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マーチングバンドで音楽の力を描いた
映画「MARCHING-明日へ-」
中田新一監督と主演の竹富聖花インタビュー

ブラスを演奏しながら一糸乱れぬパフォーマンスを披露するマーチングバンド。参加してる人はいても映画の題材としては取り上げられることのなかった題材に取り組み映画化した「MARCHING-明日へ-」。実はこの映画の企画中に東日本大震災が起こり、内容を大幅に変更したという。音楽の力、復興への願いなど、様々な思いを詰め込んだ作品について、中田新一監督と主演の竹富聖花から話を聞いた。

――マーチングバンドをどうして映画にしようと思ったんですか?
中田監督「マーチングの映画って、アメリカでも『ドラムライン』ぐらいしかなくて、日本でもほとんど企画がなかったんです。だけど偶然、パフォーマンスしてる姿を生で観てね。そこでマーチングバンド協会の人が、『これは映画になりますか?』って言うわけなんですよ。すごい迫力ですから、これはテレビのちっちゃな画面ではなく、でかい画面の映画じゃないと伝わらないと思ったんです。だから、『これは映画しかないよ』って言ってしまい…墓穴を掘りましたね(笑)」
 
――しかし、3.11があって企画が止まってやり直したとのことですよね。最初の企画とはかなり違うのでしょうか?
中田監督「全然違う。最初はマーチングを普及するための音楽映画ですよね。マーチングなんて誰も知らなかったですからね。車の名前?ってぐらい。ブラスバンドが動くんだって言ってもよくわからないじゃないですか。企画はしたけどなかなかお金も集まらないし、本を書き始めて1年ぐらいたってようやく動きだしたときに3.11があったんです。どうしようかと。もともと港町である横浜と、福島県のちっちゃな漁村の話として書いてたものですから、そこから逃げるわけにもいかないしね。映画っていうのは、その時代時代を切り取るものだから、それは逃げないで書き換えようと。そしてまた1年ぐらいかけて本を書き直して、やっと去年本ができて、秋に撮影しました。そして今年やっと公開になりました。5年間かかりましたね」
 
――竹富さんは、マーチングバンドの映画でヒロインを務めると決まったときの率直な感想は?
竹富「もともと小学生のときにマーチングをやってたんですよ。夏だけですが、3年間ぐらい。だからすごい運命を感じました。やったって思って。だけどいざ練習に行ってみたらROBINS(今回の撮影に全面協力しているマーチングバンド・YOKOHAMA ROBINS)さんの練習と、自分がしてきた練習とは全然違っていて。ROBINSさんは全てが本格的で難しかったです」
 
――当時は何を吹いてたんですか?
竹富「トランペットです。自信あったんですけど、1日で自信崩壊です(笑)」
 
――今回、ジャズトランペッターの日野皓正さんが役者として出演されてますよね。音楽でのオファーでなく、最初から役者としてオファーされたとのことですが、どうしてなんですか?
中田監督「この映画で音楽を担当しているものが日野さんと親交があったんです。その人と、これは音楽映画ですから、音楽のレベルを落としちゃいけないと話をして。それでトランペットを吹くシーンがあるから、ぜひって日野さんに。サックスだったら渡辺貞夫さんだなって思って。それで『役者だけど出ない?』って聞いて。何の役っていうから、マスターだって答えて。『役者は嫌だけど、吹くんだったらちょっと吹けるよ』って言うからお願いしたんです」
 
――“ちょっと”っていうレベルじゃないですけどね(笑)
中田監督「ちょっとだましてやってもらった感じだよね。マスターの役なのに、なんで吹かなきゃいけないんだっていう(笑)」
 
――かなりの長い間、吹いてますよね。これは狙ってたんですか?
中田監督「そうじゃなくて、マスターが時間の合い間にちょろっと吹くっていうシーンなんですよ。好きなだけ吹いてって言ったら、ずっと吹いてるんですよね。カメラマンもずっと聴いてるんですよ。録音技師も、普通だったらいい加減にしろって言うところなのに、ずっと撮っちゃってて。あれ聴くとカットって言えないですよね(笑)」
 
