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「OAUは年齢や経験した事によって命題が変わっていけるバンド」
OAU(TOSHI-LOW) インタビュー

アコースティック・バンドのOAUが、5年ぶりとなるアルバム「OAU」をリリースした。今作には西島秀俊と内野聖陽が主演のドラマ「きのう何食べた?」のオープニングテーマ「帰り道」や、松坂桃李や本田翼が出演した映画「新聞記者」の主題歌「Where have you gone」が収録されている。温かいアコースティックサウンドの楽曲や、ロックバンド・BRAHMANのボーカルでもあるTOSHI-LOW(Vo.&ACOUSTIC Gt.)とアメリカ出身のMARTIN(Vo.、VIOLIN、ACOUSTIC Gt.)の柔らかくも力強い歌声は、老若男女問わず多くの人の心に響いている。さらにOAUの主催フェス「New Acoustic Camp」は記念すべき10年目の開催を迎えたことも記憶に新しい。バンド名を冠にしたニューアルバムはどのように生まれたのか、TOSHI-LOWに話を聞いた。

「OAUで歌いたいことを歌詞にして、
聴いた人がシロさんとケンジを思い浮かべたら100点」


——OAUは来年で結成15周年を迎えますが、成熟さと新鮮さを併せ持った素晴らしいアルバムができましたね。

「前までは理想の音に対してミュージシャンとしての力量が足りなかったり、それを説得力をもって鳴らせる中身や年齢が釣り合ってなかった。でも今はそれがすべてガチッと合ってきて、自分たちが鳴らしたかった音楽を、描いた理想のまま鳴らせるようになったんだと思う。元からOAUでやろうと思ってることが点々とある中で、それに心も体も技も一致してきてる。そういう意味でこれがゴールではなく、スタートになるんじゃないかっていう手応えはある」

——そうしたタイミングでバンドにとって転機ともいえる「帰り道」や「Where have you gone」が生まれたのは偶然ではないんですね。「帰り道」はドラマサイドからのオーダーもあったそうですが、それが良い相乗効果を生みましたか?

「原作があるものだから、それに沿わないものを書いてバンドのプロモーションのためだけのタイアップはやりたくない。かと言って作品に入り込みすぎてる曲を作るのは自分がやりたいことじゃない。自分の言いたいテーマと原作のもつ大事な部分が合わされば必ず良いものが生まれると思ってる。原作のことだけを考えて作ったわけじゃないけど、そこがリンクしたから何食べファンの人たちからも愛してもらえる曲になったんじゃないかな」

——TOSHI-LOWさんは何食べのことは知ってたんですか?

「最近漫画はあんまり読まないから、詞を書く前に初めて読んだよ」

——そうなんですね。ドラマを見ていて料理に対する考え方など、主人公のシロさんとTOSHI-LOWさんは似ている部分も多いと感じたのですが、歌詞を書く時に登場人物と自分を重ねたりはしますか?

「結局OAUで歌ってることは俺のことじゃなきゃ意味がないし、そうじゃないと伝わんないと思ってるから全くしない。だからそこで大事にしてるのは想像力で、自分の中でシロさんとケンジはこういう話をしたり、あのシーンではこう思ってるんじゃないかとイメージしてる。最終的に何食べファンの人が「帰り道」を聴いてシロさんとケンジが浮かんでくるのが正解なんだけど、それをあの二人のまま書いてしまったら、それはただ漫画に沿った歌でしかないから。だからOAUで俺が歌いたいことを歌詞にしてあの二人が出てきたら100点だし、そのための技術を使ってるつもり。原作モノって他人の物語を書くことでもあるから、自分という存在があった上で自分を消すっていう作業」

——だから「帰り道」はOAUを知らなかった人たちにも響く曲になったんですね。

「俺たちは「帰り道」で自分たちの歌をちゃんと歌っているから、聴いた人がバンド名を覚えてなくても「何食べのオープニング良い曲だよね」って認識だけでも十分なんだよ。そういう普段音楽が引っかからない人たちが何食べを通してこの曲と出会ってくれたら、それだけで嬉しいことなんじゃないのって思うし、今はそういう人たちにも届く力があるタイミングだと思うから」

「OAUの音楽もニューアコも誰かの心に残るものでありたい」

——2曲目に収録されている「こころの花」は歌詞から情景が浮かぶ印象的な曲ですが、歌詞を書く上での着想はなんだったんですか?

