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映画「ダブルミンツ」田中俊介インタビュー
「ひとつの言葉では表現できないものが
この二人の間にはあると感じています」

市川光央と壱河光夫。かつて強者と弱者として主従関係に陥った、同じ音の名前を持つ二人の男の愛憎を衝撃的な結末と共に描いた、中村明日美子の原作漫画を映画化した作品「ダブルミンツ」が公開される。
主演を務めるのは、数々の話題作に出演している実力派俳優・淵上泰史と、男性エンターテインメントグループ・BOYS AND MENのメンバーとして活躍する田中俊介。田中演じる冷酷で高圧的な市川と、その彼に下僕のような扱いを受けた淵上演じる壱河。時を経て再会した二人が、犯罪に手を染めつつも新しい関係を築いていく様を、同性愛や暴力といった要素を絡めて描き出す。愛情か依存か、簡単には理解できないいびつで純粋な二人の関係に惹きつけられてしまう作品だ。
映画について、市川光央役を演じた田中俊介に話を聞いた。

――かなり衝撃的な内容の作品ですが、オファーがあった時はどんな気持ちでしたか?
「最初にお話をいただいたのはクランクインの1年くらい前、2015年の9月くらいでした。原作を読ませていただいたら、すごい衝撃を受けて。僕が全く知らなかった世界でしたし、作中で描かれている同性愛や、作品の中に出てくるギリシャ神話の“アンドロギュノス”といった、愛についての哲学的なところも学びました。作品を理解するのにめちゃくちゃ時間がかかりましたね」

――今までに出演された作品とはまた違う感じですよね。キャラクターの作り方については、この映画ならではの取り組みなどはされましたか?
「僕が演じる市川光央が、同じ名前を持つ壱河光夫を執拗に意識して求めているのが、本当は愛なのか何なのか?それともこれは共依存なのか?というところがすごく難しかったです。なので、いろんな書物や同性愛を扱った映画、特に他のアジア圏など世界の映画を見て勉強しました。海外に比べると、日本はまだその面では凝り固まった考え方が多いと思うので、まず自分がしっかり受け入れるようにしないといけないなと」

――なるほど。ビジュアル面もかなり尖った、普段の田中さんとは違う雰囲気ですが、そちらについてはいかがですか?
「原作漫画のビジュアルに近づけたいと思ったので、ダイエットしました。原作のキャラクターは体格が細いんですが、僕は身体を鍛えていたので筋肉ゴリゴリで(笑)。それも全部落として、最終的に14キロくらい体重を減らしました。ビジュアル的に寄せたいのもありましたが、自分が今まで経験したことがないような感覚の持ち主なので、その感覚に少しでも近づきたかったんです。痩せることによってすごく神経が研ぎ澄まされるタイミングがあって、そういう時に今まで自分から出てこなかった発想だったり、感覚が感じられました。そういったいろんなアプローチをして、市川光央に近づいていきました」

――壱河光夫役の淵上泰史さんとは、どのように二人の世界を作っていかれたのでしょう?
「この二人の関係はすごく複雑で理解しがたいものなので、淵上さんとコミュニケーションを取って距離を詰めた方がいいのか迷ったんです。でもこの二人の、他を寄せ付けない世界観みたいなのは、微妙な距離感を保った方がいいのかなと。なので、あえて淵上さんと仲良くなるようなコミュニケーションの取り方はしなかったですね。淵上さんも、僕がそういう気持ちでいたのを人から聞いて分かってくださっていたみたいです。この間仕事で久しぶりにお会いしましたが、二人とも完全に役が抜けて、田中俊介と淵上さんとして会ったので、なんかすごく安心しましたね。『あの時は大変でしたね!』って話したり(笑)。ようやく打ち解けたような感覚がありました」

――内田英治監督とは、印象に残っているやり取りなどありましたか?
「撮影前のリハーサルなどでも徹底的に言われたのは、『とにかく内側だ。芝居は絶対にするな』ということでした。今回の作品は、感情を内側から引っ張り出す作業だから、光央と同じ経験はしていなくとも、それに近い感情をすり寄せて引っ張り出すことを意識しろと言われて、それは徹底的にやりましたね。撮影に入る前から“市川光央”を徹底的に作り込んで、監督もそれを見てくださっていたので、撮影中は自由にやらせていただきました。僕はそんな感覚はなかったですけど、ちょっと気を緩めると芝居をしてしまっていたみたいで。そんな時は、『今芝居をしているな?そうじゃない、気持ちだ』と、ぼそっと横から言われるんです(笑)。それで毎回毎回気持ちが入りましたね」

――男同士の愛憎というのもありますが、作品自体ハードなシーンが多いですよね。かなり大変だったのではと思いますが、どのように気持ちをキープされたのでしょう?
「話をいただいた頃から撮影まで、毎日光央のことを考えていたので、気持ちが抜けることはなかったです。BOYS AND MENの活動の中で、歌って踊ったりバラエティ番組でふざけたことをやったりする時も、光央という存在がずっと居ました。最初は光央という男自体も、二人の“イチカワミツオ”の関係性も難しすぎて本当に理解ができなかったですし、精神的に落ちるようなタイミングもありました。でもこの役をオファーしてくれた監督の気持ちを思うと、光央みたいになりたいという想いが強かったです。だからすごく充実してましたね。そもそも役を演じていたという感覚自体があまりなくて。撮影に向けて光央に寄り添っていって、“自分は光央だ”という気持ちで撮影に入っていったので、撮り終わっても終わった感覚がなかったです。ようやくこの半年経って、だんだん市川光央から田中俊介に戻ってきたのかなって。変な感じですね(笑)」

――最後に、二人の“イチカワミツオ”の関係について、愛なのか何なのかが分からなかったとおっしゃっていましたが、撮影を終えられた今はどう捉えていますか?
「それが、本当に分からなくて。撮影が終わったタイミングでは、最終的にこの二人にあるものは愛だと思っていました。だけど、半年くらい経ってから出来上がった作品を見たり、もう一回原作や脚本を読み返したりすると、また考えが変わったりして。撮影前もどっちか分からない状態が続いたんですが、今またそこに戻ったので、それがこの作品の魅力なのかなと。ひとつの言葉では表現できないものがこの二人にはあると、今改めて感じています。何度も見てもらいたいですし、何年か経って自分が置かれた環境が変わった時にまた見ると、感じ方がすごく変わる作品だと思います」


取材・文:下林香澄(ぴあ)




(6月 2日更新)


Check

Movie data

(C)2017 「ダブルミンツ」製作委員会
(C)中村明日美子/茜新社

映画「ダブルミンツ」

6月3日(土)公開
センチュリーシネマほかにて

【オフィシャルサイト】
http://www.d-mints.jp/

[2017年/日本/アーク・フィルムズ/
スターキャット]
監督:内田英治
原作:中村明日美子
出演:淵上泰史/田中俊介/須賀健太/川籠石駿平/冨手麻妙/高橋和也/小木茂光
(R15+)

Story

同じ名前を持つ市川光央から、高校時代に下僕のような扱いを受けた苦い思い出を持つ壱河光夫。ある日、彼の携帯に1本の連絡が入る。それは会いたくもない相手、光央からのものだった。しかも一般社会から外れチンピラとなった彼は、人を殺したことを告げる。