ホーム > インタビュー&レポート > Ivy to Fraudulent Game インタビュー 「俺たちの音楽や俺の歌は、もっとたくさんの人に伝わっていける、 しかもその人に深く入っていけるものだと信じています」

Ivy to Fraudulent Game インタビュー
「俺たちの音楽や俺の歌は、もっとたくさんの人に伝わっていける、
しかもその人に深く入っていけるものだと信じています」

2017年12月6日、1stアルバム「回転する」をリリースしたIvy to Fraudulent Game。結成から7年、本作をもって、満を持してのメジャーデビューとなる。メンバー自ら「新しいところに行けた」と語るこのアルバムは、作詞・作曲を手掛ける福島由也(Dr)と、フロントマンである寺口宣明(Gt./Vo.)のこだわりと覚悟が随所に詰まった1枚だ。バンドのキーマンでもある寺口と福島の2人に、本作へかける思いや音楽との向き合い方を聞いた。

「“自分が聴き手として感動できるもの”という判断基準しかない

―今回のアルバム『回転する』が完成して、最初の感触はいかがでしたか?前作と比べて、さらに自由で開けた作品になっている印象があります。

寺口「曲の雰囲気やアプローチとしては、また新しいところに行けた感じがありますね。前作でも、今までやったことのなかったテイストの曲にチャレンジしていたんですが、今作もまた新しいところに行けていると思います」

福島「“やりたいこと”は常にあるんです。ずっと自由にやってきているんですが、そのイメージを具現化していく技量やノウハウ、再現能力がだんだん伴ってきたということだと思います」

―“やりたいこと”というと、具体的にどんなことでしょうか?

福島「音楽性については、その時その時に自分がやりたいことというだけで、一貫した何かがあるわけではないです。僕は、“自分が聴き手としてまず感動できるもの”という判断基準しか持っていなくて。その範囲だったら何をしてもOKという感覚ですね。僕自身、リスナーとして音楽を聴いて、感動することがある。それと同じ感動を自分の曲に落とし込んで、曲を聴いた人にもそう思ってもらえるようにしたいです」

―福島さんの作った曲を、寺口さんは最初、どうやって聴くんですか?

寺口「最初に聴く時は、『この曲を自分たちがやる』という意識は取り除きます。いちリスナー、いちファンとして聴きますね。そうして聴くことによって見えるところもあるし。俺自身、福島の作る音楽が本当に好きなんでしょうね。彼の作る曲が魅力的だと思わなければ、お客さんとして客観的に聴くことはできないんじゃないかと思います」

福島「歌っている人が一度客観的に曲を聴くというプロセスは、普通のバンドだとなかなか経ることができない。だからこそ、結果的にああいう歌が歌えるんでしょうね」

寺口「いろんな曲を作ってくるので面白いです。再生ボタンを押す前は、いつもワクワクします」

―寺口さんは、曲の感想を福島さんに伝えるんですか?

寺口「いや、伝えないです。『ありがとう』くらい」

福島「だから、何を思ってるか分からない(笑)。何も返事がないんです」

寺口「曲を聴いて『何を表現したいのか分からない』ということがあれば、当然それは解消してから自分のものにしています。でも、そういうことはほとんどありません。全てが(福島の考えと)イコールじゃなくても良いというか…全てが彼の考えと同じで良いのであれば、福島が歌えば良いだけですよね。例えば“それ”という歌詞があったとします。俺が考えるに、福島はその“それ”を“絶望”と捉えているようだけれど、俺はその“それ”は“希望”だと思う。このズレはありだと思っています。答え合わせをしないことで、別の形になることもある。履き違えてはいけないけれど、違う生き物になっていく感じが面白いと思っています」

―全く同じである必要はなく、寺口さん自ら、曲を聴いて解釈していくということですね。

福島「その行為自体、お客さんと全く一緒というか。僕がどう思って書いたかというのは、聴く人にとっては関係ないことじゃないですか。それをノブがちゃんと体現しているのがすごく良いですよね。だから、ノブが歌ったことに対しても、お客さんが自由に解釈すれば良いと思っています。僕はそれを成長として捉えていますね」

―福島さん自身も、寺口さんが歌ったものを聴いて、自分の作った曲に改めて違う解釈を持つことがあるんですか?

福島「ありますね。僕の曲をノブがリスナーとして聴くのと一緒で、一回ノブが歌ったものに関しては、僕はまたリスナーに戻る感覚で聴きます。そこからまた影響を受けて、それが曲にフィードバックされて…という流れです。僕の持つ理想的な音楽の形ができています」

「良い歌詞だからこそ、歌詞カードを見ずとも、感じてもらえたら

―Ivyの楽曲には、シューゲイザーやポストロックの要素も入っていると思います。これらは聴く人を選ぶジャンルかもしれないとも思う一方、今作は非常にポップな1枚になっていると感じました。曲を作る時、「人に届ける」「ポップに」という部分は意識していますか?

