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ADAM at インタビュー
「この曲を演奏するの楽しいなと思って作った曲は、それが聴いている人にもちゃんと伝わる」

ピアノが奏でる日本人の琴線に触れるメロディーと、思わず体が踊りだしてしまうパフォーマンス力で話題を集めるインスト・ロックバンドADAM at。キーボーディストの玉田のプロジェクトであり、固定メンバーのいない即興的なアプローチをしていることも特徴だ。彼が3rdフルアルバム「Echo Night」をリリースした。このアルバムは玉田がシンガポールでライブをした経験が多く反映されており、これまで以上に強烈な楽曲が収録されている。今回は作品のことはもちろんのこと、玉田がバンドをはじめた驚きの理由から地元・浜松への思いまで多岐にわたる話を聞いた。

――3rdフルアルバム「Echo Night」がリリースされましたが、今作はADAM atらしいアップテンポで踊れるナンバーなど幅広い楽曲が収録されていますね。どんなアルバムになりましたか?
「今までに比べてチャレンジの多いアルバムになりました。曲ごとにメンバーを変えたのでバリエーションはすごく富んでいるかなと思っております。それと楽曲は今までより若干攻撃的な感じにしたところがあります」

――そうした色んなチャレンジをしようと思ったきっかけは何かあったんですか?
「去年の5月にシンガポールでライブさせてもらって、そのときに僕とギターだけシンガポールに行ってベースとドラムはシンガポールの方が弾いてくれたんです。そうしたらめちゃめちゃスキルが高くて本当にお上手で、それに引っ張られたことで僕も普段弾けないようなことが弾けるようになって。リズム隊が変わるとこんなに変わるんだと思いまして、そのあたりからいろんな人とやりたいなと思ったんです。なんていうかシンガポールのミュージシャンはグルーヴ感がスゴいんですよ。ハリウッド女優と付き合ったようなスゴさがありましたから(笑)」

――あはははは(笑)。それは確かにスゴいですね。
「また若いんですよね。だから良い刺激しかなくて、自分のためにも色んな人とやっていこうと思いましたね」

――シンガポールのミュージシャンとのセッションがタマダさんを覚醒させたと。
「向こうはライブハウスやジャズ箱が日本みたいに多くないんです。だから人前でプレイできるのは限られた人だけで、よっぽどうまくないと演奏できないらしくて。一緒にプレイしたメンバーはシンガポールのバンドとして世界ツアーをしているような方だったので、余計に果てしなくうまかったんです(笑)。正直、ピアノもシンガポールの人に変わろうかなと思うぐらい(笑)」

――そこまで思ったんですか?(笑)
「ピアノの人をちょっとご紹介いただいてもいいですか?ってぐらいでしたよ(笑)。それぐらいうまかったんです。どちらかというと今回のアルバムってロック色が強くて。ADAM atはジャズバンドとカテゴライズされるんですけど、ジャズだと思ったことはなくて。逆にシンガポールの二人は完全にジャズマンで、ロックっぽいうちの曲を途中でジャズっぽくアレンジしたときに僕もジャズ弾けてんじゃん(笑)っていう発見があったんですよ」

――逆にいえばタマダさんになかった引きだしが引っぱりだされたんですね。ADAM atはインストバンドの中でもかなり独自の立ち位置を確立していますよね。ロックもできれば、いわゆるインストバンド然とした楽曲もある。タマダさんはどんなバックホーンの中でADAM atの音楽性を見つけたんですか?
「インストバンドだとスペアザ先輩(SPECIAL OTHERS)が日本のパイオニアとしていて。ギターとエレピとドラムとベースの4人でインストバンドをやると、どうしてもスペアザっぽいって言われるじゃないですか。俺、あれがすごいなと思うんです。スペアザが出てきた後に登場したインストバンドが『スペアザみたい』って言われることは、“インスト=スペアザ”という認識ができてるってことですよね。僕はそれが素晴らしいと思っているので、“ADAM atもどうしたらADAM atっぽいと言われるか?” と考えたんです。それとドラムのちょっと速めのビートに伸びやかなピアノがあれば、『ADAM atっぽくない?』って言われるんじゃないかと。それにもともと僕はジャズがそんなに好きじゃなかったんです」

