ホーム > インタビュー&レポート > それでも世界が続くなら インタビュー 「これを書いたとき、音楽不信真っ最中だったんです。 だけど腹をくくったんです」

それでも世界が続くなら インタビュー
「これを書いたとき、音楽不信真っ最中だったんです。
だけど腹をくくったんです」

青く青く突き刺さる言葉。ボーカル篠塚の、器用に生きられない自身の人生から生み出された音楽は、同じようにしか生きられない人たちの心に突き刺さる。昨年、アルバム「僕は君に武器を渡したい」でデビューしたそれでも世界が続くならが、1stシングル「僕らのミュージック」をリリースした。コンポーザーである篠塚の赤裸々なインタビュー。まとまらない思いを、それでも形にしようとしたような話となった。

「そもそも俺の中では聴いてくれなくて当然なんです」

――昨年9月にアルバムでデビュー、今年の1月にはミニアルバム、そして5月にこのシングル「僕らのミュージック」と、かなりのスピードでリリースが続いていますよね。最近はずっと作り続けているんですか?
「そもそも頼まれなくても作ってるタイプなんで。他から見たら、追い込まれて大変だなぁって思う人も結構いると思うんですけど、曲作るの嫌じゃないんですよ。ま、楽ではないんですけどね。でも、作るなって言われても多分作っちゃう」

――じゃあ、曲の断片みたいなものは常時ストックとしてあるということ?
「断片ではないです。全部曲にしちゃうんですよね。歌詞もメロディーも同時だから、分離してないんですよね。あんまり器用じゃないからだと思うんですけど、歌って最初からメロディーと歌詞がセットになってるもんだと思っていて。詩だけとか、メロディーだけは、できそこないみたいな感じになっちゃうんですよね。だから、しゃべるみたいに歌ってると、曲になるっていうような」

――鼻歌のクオリティが高いバージョンというんでしょうか?
「クオリティ高いかどうかはわかんないけど、そうですね、鼻歌です。基本的には、全部同時にできるから、ライブの1曲目とかによくアドリブで歌ったりするんですよ。その場で曲作って」

――1曲分ぐらいをまるっと?
「ワンコーラスぐらいです。でも、今からアドリブで曲やりますなんて言ったことはないので、作った歌を歌ってるように聴こえてると思いますよ」

――そうやって歌った曲は覚えてるものなんですか?
「覚えてます。僕ライブ苦手だから…人前で歌うのがすごい苦手なんです。だから1回1回覚えてるし、だけど思い出さないようにしてます」

――思い出すと恥ずかしくなる?
「恥ずかしいです。カラオケで自分が歌ったときのことを思い返したら恥ずかしくないですか? 多分、その感覚と一緒なんですよ。家で一人で歌ってるんだったら全然大丈夫だし、それを録音するのも耐えれば大丈夫。だけどそれを聴いてくれてる人がいるっていうのは、もうありがたすぎて申しわけないって気持ちになってくるんですよ」

――その申しわけないっていうのは、誰に対して、どういった感情からなんでしょう?
「聴いてくれるじゃないですか。でも聴いてくれて当たり前とは全然思えないんですよね。そもそも俺の中では聴いてくれなくて当然なんです。聴いてくれるとめちゃくちゃ嬉しいんですけど、聴いてもらってない前提で歌うんですよね、俺は。インディーズがライブハウスでやってると、どんなバンドなのかなって品定めされてる感じがあるじゃないですか。僕の場合はそれが長くて、聴く気がない人の人生をどれだけ変えられるかっていうか…。聴いてくれる人の人生を変えるじゃないですからね。僕はロック、音楽を聴いて人生が変わったんですよね、変わってしまったんです。だから僕は音楽をやるなら、音楽ってそういうもんだろうって思っていて。人生が変わるもの、危ないものだって思ってるんです。だから無理やり聴かせようとしてたんです。聴く気がない人を振り向かせるっていうのは、相当ぶん殴ってるんですよね。言葉や音でぶん殴るイメージ。俺の中では、心臓を音で刺すみたいなイメージで歌ってる。…俺、今、何の話してましたっけ?(笑)」

