ホーム > インタビュー&レポート > 「物語に対しての需要がすごい高まってる気がする」 “ノアの箱舟”をテーマとしたアルバムを完成させた ぼくのりりっくのぼうよみ インタビュー

「物語に対しての需要がすごい高まってる気がする」
“ノアの箱舟”をテーマとしたアルバムを完成させた
ぼくのりりっくのぼうよみ インタビュー

動画サイトでの投稿がきっかけで、2015年、メジャーデビューしたぼくのりりっくのぼうよみ。通称“ぼくりり”。
当時、現役高校生ながらジャンルを横断したポップセンスに、10代ならではの感受性から生まれる独特な言葉が話題をさらった。
そんなぼくりりが、2ndアルバム『Noah's Ark』をリリース、初の全国ツアーをスタートさせる。まだまだ経験値がないと、様々なことをやりたいと話すぼくりりが放った本作は、「ノアの箱舟」をテーマとし、アルバム1枚でその物語を表現した。
まだまだ正体不明なぼくりりに話を聞いた。

――デビュー2枚目のとなった最新作『Noah's Ark』は、アルバム1枚通してのテーマ性が強い作品になりますね。
「1stはこれまでの集大成的な側面が強かったので、今度はひとつのテーマを設定して作ろうというところから始めました。“ノアの箱舟”をテーマにしたからといって重たいものでもなく、最初は“Noah's Ark”って響きが格好いいなと思っただけです(笑)。“ノアの箱舟”“大洪水”と連想していって、それを現代の物語として置き換えるというような流れで作っていきました」
 
――以前に『ディストピア』というEPをリリースされていますよね。今回の『Noah's Ark』もそうですけど、いわゆる終末思想のようなものにはもともと興味があったんですか?
「そうですね。僕はすごい中二病でそれを未だに引きずってるので(笑)。昔からそういうのが好きなので、格好いいなと」
 
――では、『Noah's Ark』という単語もわざわざ調べたというより、すんなり出てきたんですか?
「普通に旧約聖書とかを借りて読むようなキモイ子どもだったので(笑)。旧約聖書って面白くて、社会のルールも聖書が書かれたときと今とじゃ全然違うし、興味深く読んでいました」
 
――「ノアの箱舟」の物語を現代に置き換えてというところで、大洪水をインターネットなどによる情報社会と置き換えた表現をしていますね。
「洪水を現代に置き換えたとしても、別に今、水が溢れているわけじゃないですよね。だから洪水にあたるものは何だろうと考えたとき、情報だと思って。情報に飲まれるなかで取捨選択が必要なことや、取捨選択できず感情に支配されているような人たちとか。例えば情報が3個であれば1個選ぶのは結構簡単な作業ですよね。でも何千個もあるとどれが正解かなんて、選ぶのはもう無理じゃないですか。何千個もの選択肢の中で、正解を選ぶというのは不可能だと思うんです。そうなったとき何を基準に選ぶのかというと、自分の好き嫌いといった感情によって全部選択してしまうと思ったんです。実際、去年の年末ぐらいから本当に世界各地で目に見える現象として現れてますよね。その流れで、“洪水”は“情報”なんじゃないかというように考えたんです」
 
――ぼくりりさんは、YouTubeでの配信から注目を集めた方だと思いますが、世代的にインターネットから情報をセレクトするというのに馴染んでますよね。それなのに情報に流されてしまってる、という印象があるんでしょうか?
「2ちゃんねるの管理人の方が『嘘を嘘と見抜ける人じゃないとインターネットを使うのは難しい』というようなことを言ってる動画があるんですね。それにあるようにインターネットに嘘が跋扈してるというのは、もう周知の事実だったはずなんです。だけど最近、その前提が共有されなくなってるような気がして。中高生であったり、これまでインターネットに触れてなかったのにスマホなどをきっかけに触れたような大人は、インターネットは嘘が溢れてるという認識があまりないように感じるんです。全部信じてしまってる。そういう一種の逆転現象が起きてる気がしています」
 
