ホーム > インタビュー&レポート > 清木場俊介 インタビュー 「ビジネス派の歌手じゃないから、唄い屋としていつでも腹を切る覚悟はある」

清木場俊介 インタビュー
「ビジネス派の歌手じゃないから、唄い屋としていつでも腹を切る覚悟はある」

清木場俊介がニューアルバム「REBORN」をリリースした。このアルバムにはEXILE・ATSUSHIへ捧ぐ楽曲「友へ」、母親への思いを歌った「母ちゃんの幸せじゃけぇ」など、シンガーソングライターとして磨き続けてきたリアルな歌が収録されている。清木場にとって40歳目前の中で完成した「REBORN」はまさにターニングポイントとなるアルバムになったが、実は製作過程で歌手を辞める決断の瀬戸際までいったという。そこには清木場がソロシンガーとして歩んできた誇りと、音楽とリスナーへ対する愚直なまでの思いがあった。清木場俊介が40代になった時に一体どんな歌をうたうのか、そんな未来が待ち遠しくなるインタビューをどうぞ。

「唄に明確な相手がいたら、自ずと芯のある唄ができる」

――前作の「FACT」はとてもリラックスした状態で作れたとインタビューで話していましたが、ニューアルバム「REBORN」の制作はかなり難航したそうですね。

「曲は何十曲もできていたんだけど、ただ曲を書いているだけの感触が強かったんです。そこに伝えたいことや衝動みたいなモノがなかったから、全く納得できなくて。正直な話、“もうアルバム出せないわ”というぐらいまで追い込まれている状態だったな」

――そこまでの状況だったとは驚きました。

「新しい曲を作ることに対してずっと彷徨っていて。自分は毎回作品ごとに一曲入魂で、すべてを出しきって作るスタイル。だから「FACT」を納得して作れたからこそ、長期に渡るツアーを終えた後に燃え尽き症候群みたいな感じになって。自分が今何をメッセージとして伝えたいのか、どんな唄を唄いたいのか、その核がないまま曲作りをしても結局意味がなかった。

だからビクター(レコード会社)に謝って、決まっていたレコーディングのスケジュールを一旦バラしてもらったんです。会社には『曲はあるんだからこの曲たちで録ろう』と言われたけど、自分が納得できないモノを世にだしても仕方ない。それにお客さんは気づくと思うんですよね。“なんか、今回の作品は清木場の熱を感じないな”と」

――そんな状況を打破するきっかけはなんだったんですか?

「きっかけはATSUSHI(EXILE)に向けて書いた『友へ』を作れたこと。レコーディングをバラすとビクターには伝えたけど、やっぱり自分は負けず嫌いだから何か1つでもあがいてやろうと思って()。その日の午前0時までに自分が納得する曲が書けなかったら、“音楽を辞めよう”とすら思って。そうしたら22時頃に突然メロディーが降りてきて、そのまま歌詞も一気に書き上げて。で、その時に気づいたんですよ。

メロディーが降りてきた時に、この曲はATSUSHIに向けて書こうと思った。そうやって唄に明確な相手がいたら、自ずと芯のある唄ができる。そこから一気にモードが切り替わって、自分が納得する曲がかけるようになりました。だから『友へ』はATSUSHIうんぬんというより、自分が救われた大きな大きなきっかけの唄なんです。それまでストックしてあった曲はすべて捨てて、それから新しく作った曲だけが『REBORN』に入っています」

「これは『清木場の唄だ』と思ってもらえる唄だけをリリースする

――今、自分が唄うべきことを見つけることができたんですね。それこそ10年前の清木場さんの歌詞は自己との戦いのような言葉が多かったですが、アルバムを締めくくる曲が「母ちゃんの幸せじゃけぇ」であるなど、今作は周りの人へ向けて書いた曲が目立ちます。

「もうすぐ40目前の歳になって、自分があがいている姿だけを唄うんじゃなくて、もっと丸い表現もするようになってきた。今回は相手がいた方が芯のある歌詞が書けて、“次は誰に書こうか?”と思いを巡らせるようにしたらどんどん曲ができていったんです。“じゃあ、次はおかんに書こう”、“今の自分にはこういう悩みがあるから、これを唄えば同じような事で悩んでいる人を勇気づけられるかもしれない”と。答えがはっきり出たから、あとはその角度を変えてやっていくだけでしたね。なのでそこからは、音楽を辞めようとまで思っていたのが嘘みたいに作るのが楽でした ()

――そこに辿り着くまでが大変でしたが、清木場さんにとって最大の困難も自己を見つめ直したことで切り開けたんですね。

「納得していない作品をリリースする事を過去に経験しているので、その過ちをするのであれば唄い屋を辞めてもいいと思ってる。自分はビジネス派の歌手じゃなくて、ただ生き方を唄っているだけ。それが通らなくなれば歌わなくなるだろうし、そうすれば仕事ができなくなる。唄いたくもない曲を無理して唄って心までおかしくなると、自分から生まれる曲もおかしくなると思うから。だから、いつでも腹を切る覚悟はありますよ」

――とても清木場さんらしい言葉ですし、そんな発言をインタビューで言えるのは清木場さんしかいないと思います。だからこそリスナーにとって清木場さんの唄は代替のきかないものなんでしょうね。

「こうした発言ができるのは、ソロアーティストになってからもまっすぐ生きてきたから。その積み重ねてきた歴史があるからこそ。例えばの話、“こういう曲を唄ってほしい”とレコード会社から言われて曲をリリースしたとしたら、それを出した所でファンは首をかしげるから出しても売れない。だったらファンが『これは清木場の唄だ』と思って買ってくれる作品だけをリリースすることに意味がある。そこの一線はこれからもこだわっていきたいし、商業的な意味合いで唄を書きたくないというのは本音であり、清木場俊介の本質かな」

