ホーム > インタビュー&レポート > 「相棒 劇場版Ⅲ」 和泉聖治監督、大谷亮介インタビュー 「とにかく右京さんの推理はすごいですよね。天才ですよ」

「相棒 劇場版Ⅲ」
和泉聖治監督、大谷亮介インタビュー
「とにかく右京さんの推理はすごいですよね。天才ですよ」

連続ドラマからスタートし、はや14年。水谷豊演じる杉下右京の相棒役も現在3人目。この秋から「Seoson12」が突入するも、未だ人気が衰えない大人気ドラマだ。そんな『相棒』劇場版第3弾が公開される。今回の舞台は、東京から300キロ離れた絶海の孤島。これまで以上にスケールアップした映像とミステリーが展開する。
和泉聖治監督と“トリオ・ザ・捜一”のひとりである大谷亮介に、『相棒』シリーズの、そして本作の魅力を語ってもらった。

――今回はこれまでの劇場版に比べてもスケール感がアップしてますよね。このアイデアというのは、どういうところから生まれたのでしょうか?
和泉監督「今回は絶海の孤島を舞台にしてますね。まず『相棒』の劇場版Ⅰのときは、長くシリーズが続いていくなか、視聴者の皆さん、それから我々スタッフも、1回スケール感の大きいスクリーンで『相棒』を観てみたいという思いがあったんですね。Ⅱはもっとコアな『相棒』ファンの人たちに観てもらえるような劇場版にしたいなって作りました。そして今回のⅢ。外で撮影しているといろんな方が集まってくるのですが、最近、若い人がものすごく多いんですよ。子どもなんかも『相棒だー相棒だー!』って友達呼びにいったり。そういう若い『相棒』ファンにも楽しんで頂けるような話にしたいなっていうのはあったんです。そういうことから、絶海の孤島を舞台にして、大自然の中の密室劇というのが面白いんじゃないかなと。だけど、若い人を意識するだけの、ただの刑事ドラマでは面白くない。『相棒』っていうものは、絶えず時代性や社会性とか、時代にリアリティをもたらしてきたと思うんですよ。そういう『相棒』ワールドもいれたいなと。だから今回は国防というのをテーマに取り上げました。今の若い人も、初めて『相棒』を観る人たちも、それからコアな『相棒』ファンの方たちにも、観終わった後にやっぱり『相棒』だったねと思ってもらえるような、そういう作品を目指しました」

――確かにいろんな要素が入りながら、最終的には『相棒』だなと思う作品でした。
和泉監督「最後にもうちょっと突っ込みたいなって思って、あの個室のシーンを作ったんです。特命の2人と民兵の隊長との会話の中で、国防論を語ってもらった。台本ではそれほど書いてなかったんですよ。だけど撮ってるうちにどんどん物足りなくなってきてね。やっぱり『相棒』の世界観には、そういうものがないと駄目だと。ということで、撮影中ではあったんですけど、本をもうちょっと膨らまして、ああいうエンディングにしたんです」

――最後のあのシーンは本当に印象的でした。ひとつの事柄に対してではなく、いろんな方向への問題提起とも受け取れるものでした。あれは監督が思ってたことを、現場で盛り込んでいったのでしょうか?

和泉監督「そうですね。いまやアジアって緊張状態があるじゃないですか。それは皆さんが感じてることだと思うけど、あんまり口には出しませんよね。今回の『相棒』では、そういうことを感じ取ってもらおうと。最初の本はそうじゃなかったんです。ただやっぱり作っていくと、民兵の彼らが何をしようとしてたのか、これはは答えを出さなくちゃいけないということがみえてきまして。例え撮影に入っていても、気になればなおすっていうのは、僕の鉄則ですから」

――今回の舞台は孤島ですが、「相棒」という作品でまさかジャングルに行くと思ってなかったのでは?
大谷「思ってなかったし、そこに我々が行けるとも思ってなかったんですよね。行けたことは俳優としてはとってもよかったですけど。ただ監督も仰ったように、最初本を読んだときはああいうラストじゃなかったので、これはどうなるんだろうなって。非常に難解に思えたんですね。特に、読むときはどうしても捜査一課の立場で読むので、これは難しいなと思ったんです。僕、自分の出演したシーン以外はどういう風にその後撮影が行われたのか知らなかったので、完成したのを劇場で観て、これはいけるなって思いました。こうなったんだ!うまくいった!って」

――大谷さんからみても、エンディングは違った印象だったんですね。

大谷「違いました。それに読んだときは、ジャングルの絵を、実体験として体験してないじゃないですか。だから会話や人間関係ばっかりが見えてるんです。だけどそれをジャングルの中で撮ったら、何でもないちょっとしたセリフに、すごく奥行きが出るんだなっていうのが、非常に興味深い経験でしたね」

――孤島で、ジャングルでと、そういったロケーションでの苦労はなかったんですか?

