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Awesome City Club インタビュー
「楽しいことも悲しいことも
楽しく歌うのが音楽の正しい在り方だと思ってる」

2018年12月19日に1stフルアルバム「Catch The One」をリリースしたAwesome City Club(以下「ACC」)。デビュー3年半にして初となるフルアルバムには、2018年3月にリリースしたEP「TORSO」や、以後の配信シングル3作の楽曲を含む全10曲が収録されている。近年、活動の幅を広げているACCが満を持してリリースしたフルアルバムの「Catch The One」というタイトルに込められた思いや、それとリンクするバンドの今、確固とした音楽ポリシーについて、楽曲制作を中心的に行うatagiと、ヴォーカルやダンスパフォーマンス、ビジュアル面でも多才に活躍するPORINの2人に話を聞いた。

「その人だからできることとか、その人だからカッコよくなるものを追求したい」

——今回の制作はいかがでしたか?

atagi「今回のアルバムは、いっきに短期間で作ったわけじゃなくて1年間時間をかけて作っていたのでロングランて感じでした。長いこと曲作りしてたなあ」

——今作には「バンドとしてより一つになろうとしていた一年間の遍歴」が込められているとうかがいましたが、これはリリースまでの一年間を指しているんですか?

atagi「そうです。2015年から計4作リリースした『Awesome City Tracks』というシリーズもののナンバリングをベストアルバムのリリースという形で完結させて、さらにそれからの1年ですね」

——どんな1年でしたか?

atagi「『Awesome City Tracks』はACCのカタログになるような音源を作ろうという思いがあったんですけど、いざそれが完結して、こっから自分たち“どうなるだろう?”とか“どうしたいんだっけ?”っていうのがいきなり降りかかってきた1年でした」

——その結果バンドが向かった方向というのは?

atagi「“バンドとしてもっとどうなりたいか純粋に考えようよ!”ってなって、そしたらやっぱりもっと俺らって“バンドらしく”なったほうがいいというか、なりたいなって思ったんです」

——みなさんの思うバンドらしさとは?

atagi「音や演奏を聴いて、いかにバンドメンバーの顔とか演奏してる様子が思い浮かぶかっていうのが一つ、すごく大事なことだと思います。例えばロボットでも出せるような音を出してたら、わざわざ人間がやる意味ってなくなってしまうじゃないですか。その人だからできることとか、その人だからカッコよくなるものを追求して、音にしたときにいかにそれが人の影を匂わせるものであるかがすごく重要で、そういう面についてACCはもっともっとバンドにならなきゃいけないなあと思ってます」

——それは楽曲のアレンジなどでも意識していますか?

atagi「そうだなあ…例えばコーラスワークを増やしたり、ギターとベースとドラムのパートにすごく目立つようなフレージングを多用したり、そういうことでもっとバンドってものに近づけれるようには意識してきましたね」

「“このバンドこう楽しんだらいいんだ”っていうのが瞬間的にわかってもらえるようになってきている」

——人間の存在感という意味では、音楽的なことのほかにパフォーマンス面でPORINさんのダンスもすごく利いているように感じます。

PORIN「ありがとうございます。やっぱりライブが一番5人の顔がわかる場所だと思ってるので、そこでのパフォーマンスにバンドらしさってすごく現れると思うんですね。私たちがやってる音楽はブラックミュージックを基調としたダンスミュージックなので、それをより濃く伝えるための手段としてダンスというものがすごくハマって、それがらしさにも繋がったので今ダンスはすごく頑張ってます」

——お客さんの反応はどうですか?

atagi「お客さんに1曲目から「あ、このバンドこういう風に楽しんだらいいんだ」っていうのが分かってもらえるようになってきてると思います。ライブって、何者なのか分からないっていうのが一番良くないんですよ。お客さんもどう楽しんでいいか分かんないし、やってるほうもどんどん不安になってくるし。でも最近は、アウェイの場所でもぶち抜くというか、自分たちなりの突破口を見つけて、お客さんに一瞬で「こうすれば楽しい」っていうのを提示できてる感じがするよね」