福島「僕は本当に、“自分がどう思うか”という判断基準の中で曲を作っていて。でも、自分がリスナーとして聴くときと、お客さんがリスナーとして聴くときって、そこまでのズレはないと思うんです。だから、僕が“良い”と思うものをやるということが、結果的にそうなるんだと思います。ポップにしてやろうとか、迎合してやろうという気持ちは全くないですね」

寺口「だから、ジャンルがどうとか、そういうことでもないよね」

福島「うん。僕は別に、この音楽が閉鎖的だとは思っていない。歌詞も一見暗いけど、割と普遍的なことを歌っていると思います。そういう意味では大衆性というか、多くの人が持っているものに共鳴する部分は存在していると思っていて。そこに寄せて作ろうとは思っていないけれど、結果的にそうなって、そうしてお客さんのものになっていけばという願望はありますね」

―すると本作を作るときに、はじめからテーマを定めていたわけでもないということですね。

福島「まずは1曲1曲、『なんか良いな』みたいなところから始めていって、1曲できたら『これにないものを』という作り方をします。コンセプトを設けてというよりは、割と曲単位ですね」

寺口「自分の中では、歌のテーマみたいなものはあります。技術的なテーマもあれば、もっとメンタル的なものもありますね。ただ、作品としての一貫性を持たせるということは意識していないかな。1曲1曲にすごく丁寧に向き合っています」

―1曲1曲丁寧に、と今おっしゃいましたが、今作では歌詞が非常にはっきりと聞こえてくるのが印象的でした。

寺口「そこは、今作のレコーディングの中では一番大きなテーマだったかもしれません。前作のレコーディングの時に言葉でつまずくことがあって。出ている言葉と顔がリンクしていない…例えば“お”という音だったら“お”の形で歌った方が伝わりやすい、とかですね。それで自分の歌を見つめ直した時に、もう少し伝わった方が確かに入ってくるようになると自覚したんです。それでこの半年くらい、言葉の発音はすごく意識して向き合ってきました。最近も、『今歌っている母音が何か』というのはずっと意識しています。ずっと歌のことを考えていて、それが音にも声にも出ているんだと思います。かといって、つまらない歌になってもいけないので、その辺りの良さと聴きやすさとのバランスですね。こいつが良い歌詞を書くので、歌詞カードを見ずとも感じてもらえたらなと」

福島「はっきり歌わないと、割と理解しがたい歌詞かもしれないしね。最初に言ったポップネスのようなものも、ノブの歌や発音が大きいと思っています。ルーズに歌うと、どうしても閉鎖的なイメージになってしまう」

―「歌詞カードを見なくても歌詞が聞き取れる」というのは今回強く感じた部分です。ライヴ以上に歌詞が際立つと感じましたが、いかがですか?

寺口「ライヴの時の自分ってコントロールしづらい部分があって。だからこそカッコいい部分もあると思うので、どちらが正解なのか分からないですけど…ステージに上がる直前まで歌のことばかり考えていて、降りたらあまりライヴの時の記憶はない(笑)。でも俺、良い歌を歌うと思いますよ。どれだけワーッとなっても、自分の鳴らしている音楽に失礼のないようにしています」

「いちリスナーとして『このバンド、こういうこともやるんだ』って

―リード曲「革命」についてですが、「音楽で革命を起こす」と歌う歌はたくさんあるけれど、「革命を起こせよ 音楽と不安で」という歌詞はとてもリアルで、正直だと感じました。この歌詞は、どういうところから出てきたのでしょうか?

福島「自分が音楽を鳴らす意味みたいなものを、1曲に込められたと思っています。僕は何かにつけていちいち不安になったり、細かいことを気にしたりしてしまうんですが、それって別に得することではないですよね。でも、僕はそれを音楽にできる。普通に生きていたらマイナスになることでも、それを音楽に昇華することで、そう考えることさえも有益にできる。それが僕の音楽との向き合い方なんです。これは僕が音楽を作る側としての気持ちですけど、聴く側でも、音楽に何かを見出していく人はいると思うんですよね。それをこの曲で表せたと思っています。『革命』ってタイトルをつけているけれど、そんなに大きな内容を歌っているわけではなくて。対自分というか、もっと狭い世界の話です。それがアンバランスな面白さでもあると思います」

寺口「頭のギターリフはこの2~3年、福島が楽屋や家でずっと弾いていたギターリフなんです。それが形になったんだなって。新しいところに行ったというのは、僕も思いました。でも、歌詞の世界観はやっぱり福島。サウンド面も含め、いちリスナーとして『このバンド、こういうこともやるんだ』って感じましたね。ただ、こういう明るいアップテンポの曲は俺の中でのイレギュラーでもあって。初めて聴いた時、この曲の景色はイメージできたけれど、落とし込むのは時間がかかりそうだと思いました」

―こういう曲に救われるリスナーの方って、きっとたくさんいると思います。ちゃんと届く曲になっていると思いました。

福島「そういう人たちも、何かと向き合っていければいいと思います。僕はその人の人生とは関係ないから、その人はその人の解釈でその曲を聴いてくれればいい。それが結果的にその人のためになれば僕はすごく嬉しいし、それが結果的にまた僕のためになる。それがまた、音楽のすごく良いところだなと思います。直接的なコミュニケーションではないけど、本質的なところで、何かコミュニケートできるということですよね」

