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怒髪天 インタビュー
「ロックバンドは自分がカッコいいと思ってる
 偏った美学だけで成立していればいい」

JAPANESE R&E=「リズム&演歌」を掲げた独自のサウンドで人気を集める怒髪天。彼らが約2年ぶりとなるアルバム「夷曲一揆」(ひなぶりいっき)をリリースした。タイトルの「夷曲」は諸説あるが田舎風であること、また、そのような詩歌という意味。一揆という言葉と組み合わせることで、怒髪天らしいユーモアセンスに溢れたアルバムタイトルとなっている。一体、どのような思いで今作を作ったのか。ボーカルを務める増子直純に話を聞いた。

――ニューアルバム「夷曲一揆」はギター上原子さんの攻撃的なリフと、増子さんらしさに溢れた独自の視点で書かれた歌詞が非常に印象的です。

「世界情勢や日本の状況含めて、こんなにリアルに自分たちの生活が危ぶまれていると感じる日々になるとは思ってもいなかったよ。もう日本に生きている限り目をそむけることも難しい状況になってきていて、そうした中で感じたことを歌詞にしている。それに加えて今はSNSの発達で何を言っても叩かれるような風潮があって、今の若いバンドマンはかわいそうだなと思って。昔だったら全く気にもされなかったような発言によって謝罪までさせられてさ。芸人やロックバンドにまでコンプライアンスを求められる時代になって、そういう事ができないからバンドをやってるわけで。だからロックバンドは本来、もっと感情的に軽率に思ったことを言い散らかして良いと思ってる。そこをもう一度再定義したいのもあって、色んなメッセージを込めて作ったアルバムでもあるね」

――確かに“良い子”にならざるをえなくなった若手バンドマンは多いかもしれませんね。

「もうね、バンドマンなんてめちゃくちゃやってればいいんだよ。今はどんどん生きにくい世の中になってきちゃってるから、俺らが20代30代を生きてきた頃とはずいぶんバンドシーンも変わってきたなと思う。ロックって抑制された表現じゃやっぱり生ぬるくなっちゃうんだよ。“ロックバンドぐらいは”ってそれぐらいのスタンスでいなきゃ、ロックバンドをずっと続けることなんてできないね。そんな “ロックバンドぐらいは”という思いを込めて作ったのが『HONKAI』という曲」

――この曲にはそうした増子節が炸裂しているからこそ、増子さんにしか書けないメッセージソングになっていると感じました。

「今の世の中を生きていてラブソングばかり書いているミュージシャンがいたら『それは本当の気持ちか!?』と言いたくなるぐらい、やっぱり日本で生きていて感じることはあって。怒髪天の歌はリアルでありたいと思っているから、自分の気持ちを素直に表現することはすごく大事にしている。ロックバンドは世の中に何かを期待されているようなもんじゃないし、ワガママで感情的で勝手なものなんだよ。自分がかっこいいと思ってる偏った美学だけで成立していて、それで良いんだよ。芸術はすべてそういうものだと思ってるし、ロックバンドが反骨精神で成り立ってるのは当然だからね」

――上原子さんの攻撃的な曲調と増子さんのそうした気持ちがリンクしている部分もあると感じました。

「わざわざ言葉にして共有したりはしなかったけど、同じ時代を生きているからね。そうしたヒリヒリした空気感やどうしようもできない焦燥感みたいなものは、お互いに感じていたんだろうね。それが音楽に反映されるのはすごく自然なことだと思うし、友康が作ってきた曲に違和感なく歌詞をのせることができたのは嬉しかったな」

――今回の歌詞で増子さんが歌っていることはとてもシリアスな一面があるのですが、それを直接的に伝えるのではなく、ユーモアで包んでメッセージとして響かせているのはさすがだと思いました。

「そこは本当に大事なところなんだよね。アルバムを作る時にいつも気をつけているのはテーマが深刻なほど、ユーモアをすごく大事にしてる。そうした物事を伝えたい時にストレートに伝えても重くなるだけだから、逆に伝わらなくなる。そこをどうしたら人の心に残るような曲になるかといったら、そこはやっぱりユーモアなんだよね。ロックバンドもエンターテイメントだからね。学生時代にこんな経験しなかった? 先生がすごく正論で良いことを言ってるんだけど、全くその話が頭に入ってこない。あれと同じで人の心に響くためには余白が必要っていうか、聞いた人が自分で考える余地みたいなものがあると心に残ったり、あとからまたその事について考えるきっかけになるかもしれない。そうした時に深刻なことをユーモアをもって表現すると、すっと頭に入ってくるんだよね。これは自分で実際に体験したことでもあるから、『夷曲一揆』の曲のような歌詞を書く時には特に気をつけていることだね」