「若くて尖っていた頃の自分に憧れる、他人だったら嫌だけど(笑)

――常に誠心誠意を込めた音楽活動をしてきたからこそ、ファンと清木場さんの間には絶対的な信頼があるんでしょうね。歳を重ねた今でも、戦うべき最大の相手は自分であり、唄を届けるべき相手はファン。

「毎回自分には勝てないので、だから理想ができて、そこに立ち向かうことの繰り返し。人は歳をとれば他人に優しくなれるし、人も自分に優しくなる。だから人との繋がりは深くなっていくことが多いんですけど、自分自身のことは好きじゃなくなってるかもしれなくて、若い頃の勢いに憧れたりする。昔は“これがオレのやり方じゃあ!”とものすごい形相で言ったりね()。その怒りの中には孤独や不安、迷いがあるからこその見せ方で、それを今40になってしてたら“アホか”と言われますよ()。だけど、そこが愛おしかったりするんです。

今の自分も嫌いではないけど、若い頃の尖がっていた自分が可愛らしいなと。ただ他人だったら嫌いですけどね()。僕が音楽に対して不誠実であったら唄で仕事はできてないと思います。唄しか興味がないから、唄に関わるものしか真面目にできなくて。だから唄が好きだし、ひとつで十分なんですよね」

――先ほども言いましたが歌があるという事は、その先にはファンがいる訳で。唄とリスナーが直結しているのは、清木場さんの中でも筋が通りますもんね。

「本当にそうですね。ファンとはライブで認め合ってきたので。ライブを体験したら『やっぱり清木場だ、間違いない』と思ってくれたから何十年も音楽ができている訳で。その積み重ねでここまで来ているから、適当にはできないですね。自分に対して唄う曲もあればファンに向けて唄う曲もあるし、熊本の地震のこととかも、音楽で何かできることがあるならやるべきだと思う。偽善だなんだと言われてもね、自分がやるべきだと思ったらやるべきだから。そういう所は変わってないかな」

「このアルバムで唄っている愛や怒りが40歳の頃に熟してくる

――アルバムのタイトルは今作をまさに象徴する「REBORN」なので、まだまだ唄い屋・清木場俊介の物語は続きそうですね。

「『REBORN』とは言ったものの毎回最後だと思ってるので、どうなるか本当に分からない()。ただ40までは絶対に音楽をしようと思っていて、一体自分自身がどこまでいけるか楽しみだから、早く40になってみたい。このやり方で長く音楽をして、どこの立ち位置にいるかっていうのは気になるし。自分は本当に誰にも媚びずに音楽をやってきたので。40になった時にまだそこに立ち向かう精神があるのか、そこで満足してしまうのかどうなのか。40で伝えるべきことって非常に難しいので、音楽家として歌詞とメロディーをどこまでのせ続けれられるんだろうとは思ってます。その限界がどこなのかと探ってみたい。そういう中でこういった満足できる作品が生まれたから、まだまだ言いたいことはあるのかなと。だけど、どんどん伝えたいことは1つに定まってくるような気はしてる。自分としてはぶら下がってまで続けたくはないから、40になって1枚、欲をいえば2枚アルバムをかけたら潔く大間のマグロ漁師になろうかな()

――ええ()。そんな……。

「でも、それぐらい覚悟がいるんですよ。適当にやったら6070までできると思うんですけどね」

――インタビュー中に潔く歌手を辞めると言った人は、清木場さんがはじめてです。

「『俺、60までやりますから~』と言ってる人は絶対嘘つきですもん。だって60の自分が見えてるということだから。こっちは明日すら分からないし、例えばその発言をこの場でしたとして、果たしてファンが喜ぶか疑問で。それなら『40までは必ずやるから、40までの俺を大事にしてくれ』と言った方がリアルだと思う。その方が正直だしね。この業界、同じ立ち位置で23年残るだけでも難しい。夢だけではなく現実をみて、言いたい事や書きたい曲が降りてくればずっとやれると思ってる。俺はテレビなどに頼らずライブ一本でやってきたという歴史があるから、いつでも才能がなくなったら辞められるよ」

――武士ですね。

「そうですね。誰にも投資されずに、自分で自分に投資して生きてますから。嫌われようが好かれようが自分のココ()に大事なものがあって、それを唄えるならそれでいいんですよ。ファンが見た時にそれが嘘か本物かは分かる。俺、仕事間違えてるのかな?自衛隊に入った方が良かったかな()。本当に友だちとかにもめんどくさいと言われますよ()

――ははは、清木場さんには唄い屋でいてもらわないと困ります()。でも、こうやって唄い屋を続けてきたからこそ、過去に想像していなかったような事も起きたました。

ATSUSHIと東京ドームで一緒に唄えたことは、続けてきたからこその出来事だったな。もしソロで活動せずに地元の山口に帰っていたら絶対に実現してないだろうし。あれは本当に特別な時間だったから、一生忘れないだろうな。そう考えると歳をとることも悪くないと思う。このアルバムで唄っている愛や怒りが40ぐらいで熟してくると思っていて。40代になった自分がどんな風に唄えるかも楽しみだから、良いおっさんになりたい。自分にとって“これだ”と思える核がひとつあれば、唄い続けることができる可能性もあるから」

 

インタビュー・文:菊池嘉人

 

 



(7月18日更新)


Check

Release


album「REBORN」

3132円(税込)
ビクターエンタテインメント
VICL-64763

LIVE

7月22日(土) 18:00
日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
S席-6800円 着席指定席-6800円(立見不可)
サンデーフォークプロモーション[TEL]052(320)9100

Pコード:330-666

チケット情報はこちら