――申しわけないという気持ちについてです(笑)。
「そっちは申しわけなくないですね。聴く気がないから、向こうも。聴けこの野郎みたいになれるんです。だけど、CD出して、聴いてくれる人がいて、そんな人がいたことないから、申し訳ないんですよね。例えば、彼氏や友達、先輩でも誰でもいいんですけど、いてくれてありがとうって思うことがきっとみんなあると思うんですよ。そういう感じなんですよね。その延長線上って、私なんかでいいの?ってなりません?それと一緒ですよ。俺なんかの音楽の傍にいてくれてって。自分に自信がないから不安になるんですよね。そういう意味では、俺の音楽を聴いてくれてる人への俺の思いって、本当に好きってことなんでしょうね。好きだから不安になるっていうか。感謝してるんです、めちゃ感謝してます」



「自分が生きていく中で足りないピースっていうのは
音楽にじゃなくて、作曲にあったんです」


――先ほど常に曲は作ってるとおっしゃってましたけど、篠塚さんはどういう時に曲を作ろうと思うんでしょうか?
「嫌なことがあったときですね。言いたいことがあると曲にしますね。逆に言いたいことがないときは書けない。でも言いたいことって、誰かに言いたいわけじゃないんですよ。タクシーに乗車拒否されたとか、母親に理不尽なこと言われたとか、そういうときって何か考えちゃうことってないですか? 何であの人はそう思ったんだろう?もしかしたら自分のことを最初からそういう風に見てたんじゃないかとか、考え過ぎちゃうんですよね。そういう考え過ぎちゃったことをまとめるために曲にしてる。それが僕の生活の一部になってる気はします」

――自分の中で整理する作業の中に、曲を作るっていうことが入ってるんですね。
「入ってます。人によってはノートに気持ちを書く人もいるかもしれない。最初はそうじゃなかったはずなんですけど。バンドがやりたくて曲を作ろうとか、もうちょっと普通の意味合いだったはずなんですけど、今となってはもうそういう感じじゃないですね。それは高校生くらいで終わっちゃいました。曲を作ることが肌に合ってたのかもしれない。自分が生きていく中で足りないピースっていうのが、音楽にじゃなくて、作曲にあったんです。作曲は僕の生活にめちゃくちゃ必要なんですよ。音楽にどれだけ救われたかっていうと全く救われてないんですけど、正直。だけど曲を作るっていうことには救われたことは何度もある。そうじゃなかったら、その場の空気を何度壊したか、何度言わなくていいことを人に言ったか」

――言葉で伝えるより、曲にして伝えるほうが自分にとっては楽だったんでしょうか。
「正確に言うと、聴かせなくてもいいんです、作るだけで。リリース早いとおっしゃいましたけど、人に聴かせるまででもないっていう曲はいっぱいあるんです。それはクオリティとかいう話じゃなくて、単純にこれは人前で歌いたくないっていう。例えば、すごくイライラしていて、完全にただの愚痴みたいなことは言わなくていいと思う。ただ攻撃しただけになっちゃうから。それを歌にすることと、伝えることとは別だと思うんです。曲は作るけど、作ってよかった吐き出せた、自分の気持ちは整理した。でも冷静に曲を聴くと、俺結構嫌なやつだなって思って。ああそうか、これは聴かせるまでもない、伝える意味がないってものができてる」



「マイノリティな、どこにも属せなかった俺たちのミュージック」

――誰も聴かれないことを前提にして歌ってきて、メジャーデビューしていろんなところで歌うようになって1年ぐらい。でもこの「僕らのミュージック」を聴いたときに、そこからの変化を少し感じたんです。これまでは自分の気持ちを吐き出してきたものが、もうちょっと聴く人を引っ張るというか。
「あったんだと思います。でも自分だとわからないです。僕は『僕らのミュージック』を作ったときに、変わったなとかは全く思わなかったです。いつも通りでした。だけどメンバーとか、関わってる奴らが聴いたときに、『これすげえよくない』って言ってくれて。『すげーいい、マジで泣いたわ』とか、『篠くんの曲で泣いたの、初めてだわ』とか。でも、この曲書いてたときに、ちょうど腹はくくったんです」

――腹をくくったとは?
「これ書いたとき、僕の人生で音楽不信真っ最中だったんです。ファーストアルバムのツアーも終わって、ライブに来てくれた人にも感謝して、「明日は君に会いに行くから」ってミニアルバムを作ったときがピークで。それがリリースされるちょっと前に…何て言うんですかね。音楽の在り方というか…音楽全体とかそういうことじゃなくて、自分の音楽に不信感があったんですよね。俺は、多分お金ちらつかされても、どんなに高圧的なことをされても、俺は何も変わらない、変えないっていう意志があったんですよ。それが理由でメジャーを切られたりとか、怒られたりしても別に全然構わないと。誰かから見たらお仕事かもしれないけど、俺にとって音楽は仕事じゃないから。…なんだろ、難しいな。そもそも「明日は君に会いに行くから」ってミニアルバムを作ったとき、最初はシングルを出すって話だったんです」