――大人の方についてはわかるのですが、中高生もですか?
「ソースを気にするみたいな概念がどんどんなくなってるなって。例えばTwitterで普通の方が『これはおすすめだよ』と言ってるような発言が何千リツイートされたりしますよね。でもそれって本当にそうかなんて分からなかったりする。おすすめしてるものが漫画とかだったら全然いいんですけど、塩水を飲むと腸内が洗浄されてダイエットになるというのが流行ったんですけど、実際には内臓を痛めて危険だということがあったり。話題になったまとめサイトのこともそうですけど、情報に対する胡散臭さを感じる嗅覚が全然なくて、デマも普通に信じてしまってる。そういうリテラシーは学んで獲得していくはずなのに、全然持ってない。特に特定の若い層と中高年の方には感じますね」
 
――言われてみるとそうですね! でも若い方がそうだという認識はあまり持ってませんでした。
「最近の中高生って基本的に実名でTwitterをやってる人が多いような気がしていて。僕、昔は“紫外線”という名前でインターネット上で活動してたんです。それは本名とは違うので、リアルの自分とインターネット上の自分が分離していたんですけど、今はリアルとインターネット上がずっと一緒。クラスの友達をTwitterでフォローするというように、リアルの友達と繋がる。中高生じゃないので、実際のところはわかんないですけどね。こういう世代だよねとひとつにくくられることが多いですが、その中でもかなり細分化が進んでる。学校によって、学年によって、いろんな層によってだいぶ違うと思います。インターネットに対する感覚の違いは、僕のところでも分断されてるし、すごいあると思います」
 
――今はリアルとインターネットの世界が混ざってしまってると。確かに私もインターネットを始めたときはハンドルネーム使ってましたしね。ネカマとかもそうですが、リアルとは別世界の印象はあります。
「今の人たちにとっては、リアルの延長線上にインターネットが存在している気がしています。僕にとっては別世界だったんですけど。ただ僕は今、逆にインターネットの世界にリアルな人格が飲み込まれたんですけどね」
 
――“ぼくのりりっくのぼうよみ”というのはインターネット上の人格だったんですもんね。
「はい。例えば高校に行ってる間、本名で呼ばれてリアルな時間が確保されていて、Twitterでは“ぼくりり”と呼ばれるという生活だったんです。でも今は常時“ぼくりり”で。インターネット上にのみ存在していたはずの“ぼくりり”という人格が、リアルも全部侵食して“ぼくりり”になってしまってるんです」
 
――そうすると、今こうやって活動している“ぼくりり”は、リアルの自分とは違うキャラクターなんですか?
「決定的に何かが違うということではないんですけど、発想の基準が“ぼくりり”だったらどうかな、と考えてます。例えば僕は未成年ですが、“ぼくりり”がお酒飲んだら炎上しちゃいますけど、普通の大学生だったらそれほど大騒ぎにはなりませんよね。実際に飲んでるわけじゃないですけど。そういう考え方の差異はあると思います」
 
――情報社会についての話を、1曲ではなくアルバム1作を通して伝えるということですが、アルバム全体でのストーリーとしてはどう落とし込んでいってるんでしょうか?
「3部構成になってるんですけど、最初に全体の設計図のようなものを描いたんです。1~8曲目が第1部、9曲目が第2部、10曲目が第3部。第1部では、地球上に堕落した人類が満ち溢れている様子を描いています。そうなると、いろんな人がいろんな方法で堕落している様子を描かなくてはいけないなと思って。例えば、6曲目の『Newspeak』っていう曲は、ジョージ・オーウェルの『1984年』っていう小説が元になってるんですけど、言葉がどんどん消滅していって、それによって世界への認識がどんどんできなくなっていく、自由意志的な感性が欠落していってるよね、ていう曲だったり。3曲目の『在り処』は、誰からも必要とされてない、そもそも生まれた理由がわからない、器に何も注いでもらえなかった人はどうすればいいんだろうっていう曲。それは堕落というより生まれながらの欠落になるかもしれませんけど。第2部は、そういった堕落した人たちが、洪水が来てドバーっと流されちゃう。第3部で、洪水によって選別が終わり、生き残った人が歩き出していく様子を描いてるんです」
 
