ。そこが食い違うからこそ争いが起こる。社会を守るために、子供を守るためにって、よく意見を戦わせてると思うんですけど、どうしても意見がかみ合わないと揉め事が起こる。それは、自分の持論があって、自分の育ちや環境があって、うまいことかみ合わない。まさに今の日本、世界の在り方が出てるからこそ、人がもう1回見てみたいと思って、ここまでこれたのかなって思います」

――この作品は最後には、それぞれが一歩を踏み出し、人と繋がろうとする希望を感じさせて終わってますよね。
「監督が僕を選んだ理由を聞くと、両極端がある人間だったからって言うんです。冷たい顔と、1番最後の笑顔を持ってる人間だから選んだって。なので、最後のあの笑顔までは全然笑わないんですよね。最後の一瞬の笑顔でお客さんは救われるわけじゃないですか。こうやって観てもらうものに対して、絶対希望は残さないといけないと監督はずっと言ってはったんです。僕らもその話を聞いたうえで、そこに向かっていけたっていうのは大きかったです」

――思い入れのある作品が、こうやって上演され続けているのは嬉しいことですね。
「仙台で観に来てくださったご夫婦がいて、キャンピングカーでいろんなところへ旅行してる方なんですけど、そのキャンピングカーにこのポスターを貼らしてくれって言ってくださったんです。ポスター貼って宣伝して、各地にまで観にきてくれた。関西でも、自らチラシを配りたいっておっしゃってくれる方がいたり、観てくれた方が広めたいと思ってくださったというのが1番大きかったと思います。多くは12回観たって方もいらっしゃいましたからね。今度また名古屋にも来られると思うから更新することになりますけど(笑)」

――今って口コミというとネットだったりするんですが、本当に昔ながらの口コミですね! 人と人の繋がりっていう、作品の内容と広がり方までがリンクしてますよね。
「無名の監督、無名の役者で作った作品が、お客様に背中を押してもらって、2年以上ロングランさせて頂いてきました。僕ら自身が思いを込めて、このテーマは今の日本に必要なことだと心から信じて、伝えたいと思って今も活動しています。なので、もし何かのきっかけで興味をもたれた方には、ぜひ観て頂きたい。そして僕らはその反応を聞きたい。ブログでもツイッターでもいいので、反応をフィードバックして頂きたいです。そこから僕らも得るものがあると思うんです。エンタメっていうのは、そうやって双方向にならないと上に昇っていかないと思うんです。そういう係わり合いのツールになるひとつの作品だと思っています。そうやって、この映画が周りを巻き込めるひとつのツールだと思って観てもらえると、僕らも幸せです」




(4月 5日更新)


Check
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Movie data

「369のメトシエラ ‐奇跡の扉‐」

4月6日(土)公開
小牧コロナシネマワールドほかにて

【オフィシャルサイト】
http://www.junglewalk.co.jp/369/

[2009年/日本/JungleWalk]
監督:小林克人/小林健二
出演:大垣知哉/阿部百合子/日和佑貴/別府あゆみ/中野誠也

Story

孤独に生きる区役所勤めの俊介は、隣りの部屋から奇妙な歌が聞こえてくることに気付き、隣室を訪ねると、そこには老婆が独りで住んでいた。「自分の歌に惹かれる人間を400年もの間、待ち続けていた」と語る彼女を最初は不審に思う俊介だが、考えを改め始め……。