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「ボケとツッコミは日常茶飯事」
インストに興味のない人を楽しませるために技を磨いた15年。

2002年のデビュー以来、ギター1本で無限の音を奏でるアコースティックギタリスト・押尾コータロー。
多くのミュージシャンとのセッションやジャンルの枠にこだわらないコラボを積極的に行い、インストゥルメンタルでありながら、多くの人に愛されているギタリストだ。
現在デビュー15周年ツアー真っ最中の彼に、ギターへの思い、最新アルバム『KTR×GTR』について話を聞いた。

――15周年のツアー真っ最中ですが、押尾さんはずっとギター1本でインストゥルメンタル音楽を奏でてきましたよね。今でこそそのスタイルが確立されていますが、15年間の間に、例えば歌を入れた方がいいんじゃないかなどの葛藤はなかったのでしょうか?
「インストに固執してたわけじゃなく、変わるなら変わってもいいぐらいの柔軟性は自分の中にあったと思うんです。だけど単純にインストゥルメンタルがすごく好きだったんですよね。歌モノは聴くんですけど、自分がパフォーマンスすると考えたときに、やはりずっとギターを弾いていたかったんです。例えば自分が歌ってそのバッキングを弾いたり、別のボーカルと一緒にやるということも選択肢としてあったと思うんですけど、僕はずっとギターを弾いてるスタイルがよかった。もちろんやり始めた当初は、歌を歌った方がいいんじゃないかとか、ギターのみってマニアックじゃないかという意見もあったんですけど、そこは揺らぎませんでしたね。自分が楽しいと思ったのがインストで、ずっとやり続けていきたいと思ったので。歌いたくなったら歌えばいいと思って」
 
――そのスタイルで15年間続けたことで、周囲の意見も変わってきてますよね。自身で実感することはありますか?
「押尾のギターで歌ってみたいと言ってくれる人が出てきてくれるようになりましたね。自分としては、器用にはならないようにしようとは思ってたんです。いろんな楽器が出来るというのじゃなくて、とにかくギター1本。そして、誰かとコラボレーションするときに、その人のスタイルに合わせるんじゃなくて、自分の奏法をそのまま持っていくというやり方をしてたんです。歌を立てるために地味に弾くんじゃなくて、ギターを叩いたりという自分のスタイルをやるということは貫きました。歌のバッキングとしてはどうなのか、という意見はあったかもしれないですけど、それが押尾らしいバッキングだと。そうやってるうちに、押尾コータローのバッキングで歌ってみたいという声が届くようになったんです」
 
――自身で考える、押尾さんのスタイルとは何ですか?
「スキルをひけらかさないということはあったと思います。テクニックを見せるのではなく、それをどうやって面白おかしくするかっていう。関西人独特の感覚ですよね(笑)。ストイックに演奏するのではなく、笑いというか楽しんでもらえるためにテクニックを使えたらいいなと思ってるんです。特に地元の関西では、面白くないと『面白くない』とはっきり言われますしね(笑)。『あんた、おもろないわ』って言うおばちゃんを何とかして振り向かせるためにはどうしたらいいかという(笑)。全然ギターのことわからないけど、押尾コータローなら行ってもいいかなって思ってもらえるようにしたかったんですよね」
 
――押尾さんのギターは本当に1本だけで弾いてるのかと思うほどのテクニックですけど、楽しませるための必要な要素として身につけていったんですね。大阪出身であったことが今の押尾さんに大きな影響があったともいえますね。
「そうですね。いわゆるボケとツッコミは本当に日常茶飯事ですから(笑)。つい考えちゃうんですよね。関東だと、そこまでしなくていいのにって言われたりもしますからね(笑)」
 
――名古屋はそこまでボケ&ツッコミに厳しい土地柄ではないですけどね(笑)。
「全国共通してるのは、ギターのことなんて全然わからない人でも楽しめるコンサートにしたいというのは思ってます。インストゥルメンタルの世界は難しいと言われ続けてきて、全く興味ない人はやっぱり興味ないんですよ。そういう人がどうやったら楽しめるのかっていうのが、自分のステージでは常に課題です」
 
――最新アルバム『KTR×GTR』では、聴く人を飽きさせない多彩な曲が収録されていますね。
「これまでギターのいろいろなチューニングで曲を作ってるんです。今回は、スタッフから、このアルバムのこの曲のチューニングで曲を作って、というリクエストをもらい作り始めたんです。最初は音だけ奏でてるんですけど、だんだん夕焼けが見えてきたり。それは親と見てる夕焼けなのか、恋人と見てる夕焼けなのかで雰囲気も全然変わってきますよね。そうやってイメージしながら作ってます。あとは、割と男の子向けというか、ギター小僧必見!みたいに作ったりもしてます」
 
