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「自分にしかできない何かを表現する」
プラハ交響楽団と共演する
ヴァイオリニスト・成田達輝インタビュー

チェコの名門オーケストラであるプラハ交響楽団と、2度目の共演を果たす成田達輝。若手ヴァイオリニストとして国内外で注目を集めている人物だ。慎重に言葉を選んで、自分の思いを表現してくれた成田達輝。目指す演奏家像など、彼らしさが垣間見えるインタビューとなった。

――プラハ交響楽団との共演でのコンサートが決定しております。2回目の共演ということですが、2回目ならではの意気込みを教えてください。
「前回はリハーサル時間もかなり限られていて、お互いに探りながら本番を迎えたんです。今回はそれを踏まえて、前回よりも良くなると思うので楽しみです。一緒に目指す場所のフォーカスを絞っていくので、共演するオーケストラからやはり影響は受けます。ただ、結局は自分がどう弾くべきか、ということに向き合って演奏することになると思います」
 
――自分ありきで、共演するオーケストラとの関係はその次ということですね。
「自分自身の譲れないものがあるのか、と聞かれるとはっきりとした答えがあるわけではなくて、ずっとそれを探し続けてるんだと思います。僕はまだ経験が少ないので、そのときに一番良いと思うものをやるしかないと思っています。毎日スコアを読んで、自分はこれを通して何が表現できるかを模索し、あとはそれを信じて演奏するしかないんですよね(笑)」
 
――今回一緒に演奏するのは、チャイコフスキーの「ヴァイオリン協奏曲」です。とても人気のある曲なので、これまでも演奏する機会は多かったと思いますが、成田さんはどのようにこの曲に取り組んでいるのでしょうか?
「僕が初めてこの曲に取り組んだのは、かなり若い頃です。その頃と今の自分を比べて、変わったところをひとつあげるとしたら、より自分に向き合って演奏するようになったということです。作品自体はもちろん変わらないし、自分も何も加わってないのですけど、演奏することで自分自身が変わってるということを感じることがあります」
 
――名曲ではありつつ、テクニックも要求される曲だと思います。それについてはいかがですか?
「この曲がヴァイオリンを学ぶ者にとって、難しいか易しいかと聞かれたら、確かに難しいです。ただテクニックとは音楽を表現する手段のひとつであって目的ではないんです。もちろんテクニックが伴ってないと表現はできないですけどね。なぜ難しいかというと、ひとつにはチャイコフスキーはまず頭の中に音楽があって、それをヴァイオリンの曲として表現したからだと思います。ヴァイオリンで演奏することを念頭に、弾きやすさなどを考えながら書いたわけではないんですよね。チャイコフスキーのヴァイオリン・コンチェルトの1楽章の最後の方は、初演時に演奏不可能だと切り捨てられたという逸話もあるぐらいです。最初にあるのは、彼の音楽なんです」
 
――チャイコフスキーは哀愁のメロディが魅力ですが、この曲もとても切ないメロディですよね。
「まずこの曲を聴いてはっとさせられるのは、冒頭、ヴァイオリンがひとりでずっと鳴っているところです。ヴァイオリンの魅力を知らしめるがごとく、下から上までゆっくり奏でていきます。そこにオーケストラが加わって、最初のメロディが流れてくる。その時点でお客さんはぎゅっと掴まれると思います。華やかで壮大。音をそのものを肌で感じられる、とても魅力的な曲だと思います」
 
――ヴァイオリニストとしての実力も試されますね!
「前奏からどういう風にヴァイオリンが繋ぎ、最初のメロディに入るかという、すごく単純なことが非常に大事なんです。そこをどう弾くべきかは考えます。だけど、こうあるべきだ、というものではなく、静かな状態で、曲が自然と自分に語りかけてくれるようなイメージ。いわば自分という存在は忘れて、曲そのものになってるというか。自分で良い演奏だなと思えたときは、何にも気を取られず没頭して、その瞬間を楽しんでるときなんですよね。そういう状態に常になれるように努力しないととは思っています」
 
――自身が理想とする演奏家像というのはあるのでしょうか?
「レオニダス・カヴァコスというヴァイオリニストです。以前に彼のマスタークラスの講義を受けたことがあったのですが、そのときに言われたことに本当に衝撃を受けて、2日間丸々眠れなかったぐらい興奮したんです。演奏によって人に強く感銘を与えることができるヴァイオリニストです。彼のようなアーティストは他にいないぐらい自己を確立していて、尊敬しています」
 
――具体的にどういう部分に感銘を受けたのでしょうか?
「すべてですね。彼の演奏を聴くと、自分はこう思うんだというものが揺るぎなく、それを作品の隅々にまで行き渡らせている。だから彼が音楽を演奏するときに何を思ってるのかも最初は気になりましたね。彼はギリシャ人なんですが、古代ギリシャ人の哲学書を読んだりもしました。彼がインタビューで話してることにもとても触発されています」
 
――“作品の魅力”を追求しつつ、“自分”というも出すという、とてもシンプルでいながら実は1番難しいところを目指しているように感じます。
「その作品が言わんとしてることを追求していきながら、自分にしか表現できない何かを表現する。それ以上のものは何もないと思ってます。そうじゃないですか?」
 
――それを目指す成田さんの演奏も楽しみです。では、プラハ交響楽団との名古屋公演に向けて、最後にひとことお願いします。
前回のプラハ交響楽団との演奏を聴いたことがある人も、もし来てくださったらとても嬉しいです。名古屋はすごく魅力的な街なので、コンサートを心待ちにしています。



取材・文:小坂井友美(ぴあ)



(3月 7日更新)


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Concert

プラハ交響楽団

3月15日(水) 19:00
愛知県芸術劇場 コンサートホール
S席-13000円 A席-11000円 B席-8000円 C席-6000円
[指揮]ペトル・アルトリヒテル
[独奏]成田達輝(vl)
※未就学児童は入場不可。
テレビ愛知事業部[TEL]052-243-8600

Pコード:307-740

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