―間奏のギターも、今までとは違った雰囲気ですよね。

福島「あれは多分、ギターというよりリズムだと思うんですよね。あの跳ね方というか、軽快な感じ。コード感とかは俺の手癖ばかりなので、ビート感や、ノブの歌の表現によるものもあるかもしれません」

寺口「一人で弾き語りをする時にできていて、バンドだと映えないと思っていた自分の色が、バンドでもやっと使えるようになったという感じです」

福島「僕らは歌モノだからね。歌が真ん中にあるのが大前提だから、曲調は割と自由なのかもしれません」

「僕が音楽を書くプロセスを、1枚のアルバムで再現した

―今回のアルバムは、1曲目がインストで、2曲目の最初の歌詞はいきなり「最低 最低」と始まります。初めて聴いた時は驚きました。

福島「そこも意識してはいます。曲を作る時は1曲ずつですが、アルバムとしてどう成立させるか考えた時に、まず歌い出しの一節がこの言葉であるインパクトは強いですよね。それからアルバム自体が“回転”したときに、自分に対する不安感から来る「最低」という言葉を、最後の曲である『革命』で昇華するイメージもありました。僕が音楽を書くプロセスを1枚のアルバムで再現するというのが、『回転する』というアルバムタイトルの由来の一つにもなっています」

―「最低」は、ずっと静かにピアノの音が流れる中、ノイズやアレンジでどんどん色が変わっていきます。これも強烈なアレンジですよね。

福島「とはいえ、すごく自然に、好きなように作った曲です。自分がリスナーとして聴く音楽と、やる側としての音楽が一番近い感じというか。自分のルーツの中で鳴っている感覚はある一方で、自分だけの色も出せたという感覚があります」

―アルバム中盤の4曲は、ライヴでも既におなじみの曲だと思います。改めてレコーディングしたことで、この曲たちへの印象は変わりましたか?

福島「ライヴでは半端なくやってきた曲なので、その段階でどんどん成長してきていますよね。それを音源として、どうすればさらにかっこよくなるか、悩んでいた気がします」

寺口「おそらくですけど『青写真』は、18歳の時にデモ音源を出してから、ライヴでは一度も外したことがないですね。いろんなものを吸って、曲も成長するし、変わってきたと思います。「青写真が侵されてく」って19歳の頃から歌ってきて、もう23歳なので侵されまくっているよね(笑)。これからも、自分たちでも想像できないですけど、音も声と変わっていくと思います」

福島「必然的に変化していくと思いますね」

「俺たちの音楽や俺の歌は、もっとたくさんの人に伝わっていける
 しかもその人に深く入っていけるものだと信じています

―「どこか」「革命」など、既にMVが公開されている曲もあります。SNSなどでの反響はありましたか?

寺口「『これがメジャーか』みたいなことを言う人はいるね」

福島「ああ(笑)。でも、“メジャー感”って何なんですかね。MVに対して『予算をちゃんと使ってるな』とかなら分かるんです。でも、曲に対してそういうことを言う人もいて、それって何だろうとは最近ずっと考えています」

―個人的にも、「メジャーデビュー」だからこういうアルバムになった、という印象は抱きませんでした。

福島「そこは全く意識してないですね」

寺口「純粋に聴けないやつが多いよね、最近は」

福島「人の情報に流される人が多いなと思っていて。自分の中で判断基準を持っていないというのは、かっこよくないと思うんです。その人自身の解釈をちゃんと持つというのは素晴らしいことだと思うし、そうじゃないと音楽が価値を持たない気がする。それをまず、一つ提示したいです」

―リリースに続き、ワンマンツアーも控えています。今回は公演数も多く、初めてIvyを見に来るというお客さんも多いのではないかと思います。どんなツアーになりそうですか?

福島「ワンマンでツアーができるって、すごく良いですよね。本当の自分たちの良さを見せたいと思ったら、短い尺だと結構難しかったりするので。長尺で、それをちゃんとできるツアーっていうのはすごく楽しみだし、お客さんにも楽しんでもらえるんじゃないかと思っています」

―ワンマンを経ての2018年は、どんな年になりそうでしょうか。

寺口「20代半ばに入ります(笑)。“来年こそは”みたいなことではなく、いつも思っていることですが、俺たちの音楽や俺の歌は、もっとたくさんの人に伝わっていける、しかもその人に深く入っていけるものだと信じています。自分はとにかく良い音楽、良い歌をと精進するのみですね」

福島「来年のことを考える余裕もないというか…でも、常にそのくらい、今やっていることと真剣に向き合っていられたらいいですね。来年もそうありたいし、多分そうだと思います。でも、余裕が生まれたら良いなとも思います(笑)」


インタビュー・文:小島沙耶 




(12月28日更新)


Check

Release


Album「回転する」

【通常盤】
2300円(税込)
VICL-64881
ビクターエンターテイメント

LIVE

1月28日(日) 18:00
名古屋クラブクアトロ
オールスタンディング-3000円(別途ドリンク代必要)
サンデーフォークプロモーション
[TEL]052(320)9100

Pコード:343-614

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