PORIN「うん、鉄壁というかなんというか(笑)まだ完璧ではないけど、ライブの流れや構成の仕方が徐々にわかってきた感じがします。だからすごく安心してステージに立てるし、安心できるからこそのチャレンジもできるようになってます」

「音楽も僕らも同じ。1つ1つの積み重ねが大きな何かに繋がっている」

——今、ライブにおいて最初の掴みが大事って話だったと思うんですが、今回アルバムタイトルの「Catch The One」にも「重要なのは一拍目だ」という意味があるんですよね。

atagi「おお、まさにそうなんです!」

——ライブのポリシーや感じたことが、アルバムタイトルのアイディアになったんですか?

atagi「この『Catch The One』っていうのはダブルミーニングになってるんですけど、一つは今おっしゃっていただいたように、ブラックミュージックやR&Bの帝王と呼ばれジェームス・ブラウンという人物がバンドメンバーに口酸っぱく“1拍目だ!”という意味で言っていた“The One”です。その言葉を、ブラックミュージックへのリスペクトも込めて使わせてもらったんです」

——もう一つの意味は?

atagi「メンバーや自分の大事な人、周りにいる人に、それぞれの大事なものを掴み取って欲しいと思って。“それ(The One)を掴め!”っていう広い意味での意訳です。最初このアルバムタイトルを思いついたときは、ライブよりもバンド内の関係性について色々考えていたタイミングで、そういうとこから出てきたフレーズです」

——結果的に、今のACCのライブのスタンスに自然とリンクしたんですね。

atagi「まあどちらの意味も、言いたいことは一緒なんですよ。音楽で“せーの、ジャン!”とか“1、2、3、4、カーン”とか、その1拍目に全てがかかってるといいつつも、実はその先の2拍目3拍目も次の1拍、次の次の1拍なんですよね。結局1拍1拍の積み重ねなんだっていうのが、僕らの歩んでいる道と本当に一緒だなあと思って。取捨選択を重ねて、その1つ1つの積み重ねが大きな何かに繋がっているっていうことが、今回のアルバムの中で言いたかったことの一つなので。ライブもバンドもみんな全部大きくひっくるめての『Catch The One』て感じかな」

「帰る場所があるという安心感があるから、新しいことができる」

——タイトルナンバーの「Catch The One」はatagiさんからメンバーへのメッセージ的な意味もあったそうですが、PORINさんはこの曲を受け取る側としてどう感じましたか?

PORIN「うーん、そうですねえ…」

atagi「気持ち悪かった?きっしょって思った?(笑)」

PORIN「ううん、全然(笑)そうだなあ、今5人それぞれにやりたいこととかやろうとしてることとかがあると思うんですけど、それを肯定してもらえた感じがするというか、背中を押してもらえた感じがすごくします」

——5人それぞれがやりたいことというのは、バンド活動以外の分野も含めてですか?

PORIN「そうですね。音楽はACCの音楽がありつつも、今年はみんなACC以外にも輝ける場所があったので。バンドの中でも役割を見出だして、力を発揮してくれるメンバーもいたりして、それは5人5様役割分担できてる感じが今すごくしてます。例えば私はアパレルブランドをやっているんですが、ACCっていう帰る場所がアルバムでちゃんと作れたからこそ、音楽以外の活動もできてるんだなって思います」

——バンドの存在、バンドメンバーの存在が活動の幅を広げることに繋がっているんですね。

atagi「やっぱりね、人間どっかに帰る場所があるとか所属していることの安心感て少なからずあると思うんですよ。それがあるから新しいこともできるし、新しい発想も出てくる。新しい発想が出てくるから新しい行動に移せる。それがいい循環になって、日々何か進化だったり更新してる実感が得られてます」

「ちゃんとみんなの歌になるように、アウトプットは外を向きたい」

——「ダンシングファイター」は、atagiさんがお好きな日本ハムファイターズの西川遥輝選手をモデルに書かれた曲なんですよね?さすがとびきりのアップナンバーに仕上がってますね。

atagi「そうなんですよー!でもね、選手としてすげえってこととは少し違って、西川選手の育ってきた環境とか、そういうのがかっこよくて…なんていうか」

——生き様?