――ギターの音色もそれぞれ違いますよね?曲によってギターを使い分けてるんですか?
「いわゆる普通のアコースティックギター、バリトンギターっていうちょっとサイズの大きいギター、普通よりちょっと小さいサイズのミニギター、ウクレレと、いろいろなバリエーションがありますね」
 
――特に今回は収録曲『Plastic Love』で、プラスティックのギターを使ったとも聞きました。
「そうなんです。チープな音で録りたいなと思ったので、いつもお世話になってる楽器屋さんにお願いしたら、3本ほど持ってきてくれて。1本は中国製のギター。すごく安いんですけどめちゃくちゃ良い音で! 良い音すぎるから却下に(笑)。もう1本はマーティンというギターの老舗ブランドのもので、1950年代ぐらいの見るからに高いギター(笑)。こちらはものすごく趣のある音がするので、こちらも却下に。そしてもう1本が今回使ったプラスティックのギターなんです。弦以外はプラスティックなんですよ。プラスティックに弦を張った音で、ペコペコいってるんですけど、一度録音してみようと。録ってみたら、これが案外良い音がするんですよ。最初は布が弾いてある床の上で弾いてたんですけど、もっとプラスティック感を出したくて。その布を剥がすと下が大理石だったんですけど、そちらの方がはね返りがよかったので、そこで録音しました」
 
――言われないとプラスティックのギターなんて分からないです。
「チープにならなかったんですよね。もっとチープにしたかったんですけど。これはマカフェリっていうフランスの有名なメーカーが、プラスティック素材で真剣に作ったギターなんです。だからおもちゃのギターではないんですよね。音もすごい良いんですよ」
 
――先ほど大理石の床で録音したという話もありましたが、リバーブの強い音があったりと、録音方法も工夫されてるように感じます。
「エンジニアがすごくこだわって、マイクの距離感をリバーブで処理してます。1枚のアルバムの中で、それぞれ別の人が弾いてるように聴こえるって言われますけどね(笑)。バイオリニストのNAOTOやDEPAPEPEと一緒に演奏した『Magical Beautiful Seasons』はバンドサウンドですし。最後の『同級生』は、Galileo Galileiの尾崎雄貴さんが歌詞をつけて歌っていて、もうインストでもないですしね。そういう意味でオムニバス的な内容になったと思います」
 
――仰るように『同級生』は、唯一の歌ありですよね。曲をかくにあたり、やはり歌うのが前提だと違うものですか?
「全然違いましたね。普段はギターの手癖で作るのですが、今回は鼻歌から作ったんです。それをギターで弾くとなると、え?手が届かないかも、みたいなこともあって(笑)。でもその作り方だと今までにない新しさもあって、とても良かったんです。もっと前からやればよかったと思うほど」
 
――新しい一面を見せる本作もぜひ聴いてもらいたいですが、現在、全国47都道府県ツアー真っ最中ということで。ツアーはおひとりでまわってるんですか?
「ひとりです。僕もお客さんもまだ緊張してる感じがありますね(笑)。いろんなお客さんがいて、やっと見れたという人もいれば、目を瞑ってじっと聴いてくれる人もいたり。どこでリラックスしてもらうかなど、試行錯誤しながらやってます」
 
――名古屋はツアー後半戦で、だいぶ良い感じにあたたまってるタイミングじゃないかと。名古屋公演に向けてひとこと頂けますか?
「名古屋はデビューのときから、ずっと根強く応援してくれていて、本当に心強く思っています。たまたまコンサートで隣になった人同士が結婚しました、とかね。今回もそんな名古屋でお会いできるのを本当に楽しみにしてます!」



インタビュー・文:小坂井友美(ぴあ)



(5月 9日更新)


Check

Release


album『KTR×GTR』

2963円(税別)
SME
SECL-2081

LIVE data

15th Anniversary Tour
「KTRxGTR」

5月13日(土) 18:00
浜松市勤労会館 Uホール
指定席-5500円
サンデーフォークプロモーション静岡[TEL]054-284-9999
Pコード:313-757

5月14日(日) 18:00
日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
全席指定-5500円
7月2日(日) 17:00
松阪M’AXA
自由席-5500円(整理番号付・別途ドリンク代必要)
サンデーフォークプロモーション[TEL]052-320-9100
Pコード:313-942

※小学生から専門学生、大学生の方は公演当日1,000円キャッシュバック致します。当日、学生証(小学生の方は年齢が確認出来るもの)をご提示ください。お忘れになった場合はご返金できません。小学生以上有料。未就学児童は入場不可。

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