――それはなぜですか?
「小難しいことをされてもわかんない人が多いと思うので、それよりは強烈に人の記憶に残る音楽をやりたいなと思っているんです。めちゃくちゃ音楽マニアな人に聴いてもらえるのも嬉しいんですけど、インディーズの頃から僕が届けたいのは一般の人たちなんです。ものすごいサイケデリックなことだったり、誰もが思いつかないようなことをやって褒めてくれるのは、意外に関係者ばかりなんですよ。しかもそういう人たちって実はCDをあんまり買わない層で、僕はCDを買ってもらえる層を一番引きつけないといけないと思っています」

――もともとインストって音楽の中でも畑が大きい方ではないと思うので、そうした意識をもってタマダさんが音楽をしている意味はとてもありますね。
「確か甲本ヒロトさんの言葉だと思うんですけど、“売れているものが良いものなら、世界一うまいラーメンはカップラーメンになっちゃうよ”という名言があって。ただ僕はカップラーメンでいいなと実は思っているんです。ものすごいラーメンを作る為にいろいろこだわって何かやっても、めちゃくちゃ腹減ってたらあんまり変わらないんじゃないかと。だったらシンプルで良いものを追求して、人に音楽を届けたいなと思ったんですよね。とりあえず僕はCDがたくさんいろんな人に届けばいいなと思ってて、その中にこっちの自己満足はあんまり入れても伝わらないんじゃないかと考えています」

――そうやって直感的に感じることのできる音楽は、ただ消費されるだけでなくちゃんと人の心に残っていくものだと思います。そうしたマニアックな視点になりすぎないというのはタマダさんのアーティストとしての長所じゃないですか?
「もともと僕はアーティストじゃなくて、ただのイベンターだったんですよ」

――え?これだけ超絶なテクニックをもっていながらアーティストじゃなかったんですか(笑)?
「そうなんです(笑)。僕の地元の浜松は工場が多くて定時がだいたい18時に終わってライブハウスに駆けつけるんです。そうすると18時30分開演だと間に合わなかったりするので、お目当てのバンドがちゃんと観れるように自分がオープニングアクトをやればいいのかと気づいてはじめました」

――そこもちゃんとお客さん目線なのがタマダさんらしいですね(笑)。ピアノはいつ頃からされていたんですか?
「ピアノは5歳からやってたんです。それもただ好きで弾いてただけで、音楽で食おうというのはほとんど考えてなかったですね」

――超絶テクニックはいつ身につけたんですか?
「いや、別に超絶テクニックじゃないので(笑)。分解すれば全然難しくないですよ」

――今作のタイトル曲「Echo Night」はPVになっていますが、YouTubeのコメント欄で「ゲーム音楽みたい」という反応がありました。それってある意味テクニックもないとそうした印象にならないと思うんですよね。
「ああ、でもそれはとても嬉しいです。インストミュージックに一番最初に触れ合うのって、多分ゲーム音楽だと思うんですよ」

――確かに。特に男子は絶対そうですよね。
「ね。だから絶対、心の中に残ってるじゃないですか。ゲーム音楽も基本的にループなんです。そこら辺はインスト音楽としても共通している部分なので嬉しいですね」

――さらに「Echo Night」はリスナーによりインパクトが残るようにシンプルな構成にしたそうですね。
「もともとシンプルさは狙って作っていたんです。この曲の原形ができたときに、インストにサビという概念をあえてつけてみても良いかなと。それぐらい分かりやすくシンプルだと、もっとこの曲が映えると感じたんです。僕は曲を作るときにイントロ、Aメロ、Bメロ、サビはこうしようと思って作ったことはあんまりなくて。適当に弾いていたパーツが組み合わさって曲になっていく事があるので、家でピアノを弾いてたらヤバい曲のパーツができちゃったみたいなことがよくあるんです。そういう偶然の産物みたいなところは音楽の良さだと思っているので、そういう部分も楽しんでいますね。今回は『Echo Night』をリード曲にしましたけど、本当にどれにしようか悩みましたね」