――ジャズバーのマスターが1番上手っていう(笑)
中田監督「ヘンでしょ? 昔やってて今はダメになってジャズバーのマスターやってるっていう設定なのに(笑)」
 
――YOKOHAMA ROBINSについても教えてください。
中田監督「横浜はマーチングバンド発祥の地だから、いくつかあるんですよ。その中でもいつも全国上位に食い込んで、1番ファミリーっぽいのがYOKOHAMA ROBINSなんです。中学生もいるし、女の子が多いし。映画がファミリー向けの音楽映画ですから、プロっぽくないということもあって選びました。だけど音楽的レベルはすごい高いんですけどね。紅白でドリカムがトリをやったとき、バックで演奏してたのが彼らです。サザンのバックをやったこともあるみたい。だから映画でも吹き替えなし」
 
――漁村の名前を“祝舟(いわぶね)”ってしてますよね。とても印象的な名前ですが、これは架空の名前ですよね。
中田監督「福島県いわき市小名浜港っていうのがあるんだけど、ほとんど津波にやられちゃってるんです。そこをモデルにしてたんだけど、まさかそういう風には出せないからね、祝舟って。いわき市はマグロ漁船とか遠洋漁業に出るんだけど、それをブラスバンドで見送ってたんですよ。だから70歳のじじいもね、人のこと言える年じゃないですけど(笑)、みんなやってるんですよ。いわき高校とかも吹奏楽でベスト3に入る実力ですし、子供の頃からやっていて文化として根付いてるんです。それが津波のせいで途絶えちゃった。迎えるっていうのは、お祝いですよね。マグロ取って帰ってきたっていう。そういうのは福島だけじゃなくて、全国にずいぶんあるんですよ。だから前向きな意味でつけました」
 
――マーチングバンドを演じるにあたって、かなり大変だったんじゃないですか?
竹富「みんなで練習するシーンがあって、リハーサルからずっと撮ってたんです。最初はバラついてるんですけど、やってくうちにだんだん揃っていくんですよね。目に見えて成長が感じられるのは嬉しかったです」
 
――達成感もあったんじゃないですか?
竹富「私は1ヶ月間だけ練習して撮影入ったんですけど、ROBINSさんは本当に大変だったんですよ。昼休憩しかなくて、自分のプライベートな時間を削ってまで楽器にのめり込んでますから。演奏し終わったあとの達成感は、一緒の現場にいてわかりました。終わったあと、こっちまでうるっときました」
 
――東日本大震災の話が入ってるから、震災映画だとみがちですけど、根幹は音楽映画ですよね。それは最後にマーチングバンドの演奏が途切れず10分ほど続くシーンで実感しました。
中田監督「キャメラを5台入れて朝から夜までずっとやってました。俳優さんはメイクまでいれると朝7時くらいから夜の10時くらいまで。それでも撮りきれてないぐらい。あれ8分もあるんですよ。みんなそんなにもたないって言うんだけど、切るわけにはいかないからね。しかもなるべく引いたままで見せなきゃいけないしね。普通映画だからアップも撮りますよ。だけど、これは音楽を聞かせる、ドリル(隊列を組み、歩きながら演奏、演技すること)を見せるってことを目的に撮ったんですよ。切ったらダメだって思ったんです。観てもらえたらわかるんじゃないかな」
 
――この映画をどういう人に観てほしいですか?
竹富「本当に1番大変だったのはROBINSさんだと思うんです。彼らはマーチングを愛してるから、この映画を観て、マーチングを好きになってくれる人が増えたらいいなってすごく思います」
中田監督「音楽を目指す人だけじゃなくて、人生を考えようとしてる若者には観てほしいですね。何でこんなことに一生懸命になってるか、達成感を感じてほしい。旅立ちの話ですからね」



(8月 2日更新)


Check

(C)2014 MARCHING株式会社

Movie data

映画「MARCHING-明日へ-」

8月2日(土)公開
名演小劇場にて

【オフィシャルサイト】
http://www.marching-movie.jp/

[2014年/日本/MARCHING配給委員会]
監督:中田新一
出演:竹富聖花/桜田通/日野皓正/西郷輝彦

Story

横浜で活動するマーチング・バンド“ヨコハマ・ジーベック”は、全国大会優勝を目標に掲げて練習に励んでいる。しかしメンバーは、仕事との両立などのさまざまな悩みを抱えていた。隊長のマリはバンドをひとつにしようと心を砕くが、新たな問題が持ち上がる。