和泉監督「スタッフをいれて100名以上の人数が海を渡るわけだから、荷物の積み下ろしだけでも大変。川あり山あり谷ありですから、ジャングルの中に機材を持ち込むだけでも大変なんですよ。量も多いですからね。これをみんなで手分けして担ぎながら現場にいく。最初の頃は、何の撮影で来てるんだろうって思いましたよ(笑)。民兵のシーンから始まったので、違う作品を撮ってるような感じでした。だけど右京さんたちが来て、捜一が現れると、やっぱり『相棒』なんだと。そういう大変さはありましたけど、すぐに体も慣れたというか。だんだん楽しくなってきましたね」
大谷「民兵としてキャスティングされた俳優さんたちが、みんな勢いがよくてよかったんですよね。それぞれに俳優としてのライバル心もあるから、それがちょうど民兵の設定とマッチして、すごく生き生きとみんながやってたので、安心しました」

――ロケーションはジャングルなのに、右京たちは変わらずスーツというミスマッチな映像も面白いですよね。

和泉監督「そうですよね。最初、ジャングルの中でネクタイきちっとして革靴で入っていくっていうのは、まず絵としてどうなんだろうなと思いはしたんですよね。まさか半そでになるわけにもいかないし。薫ちゃんだったらアロハでも似合うかもしれないけど、薫ちゃんはもういないのでね(笑)。でも右京さんがあそこに登場すると、おかしくも何ともないんですよね。似合っちゃうんですよ。紅茶を飲むシーンがあるんですが、これこそリアリティがないなと確かに思ったんです。それで実際に右京さんに紅茶を飲んでもらったんですよ。そしたら絵になるんですよね。すごいチャーミングなシーンで、僕はすごい好きなんですけど、『相棒』のファンにとっても定番ですよね。これはきちっと撮らないと納得しないんじゃないかと」

――水谷豊さん演じる杉下右京のキャラクターが、「相棒」の魅力のひとつだと思うんですけど、これはどのように決まっていったんでしょうか。

和泉監督「これはキャラクタードラマなので、まず個性を作るってことなんですね。『相棒』を最初にやるとき、本は非常に面白いものができた。そこから、豊さんと杉下右京を作ろうと。杉下右京の衣装をいろいろ並べてそこから作りあげるんですよ。これが1番最初にめちゃくちゃうまくいったってことですね。豊さんと、『もっと英国調のスーツない?』とか、『サスペンダーをしようよ』とか、『豊さん、ちょっと髪の毛、オールバックにしてくれますか』とか話ながら。で、メガネをしましょう、紅茶を飲みましょうね、紅茶をひとつのアイテムとして生かしていこうよとか。そうやって作り上げていって、すでに1作目から杉下右京が出来上がりました」

――杉下右京という役柄があってこそなところはありますもんね。

和泉監督「右京さんの推理はとにかくすごいですよね。説得力があるんですよね。活字で読んでるより、俳優・水谷豊演じる杉下右京が話すと非常に説得力があって。僕ももちろん本を作る段階から何十回と読んでるわけですよ。だからわかってはいるんですが、いざ杉下右京が語りだすと、そういうことだったんだって思うことがある(笑)。これは驚きますね。今回も豊さん、蒸しかえるようなジャングルの中で推理していくんです。豊かさんは、真夏でも汗かかないですし、いつもスーツでネクタイをきちっとしてるんですよね。『豊さん、暑くないんですか?』って聞いたんですけど、『いや、全然。撮影入ると大丈夫』だって。セリフをいつ覚えてるかわからないですけど、本当に完璧に入ってますからね。大谷さんも経験あると思うんですけど、豊さんの長セリフあるじゃないですか。永遠と10分近くやって、後半に例えば大谷さんが一言二言っていうシーンの場合、まさか後半でNG出せないですよね。豊さんが一生懸命やって最後にこれって、みんなピリピリピリピリして…それが絵に出るんですよね」

――水谷豊さんが『相棒』に与えてる影響は大きそうですね。

和泉監督「そういう説明のシーンって、ある種、情報なんですよね。10ページぐらいあるのをワンカットでいきますから。俳優さんも大変なんですが、カットを割っていっちゃうとどうしてもただ説明を聞いてるだけになってくる。だから、映画でもテレビのときも長まわしですね。長まわしって、緊張感がどんどん出てくるんですよ。もちろんスタッフもものすごい緊張する。出演してる皆さんも緊張しますよね。この緊張感が映像に必ず出るんですよ。俳優さんにも動いてもらうけど、カメラにも動いてもらう。そうなると照明部も大変ですよね。10分近いカットをワンカットで撮るって、これはものすごく大変なことなんですよ。スタッフでNG出すわけにはいきませんからね。そういうお互いの緊張感が、すごい緊迫感となって観ていて飽きない」