――歌詞もすごく分かりやすい言葉が多いですよね。

「話し言葉で書いてるから、言葉のチョイスも自然とそうなってる。人とこうやって話している感覚に近い感じで歌詞を書いているから。今回のアルバムで伝えたかったことは、早急にわかりやすく伝える必要があると感じていたから、あえて平易な言葉で表現したというのもあって。それは表現者として今何を伝えたいのかを考えた結果というか。とはいえバンドは楽しんでやりたいから、さっき言ったユーモアもすごく大事にしている」

――増子さんはご自身のスタンスや思いをはっきりと持たれていますが、これまで自身のコンプレックスなどを感じたことはあるのでしょうか?

「あんまりないかもね。“生き死にに関わること以外は、別に良いんじゃね?”と思って生きてきてるし。優しい男になりたいとか思ってたけど、やっぱり無理で。あと女心が分からないとかね(笑)。それはいつまで経っても変わらない(笑)。“なんで俺こうなのかな?”と思ったことが何度もあったけど、やっぱり変われないもんだね」

――「生き死に関わること以外は、別に良いんじゃね?」というスタンスは今作の「初めての旅につき」にも現れていますよね。

「日々生きる中で失敗することもあるわけじゃん。なんで失敗するんだと考えた時に、“人生はその人にとって初めての旅だから”と考えると少し楽になるんだよね。初めてだから失敗もするし過ちもする。人は人と関わって生きていくしかないんだから、お互いを許してやっていこうよと。俺も許してねっていう甘えも少しある(笑)。そういう相手を思いやる気持ちって人と接する中で一番大事なんじゃないかな」

――“人生は初めての旅”と捉えるようになったのは最近のことなんですか?

「そうだね。去年初めて海外に行って、タイに行ったんだけどそこでの経験が大きかったかな。海外に行ってみて面白かったから、海外でライブするのもいいかもなって思った。怒髪天はすごく海外の人の食いつきが良いんだよね。俺の友だちが洋服屋をしていてそこで怒髪天を流していたら急に外国人が店に入ってきて、『これはなんの音楽だ?』と聞いてきたことがあったみたいで。そもそも怒髪天の音楽は日本特有のメロディーにのせてロックをしているから、海外の人からしたら『なんじゃこりゃ』と思うだろうしね」

――ニューアルバム「夷曲一揆」のリリースツアーとして名古屋では来年の1月13日にライブが決まっています。また9月30日には初開催となる3マンライブイベント「EXTRACT」にてKen Yokoyama、The Birthdayとのライブが行われます。それぞれどんなライブになるでしょうか?

「リリースツアーはいつも通りのライブをするだけだね。『夷曲一揆』の曲がツアーを通してどんな風になっていくのか楽しみだよ。ライブイベントの方は渋い良いメンツだね(笑)。それぞれ音楽性も違うしスタンスも違うけど、3バンドとも仲が良いからね。だからその3バンドで東京じゃない場所でライブができるのが良いね。そうしたカラーが違うバンド同士だからこそ、お互いのお客さんにライブを観せ合えることが楽しみだね。この日にしか生まれないものが間違いなくあると思うから、ぜひ遊びに来てほしいよ」





インタビュー・文:菊池嘉人(ぴあ)




(8月 4日更新)


Check

Release


album「夷曲一揆」

3240円(税込)
TECI-1590
テイチクエンタテインメント

LIVE

一揆一友TOUR ~権べ&田吾~

2019年1月13日(日) 18:30
名古屋ReNY limited
オールスタンディング-4500円
(別途ドリンク代必要)

ジェイルハウス[TEL]052(936)6041
※保護者1名につき3歳以下1名まで無料、2名以上及び4歳以上チケット必要。

Pコード:115-144
9月1日(土)より一般発売開始

チケット情報はこちら


EXTRACT

9月30日(日) 15:00
アクトシティ浜松 展示イベントホール
オールスタンディング-6480円
(ブロック指定/ドリンク付)
出演:Ken Yokoyama/The Birthday/怒髪天

ジェイルハウス[TEL]052(936)6041
※本券のみでのご入場はできません。ご入場前にリストバンドへの交換が必要です。小学生以上有料。未就学児童は保護者1名につき1名まで無料。未就学児童をお連れのお客様は、ご購入頂いたチケット記載のブロックに関わらず、親子エリア(客席後方エリア)へご案内をさせて頂きます。入場時にお子様の年齢確認をさせて頂く場合がございます。

Pコード:118-783

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