atagi「そうそれ!山あり谷ありで苦労して、何回もくじけそうになりながらも、頑張り切ってレギュラー入りするっていうストーリー、生き様に感動してるんですよ」

——その感動を楽曲に昇華させたんですね。今作ではatagiさんが作詞作曲に関わっている楽曲は他にもたくさんありますが、そういうきっかけで曲を作られることが多いんですか?

atagi「そうですね。どういうことを書きたいかってなった時に、2、3日したら忘れてるようなことを書いていたらダメだって僕思うんですよ。ってなると、すっごく心にきたものを書こう。マイナスの方にでもプラスの方にでも、とにかくなんか心がブルブル!ってなった瞬間を歌にしたいなと思ってます」

——なるほど。じゃあちなみに「君はグランデ」の歌詞の背景を教えてください。

atagi「あー、これは今作の中で唯一、皮肉めいた気持ちも入ってる曲ですね。謙遜って日本人の美徳みたいなとこありますけど、すぐ謙遜する癖は“よくないで”って思ってた時期があって」

——それで「幸せを無駄使いしよう」なんですね。

atagi「そうなんですよ。だって自分の幸せが目の前にあるのに、“手を伸ばすなんて浅ましいこと僕できないんで、いいです。あ、でも、その幸せがもっと近くまで流れてきたら受け取りますけど”みたいな人が多い気がするんですよ。そんな謙遜の仕方ある!?って。周りにどう見られるかとかどう思われるかより、目の前の幸せ大事にすればいいじゃん!って思うし、周りの人の目線によって君の欲しい幸せ価値が左右すんの!?って、とにかく納得いかなかったんです」

——「幸せを無駄使いしよう」ってすごいハッピーになるパワーワードだなって思ってたんですけど、atagiさんがそこまで昨今の風潮に憤慨されて作ったとは…。

atagi「そういう怒りを底ぬけに明るく歌いたいっていう願望もあって(笑)。でも変ですよね、ムカつくことが目につくような人がハッピーな曲書くって」

——でも、そういう些細な引っかかりに気付けるということはアーティストとしても人としても、大切なことですよね。人って同じ物事でも、ポジティブに捉える人とネガティブに捉える人がいますけど、ネガティブな発言て周りに対して負の影響を与えてしまうと思うんです。逆に、atagiさんのようにポジティブに捉えて発信する人っていうのは、それを受け取る側へプラスのストロークを与えてるんじゃないかと。

atagi「まさに!ただ、本音を言うと、僕は後者側だと思うんです。ネガティブなこと言っちゃうタイプ」

——えー、意外です。

atagi「多分いろいろ目についちゃうタイプなんだと思うんです。でも、例えネガティブな目線がきっかけだったとしても、アウトプットはしっかり外を向きたいっていうのはポリシーです。ちゃんとみんなの歌になるように。結局楽しいことも悲しいことも楽しく歌うっていうのが音楽の正しい在り方だと思ってるし、多分音楽って脈々とそういうものだったはずだと思うんですよね」

「悩んでいたあの子にも共感してもらえるような曲を作りたいなと思って」

——PORINさんが作詞された「ワンシーン」は、情景描写がひときわ繊細ですね。

PORIN「これは、久しぶりのソロ曲ということで、私の好きなちょっと切なめの曲調で、リリース時期に合わせて冬を題材にしたお別れの曲を書いてみたいと思って書きました。自分にとってのデトックスにもなったなって思います」

——デトックスということは、ご自分の実体験が題材なんですか?