――メジャーデビューアルバムのあとに、シングルという流れだったんですね。
「そうそう。でも、チームからシングルになるような曲はないって言われたんですよね。それはリードになるような曲がないねっていうだけの話だと思うんですよ。分かってるんだけど、ものすごく感覚的な話で、お前の曲は好きじゃねえって言われてるように感じたんです。自分も自分の曲に不信感を抱いちゃってるから、俺ぶれてるかもしれないみたいな、自信がなくなっちゃったんです。それが「明日は君に会いに行くから」ってアルバムを作ってる真っ最中にも思っちゃってて…。今思えば愛しいアルバムだなって思うんですけど、作ったときは本当に辛かった。俺があんまり人に聴かせない曲をいっぱい詰めちゃったんです。さっき話した、こんなことを人に言わなくてもいいよってことを。そこがいいって言う人もいると思うんですけど。俺はすごく苦しくて、駄目だって。俺何のためにライブやって、音楽やってるんだろう。俺何のために人に音楽聴かせてんだっけってわかんなくなっちゃって。レコード会社の人はたくさんの人にCDを聞かせて、ライブに来てもらおうとしてるんだけど、当の俺はそれをしたいと思ってなかったんですね。理由はわかんないんです。俺友達は少なくていいと思っていて、大人数の前でしゃべるの苦手で、団体行動得意じゃないし、器用じゃないし迷惑かけちゃう。そんな俺に対して、これまで一生懸命すぎて気持ち悪いみたいなことをずっと言われてたんで…人と関わるのはそんなに好きじゃないし、たくさんの人の前だと怖くなるんですよね。そういう俺が…俺どこまでしゃべってます?(笑)」

――音楽に対する不信感についてです。
「そう、不信感があって。その時に辞めようかなって思って。ライブってたくさん人が集まるじゃないですか。人がいっぱい集まって、例えば俺はこういうことが好きじゃないんだと歌うとするじゃないですか。それに対して、そうだそうだって人がいっぱい集まる。でもそれは好きじゃないって言われてる側の人から見たら、魔女狩りみたいな、多勢に無勢じゃないですけど、歌われたほうはたまったもんじゃないですよね。でも正解なんてないわけですよね。でもそういうのってある意味ロックバンドだけなんですよ。ライブって、ある意味では卑怯な部分があるんですよね。でも、あそうかって思ったんですよ、逆に。卑怯だなと思ったときに、あ、そうかって」

――卑怯というのは、音楽の在り方のことですか?
「ライブっていうものだったら、たくさん人に届けること。そのひとつの思想を多人数の人に指示することの危なさっていうか。例えば、単純に誰かが嫌いとか好きっていう話になっちゃうじゃないですか。そういう多人数の人を共感させる行為自体にもう不信感というか。それが素敵な良い考えならともかく、良い順に音楽が売れたりするわけじゃないから。そもそも音楽ってそういうもんだだけど。でも俺は危ないって思っちゃったんですよ。でも逆も然りじゃないですか。Aっていう人がいて、A君のことが大好きって言った瞬間に、B君のことは好きじゃないんですってことになっちゃいませんか?結果的に。俺たちは表現するって簡単に言うけど、それは同時に誰かのことを傷つけてるんですよね。誰かを否定するんです、誰かを肯定すれば」

――「僕らのミュージック」もですけど、今回のカップリングもそういう曲ですよね。光のあたるところとは対極のものに焦点をあててる曲というか。
「そうですね。卑怯ってよくないことかもしれないんだけど、俺は逆で、卑怯だと気づいた瞬間に、すげえいいものだと思ったんですよ。俺はそもそも人に好かれるものっていうのをあんまり信用できないんですよね。人に好かれようとしてるものって、信用できない。信用できないっていうか、上手く好きになれない。まあ、いじめられっ子ですからね。大概、いじめっ子ってクラスでは人気があるもんだから。だから、どっかではじかれてる俺はですね、俺みたいな人がどっかにいるなら、ぶっちゃけ音楽なんでどうでもいいから、音楽を理由にしちゃって、ライブでも何でも一緒に集まらねぇって。ぶっちゃけ音楽はどうでもよくて、お前に話してんだよってことが言いたかったんですよね、結局。俺は、マイノリティな、どこにも属せなかった僕らのっていう。みんなが先入観で持ってるミュージックっていうものに入れなかった、俺たちのミュージックっていうか」