――物語として描くということについてこれまでにない挑戦だということですが、実際に完成させてみていかがですか?
「すげーいいアルバムを作ってしまったみたいな思いはあります。ただ、作ってみて感じたのは、物語を伝えるという方法はいろいろあるなと。1番メジャーな伝え方として小説がありますよね。今回は音楽という方法を取ってみた。あと僕、最近ゲームがめちゃくちゃ好きなんですけど、ゲームを創りたいなと思っ。ゲームってやってるうちに、主人公にどんどん自己投入していきますよね。僕、『ダンガンロンパ』ってゲームが好きなんですけど、やってるうちに完全に主人公の気持ちになってます(笑)。伝えたいものを響かせる手法として、すごい面白い手段だなと思って、やってみたいんです」
 
――VRとかもそうですが、最近ゲームはますますリアルになってきてますよね。
「あと今、全部が物語化してる気がするんです。Twitter上とかでもストーリーを作りたがったり。例えば、ある漫画家さんの家が火事になって、写真をTwitter上にあげたんですね。その写真を別の人が勝手に使って米軍が病院を爆破した後だとツイートしたんです。たぶん怒りや悲しみっていう感情を呼び起こせようとして情報を加工して、全くの嘘だけど物語を作り出してる。この場合は、漫画家本人が、違いますよってつっこみを入れたから嘘だって分かったんですけど、そうじゃなかったら本当だと信じて、何千人もの人がリツイートしたかもしれないですよね。そうやって物語に対しての需要がすごい高まってるんじゃないかなって思うんです」
 
――興味を引いたものに対して、ソースの確認も取らず拡散していってしまうところはありますよね。
「トランプ大統領や最近の政治などでも話題となってポストトゥルース(客観的な事実が重視されず、感情的な訴えが政治的に影響を与える状況)という言葉に代表されていると思うんです。確かに理解できるんです。よく知ってるものが実はすごい、というようなことは、嘘でも独特の高揚感はあるんです。そういうタイミングで、面白いストーリーをいろんな手法で届けられたらとは思っています」
 
――メロディについても聞きたいのですが、作詞はすべてぼくりりさんですが、作曲はすべて誰かに頼んでますよね。作曲者の人選はどうしてるんですか?
「僕は全部自分でお願いしています。基準としては絶対に自分が好きな音、自分が聴きたい音を作ってる人にお願いしています。今回もYouTubeで見てよかったからオファーしたりしてます。作曲者を選んでオファーを投げるところまでが僕の仕事というか。あがってきた音に僕が歌詞を書いて完成させてます。今まで、リスナーとして普通に聴いてめっちゃ好きな人にお願いしてることが多いですね。なので作曲してくれてる人の曲もぜひ聞いてほしいです!すごい格好いいんで!」
 
――このアルバムを引っさげて、初の全国ワンマンツアーですよね。しかも名古屋は初日という
「ワンマンは東京でしかやったことないですし、名古屋ではライブ自体したことがないんですよね。僕、割と人間っぽく扱われないところがあるので、ちゃんと生きてるんだぞというのを知らしめようと思います(笑)」



取材・文:小坂井友美(ぴあ)



(3月20日更新)


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Release


album『Noah's Ark』

2500円(税別)
ビクターエンタテインメント
VICL-64690

LIVE data

ぼくのりりっくのぼうよみ TOUR 2017

3月22日(水) 19:00
名古屋クラブクアトロ
スタンディング-4300円(整理番号付・別途ドリンク代必要)
※客席を含む会場内の映像・写真が公開される場合があります。予めご了承ください。プレゼント付。
サンデーフォークプロモーション[TEL]052-320-9100
Pコード:318-660

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