――『相棒』の役者さんたちって、熱い感じがするんですけど、それはそういったところから感じる部分もあるんでしょうね。
大谷「『相棒』のチームは、長まわしでやるっていうシステムに慣れてるんですよね。だけど映画やるときはゲストの方がみえるじゃないですか。ゲストの方は慣れてないので、どうしてもそこは丁寧に時間をとらなくちゃいけない。だけど我々レギュラーはNG出せないって、いつも必死でやってます(笑)」
和泉監督「僕は、ある種のアクション演出だと自分で自負してるんですけどね。アクションって別に肉体と肉体がぶつかりあうだけがアクションじゃないと思うんですよ。10ページぐらいの長い話の中にもいろんな感情が含まれてるんですよ。僕はそれもアクションなのかなって。そういう撮り方をしたいなって。それが、いつの間にかだんだん“相棒いくと大変だぞ”、“セリフ覚えないと現場は入れないぞ”っていうような、長まわしが定着しちゃったのかな(笑)。だから、ゲストの方も、『相棒』が大変だって知ってるので、皆さんぴしっとセリフをいれてきます」

――「相棒」の現場が大変ってことは、もうすでに多くの人に知れ渡ってるんですね(笑)

和泉監督「そうですね、特に僕の回になると(笑)。僕は俳優さんをいじめてるつもりは全然ありませんけどね」

――監督は現場では厳しいんですか?

和泉監督「全然厳しくない(笑)」
大谷「厳しいって、僕らが思ってるニュアンスとは違いますね。ただ、“これをやる”っていう意図が明確なので、そこに対して緊張感はもちやすいですよね」

――NGはほとんどなく?

大谷「そうですね(笑)。例えば、川原くん(捜査一課・伊丹 憲一役)の位置が決まると、僕と山中くん(捜査一課・芹沢慶二役)の位置が決まるっていうのが、自ずとあるんで。あとスタッフも長年やってるチームなんで、どういう風に動けばいいかってみんなわかってる。ああいうチームワークはミスもないし、雰囲気もいい。現場で俳優が立ったとき、大丈夫だっていう安心感をもって演技できるんです。特に今回は、大自然の映像だから、大自然そのものがすごいんですよね。そこから室内にすっとシーンが変わっても全然違和感がない。絶海の孤島の湿度とかが、そのまんま同じ空気にあるように、映像としてちゃんと出来上がってるので、それがすごく嬉しいなって思いましたね」

――あと、やはり『相棒』というからには、コンビでの面白さがありますよね。このコンビ間のバランスみたいなものは、どのようにとってるんですか?

和泉監督「とにかく右京さんの推理はすごいですよね。天才ですよ。成宮くんが3人目の相棒として入ってくるときは大変だったと思いますよ。今までの作品もいっぱい観たと思うんですよね。その中で自分はどうしようって、非常にとまどいもあっただろうし。でもすぐ溶け込んできたかな。最初の薫ちゃんのときは、熱血刑事で感情がさっと表に出てしまう。それが面白くて。次の及川くんのときは、右京さんは変わりものではもちろんある、だけど天才である。それに対しての秀才の尊くん。天才と秀才の面白さ。じゃあ次はどうしようって。内面は親との確執とかいろいろ背負ってる青年なんですよね。若い刑事で、ちょっと無鉄砲なところもある。語り口調もいまどきの若い人っぽく、やんちゃにもうつる。それがどんどん成長していく過程を、このシリーズでみせてもいいんじゃないかなって。だからそういう話が多かったと思うんです。この映画はその集約版ですかね。次のシリーズからは、もっと成長したカイトくんになっていくんじゃないかなって思っています」




(4月26日更新)


Check

(C)2014「相棒 -劇場版III」パートナーズ

Movie data

映画「相棒-劇場版III-
巨大密室!特命係 絶海の孤島へ」

4月26日(土)公開
ミッドランドスクエアシネマほかにて

【オフィシャルサイト】
http://www.aibou-movie.jp/

[2014年/日本/東映]
監督:和泉聖治
出演:水谷豊/成宮寛貴/伊原剛志/釈由美子/風間トオル/渡辺大/吉田鋼太郎/宅麻伸/及川光博/石坂浩二

Story

東京から300キロ離れた、ある実業家が個人所有する太平洋の孤島で男性が死亡する事故が発生。ごくありふれた事故に思えたが、なぜか島では元自衛隊員たちが共同生活を送り、妙な噂が流れていた。警視庁特命係の杉下と甲斐は急遽、現地へ調査に向かう。