「今は1ミリだけでもましになるんです、きっと」

――どこか抜けた感じがあったんですね。
「そうですね、腹くくった。一緒に来いよなんて、普段遊びでもあんまり言わないですけど、本気で誘おうかと思って。これだったらライブやってもいいや、早くライブやりたいと思ったし。インディーズのときも、横の繋がりとか言い出すバンドマンがすげえ嫌で。人の出会いを金づるみたいにする発想がもう嫌で。人の出会いなんてのは利用するもんじゃねぇだろって。そんな風には絶対生きないって思って。来たい人が来るはずだって思って。じゃあその人が来たいと思うような、誘わなくても来たいと思うような曲を書ければよくねぇって。もちろんそんな簡単に書けないですけど(苦笑)。でもそういう風に思ってやってきたんですよ。だから友達も全然いなかったし、全然誘わなかった」

――それなのに、“来いよ”と言える強い思いを出せるようになったんですね。
「腹くくったっていうのは、そういうことなんですよね。それでライブに来てくれたら嬉しいです。俺が思ってる気持ちに反応して、呼びかけに応えてくれた。それは感謝ですよ。一緒に歌う必要ないし、俺は好きなこと歌ってるから、そっちも好きに歌えばいいんです。どっちがミュージシャンでどっちが客とか、そんなつまんない話どうでもいい。俺もお前も人間だろって。それを俺のバンドだったらできるよって。そんなのないですよね、普通は一緒に歌おうじゃないですか。違うんです、自分の歌を歌ってほしい。ついでに俺も好きな歌うたうから。音楽に寄りかかってる人って、藁にもすがってるんです。変わらないのも分かってるし、音楽なんかじゃどうにもなんないのも知ってるんです。それでも音楽に寄り添っちゃう人って、俺もそうですけど、ちょっとでも何か変わるんじゃないかって期待してるんです。音楽って、たった3分で人生変わりそうになることあるじゃないですか。だから音楽を聴いてちょっと明日が…明日じゃないですね、今ですね。今が1ミリだけでもましになるんです、きっと。だとしたら俺のこと好きになんなくてもいいんですよね。主役は音楽やってる俺らじゃないから。自分が好かれようと思う音楽なんて、くそ食らえだと思うんです。俺の曲はどうでもよくて、音楽を使って、お前も歌ってほしいし、俺も歌うし。お互いちょっと生きるか、みたいな」

――この曲をツールにしてみんなに集まってもらう。それを聴いてもらうことで、また意味ができるかもしれないですね。
「今、ツールって言われて気づいたんですけど、ツールにしてますよね、完全に。俺の中では今までは自分自身みたいなものだったんです。でも今は、音楽がどうでもいいと思えたからこそ、音楽を作ろうと思ったんですよね。だから“ミュージック”っていうタイトルになっちゃったかもしれないです。そういう意味では変わったのかもしれないですね。この曲みたいなのをまた作るかは別にしても、この曲をたくさんの人に聴いてもらうようにレコード会社の人とかが頑張ることを、この曲を作ったことで嫌じゃなくなりました。ありがとうございますって心から思える。俺も聴いてもらいたいですって言えるようになれたかなぁ」




(6月 5日更新)


Check

Release


single「僕らのミュージック」

1143円(税別)
日本クラウン
CRCP-10314

LIVE

1st single「僕らのミュージック」
リリースワンマンツアー
「僕らを置き去りにした音楽と再会する日」

6月6日(金)19:00
池下CLUB UPSET
スタンディング-2000円(整理番号付・別途ドリンク代必要)
ジェイルハウス[TEL]052(936)6041
Pコード:229-699


忘れらんねえよ主催
「ツレ伝ツアー
~あの娘のメルアド予想する編~」

7月13日(日) 18:00
アポロベイス
前売-3000円(整理番号付・別途ドリンク代必要)
共演:それでも世界が続くなら
ジェイルハウス[TEL]052(936)6041
Pコード:228-970

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