PORIN「はい、実体験も少しは入ってます。でも歌詞書こうってなったら何も考えなくてもこういう詞になっちゃうんですよね」

——以前ACCも一緒に制作したことがある、音楽プロデューサーで作詞家でもあるいしわたり淳治さんが、歌詞で共感を呼ぶポイントの一つとして「シチュエーションの限定」と言われていたことがあって、この曲はまさにそれだと感じました。「6年目の古いディスクデッキ」とか「柄のブランケット」とか具体的な物の描写を、聴く人は「○年目の古い○○」、「○○柄の○○」と、自分の恋愛ストーリーに合わせて脳内変換しながら聴いてしまうんだろうなと思います。

PORIN「そうならうれしいです。ちょうどこの曲作ろうとしてる時に、ファンの女の子から“彼氏に振られちゃいました。もうどうしようもできないですけど、PORINちゃんならどうしますか?”ってインスタのダイレクトメールが来て、そういう感覚懐かしくて、その子にも届いて共感してもらえるような曲を作りたいなと思ってたので」

——その子はもちろん、まさに聴いた人それぞれの恋愛の「ワンシーン」に寄り添う曲になりましたよね。振られて落ち込んでしまう気持ちも肯定しながら、前を向くための心の準備にそっと手を添えてくれてる優しいメッセージソングですね。

PORIN「そうですね。無理しなくてもいいんだよ、落ち込む時は落ち込んでもいいし、休みたければ休めばいいんだよっていつも思うので、そういう曲になっていればうれしいです」

「ACCの新たなスタンダードであり家訓」

——「ダンシングファイター」のようにポジティブに振り切れたナンバーもあれば、ゆるいラップナンバーや、メランコリックなミドルナンバーもあり、今回のアルバムはすごくバラエティに富んだ印象です。

PORIN「そうですね、バラエティーに富んで、でもとっ散らかることもなく、一本軸が通っているのがこのアルバムのいいところだと思います」

——ベスト盤後にリリースして今作の先駆けでもある「TORSO」は、バンドの幹のような作品になったとお聞きしていますが、今回のアルバムは例えるとするとバンドにとってどんな存在の作品になりそうですか?

atagi「なんだろうな〜。バンドっていう集合体で音楽活動する中で、バンドたるものこうあるべき、かくあるべきっていう指針みたいなものを、曲を通して打ち出せたのかなとは思います。いろんなセオリーが詰まってて、多分これが一つまたACCの新たなスタンダードになるのかなって。ここをゼロポイントとして、なんか迷走しかけたら戻ってきて、自分のいる場所を確認できたら、今度また行きたい方向を探す。そういう立ち位置を作れたと自分は思っています」

——PORINさんはどうですか?

PORIN「今作についてatagiが“ACCの家訓ができた”って言ったときがあって、ハッとしました。確かにできたな〜って思いました」

atagi「できたかなあ?(笑)」

PORIN「うん、なんかすごいハッとした。『TORSO』から始まって、軸となるものを見出して、自分たちのズバリこれだ!ってものができたと思います」

——それはもう、非常に頼もしいです。そんな家訓となるアルバムを引っさげて、2019年はどんな年にしたいですか?

atagi「1年って早いんで、追われるように曲を作らなければなって思ってます。ただ、なにかピンとくるものがない中で無理やり作るってできないので、そういう意味では言いたいことがある充実した1年でありたいなと思います」

PORIN「この2018年で出来上がった『Catch The One』ーーACCの家訓をベースに、どんどん羽ばたいていけたらいいなって思いますね。新しい風もガンガン入れていきたいし、チャレンジも続けていきたいな。2019年は、かなりギア上げてやっていきたいです!」


インタビュー・文:岡部瑞希




(1月16日更新)


Check

Release


album「Catch The One」

【通常版】
3024円(税込)
VICL-65081
ビクターエンタテインメント

LIVE

▼3月5日(火) 19:30
Live House 浜松 窓枠
▼4月11日(木) 19:30
ダイアモンドホール
オールスタンディング-4000円(別途ドリンク代必要)
※12歳以下は保護者同伴の上チケット購入の上入場可。3歳未満は入場不可。お子様の安全確保は保護者の責任においてお願い致します。
ジェイルハウス[TEL]052(936)6041

Pコード:133-468

▼Awesome City Club 公式サイト
http://www.awesomecityclub.com/

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