――どれで悩んだんですか?
「『GO TO THE LAKE』や『Arabesque』にするアイディアもあったんですが、それはいかにもADAM atらしい曲だったんです。それよりも今回は新しいADAM atらしさをだせるような曲が良いと思って『Echo Night』にしました。勇気のいることでしたけど、“実は色んな引きだしがあるんだぜ”ってことを楽しんでもらえたらなと(笑)。まあ、実際はそんなに引きだしがないかもしれないんですけど(笑)」

――資料に書いてあった「Echo Night」のタイトルの由来にはとても驚きました(笑)。タマダさんがとても地元を愛していることが伝わってきたというか。
「こじつけにもほどがありますよね(笑)。ただ地元はやっぱり大事にした方が良いので、地元ネタはどのアルバムにも入っている気がします。僕が住む浜松市は新幹線がこだましか停まらないんですけど、のぞみの中に蛇がいるってことで一度緊急停止したことがあるんですよ。もちろん降りることも乗ることもできないんですけどね(笑)。それでまだまだ浜松も捨てたもんじゃないなと。そこから新幹線をタイトルにした曲があってもいいなと思って、 “こだまに乗って着いた浜松の夜”というイメージの「Echo Night」ができました」

――地元はタマダさんにとって大事な場所なんですね。
「東京にでて音楽をすることは簡単ですけど、こうやって1つの場所で作り続けることで生まれるモノもあると思うんですよね。地元を背負って全国で音楽活動をしたらやっぱり応援してくれますし、こうやって曲のネタが生まれたりもするので。だから浜松でライブをするときは特別感が生まれるというか、聖地のように見てくださってる方もいて。そういう場所がひとつあるのはデカいなと思っています」

――タマダさんが音楽に対してもリスナーや地元に対しても、すごく良い距離感の関係でいるからADAM atの音楽は聴いていて心地良いんだと思います。
「そうしたスタンスは音楽にも出ているかもしれないです。僕思うんですけど、皆、曲作りをした方がいいんじゃないかって。考えなくても楽器を弾いていたら曲になるし、それがちゃんと自分のことを示唆しているときもあるんですよね。だから皆もやったらいいのにって思ってます(笑)」

――曲を作るのはさすがに難しいことだと思います(笑)。
「それこそ料理を作るのと変わんないような気がしていて。人に食べさせるものを作るとしたら絶対美味しい料理にするじゃないですか。もっというと自分好みの美味しい料理にすると思うんです。だから音楽も同じでまず自分の好きなメロディーを奏でて、それを人に聴かせたらきっと聴いてる人も楽しいはずなんですよね。この曲を演奏するの楽しいなって思いながら作った曲は、それを聴いている人にもちゃんと伝わると思うので」

――「Echo Night Tour 2017」と題したワンマンツアーがはじまりますね。名古屋は6月15日CLUB QUATTROです。インストバンドとしてどんなライブになるのか楽しみです。
「ツアー全ヶ所ワンマンはアルバム以上に冒険なので、もうやるしかないですしお客さんが喜んでくださるならやろうと!たくさん演奏してたくさん話して、みんな笑顔になって帰ってほしいなと思ってます。僕のライブは難しいことは一切ぬきに、ただただ音楽を楽しんでほしいので、神妙な顔をせずに気軽に楽しんでもらえたらなと。ADAM atのライブはみんな笑って楽しかったなっていう、“あー、笑いすぎておなか痛い”みたいな感じでいてもらえたら幸いです。笑う門には福来たる。とりあえずどんな手を使ってでもお客さんを笑顔にして帰らせたいなと思います!」


インタビュー・文:菊池嘉人




(3月30日更新)


Check

Release


album「Echo Night」

通常盤【CD ONLY】
2200円(税別)
VICL-64712

LIVE

「Echo Night Tour 2017」

6月15日(木) 19:30
名古屋クラブクアトロ
スタンディング-3000円(別途ドリンク代必要)
ジェイルハウス[TEL]052(936)6041

Pコード:319-295

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