「一番初めにMARTINが持ってきた曲で、ニューアコ10周年のテーマソングを作る話があったから「フェスティバル」ってテーマがもとからあって。でもフェスってただ皆で酒飲んで音楽聞いて、「楽しくて良かったね」っていうことじゃない。それで自分たちが演者や主催としての心持ちは何かって考えた時に、さっき言った誰かの心に残るものでありたいってことに繋がったのよ。じゃあ誰かの支えになるってどういうことかって、「ああ、花でなきゃダメだな」と思ったわけ。でも花屋さんに売ってる高価な花ではなくて、道端に咲いてる名もない花でいい。靴紐が解けた人がしゃがんだ時にふと気づいて「小さいけどなんか綺麗な花だな」って思うみたいに心に残ってくれたらいいから。そういう事を言葉にしたのがこの歌詞であって、俺たちなりのフェスっていうものに対する解釈だと思ってる」

——「こころの花」には〈誰かのためになりたい歌を歌って〉という一節があったり、「Traveler」も他者の存在があることでより人生が輝いていく事を歌っていますよね。

「だってそれが人生の真理でしょ。人は一人でありながらも他人がいなかったら生きていけないし、他人がいるから成長できる。人生を色んな角度から見ることのできる1つの方法が他人っていう存在だから。「Traveler」はMARTINが日本語詞で歌いたいと言ったから「どんな歌詞がいいの?」って聞いたら、「子どもにも分かる日本語で人生が旅であることを書いてくれ」と伝えてきたから「そんなのできるわけねぇだろ」って返して(笑)」

——MARTINさんはなかなかハードルの高いリクエストをしてくるんですね(笑)。

「この歌詞を書く時にひらがなの使い方や子どもに伝わる表現ってどういうものなのかを考えてたら、「絵本がそうだ」と気づいて。俺たちは簡単に絵本を読んでしまうけど、人生とは何かを示唆する内容のものがたくさんあって、絵本作家さんはそれを子どもたちに伝えるためにすごく努力してる。だから制作中に絵本をかなり読んだ。それはアルバムを作ってる時のことだから、他の曲にも影響したと思うよ」

——これからOAUの曲が童謡のように歌い継がれることになってもおかしくないと思います。作詞にあたって、どれぐらいの絵本を読んだんですか?

「60冊ぐらいかな。りょうちゃん(妻/女優のりょう)が震災の時に東北に行って読み聞かせをした絵本とか、家にあるものを子どもに読んだりもしたから何十冊と一気に読んだ。そういう見方をしながら読むと色んなことに気づくんだよ。たった2、30ページの中に命の大切さや人生の儚さなど、子どもたちに残したいメッセージがギュッと詰まってて。難しい漢字や説明は1つもないのに、それが子どもにちゃんと伝わるように作られてるんだよね。それって物語や言葉を削りに削って、大事なものだけを残してるんだろうなって思うし」

「OAUとBRAHMANは表現は違うけど、根本の命題は同じことを歌ってる」

——OAUは二人のボーカリストがいますが、ボーカル同士のやりとりから1つの曲の歌詞が生まれるのは興味深いです。それがTOSHI-LOWさんの歌詞の新しい引き出しを生むことにも繋がっているというか。

「俺たちはバンドだからメンバーの意思を無視したくない。さっきの「こころの花」の話みたいに、音楽を作るイメージに寄り添っていたいと思うからね。だからメンバーが出してきたアイディアに対して、もっと曲をよくするために自分は何ができるか考えるわけ。歌詞は1番最後に曲に魂を吹き込むものだから、そのできによって曲を台無しにしてしまう可能性もある。だから繊細な作業だし、自分のできる最大限のことをしないと曲のクオリティーに合う歌詞にならないんだよね。それはBRAHMANも同じで、確かにOAUと表現の仕方は違うけど、根本の命題は変わってない。生きて死ぬって人生の中で自分が何者であるかっていうことをずっと歌ってるだけだから」

——BRAHMANは己と向き合っている歌詞で、OAUは他者に寄り添う歌詞なので一見すると違う表現に見えますが、根底にあるものは同じというのはすごく分かります。

「まず場所が違うからね。例えばボクサーはリングの上で戦ってるけど、リングの外でも家族を守るために戦っている姿があるのよ。ボクサーだけの一面を見ている人が多いかもしれないけど、リングの外の姿もすごく大事な部分で。だからそのドキュメントを作るとしたらボクサーの時は己と向き合う姿が映し出されるだろうし、リングの外では家族を支える姿を観ることになる。アルバムの最後の「I Love You」は家族愛がテーマの曲だけど、BRAHMANで家族愛を歌おうなんで思わないから。それよりはもっと自分の意思の強い部分を出していいと思ってるし、BRAHMANはその為の器だと思ってるから」

——前回のアルバム「FOLLOW THE DREAM」をだした時に「あと10年経ったらもっとOAUで面白いことできる」と言っていて、あれから5年が経ちましたが今でもそういう気持ちはありますか?

「OAUは年齢や自分たちの経験した事によって命題が変わっていけるバンドなんだと思う。だから経年変化によって生まれる楽しみがある。ここまで来るのに15年かかったけど、その間にバンドマンではないプライベートの面でメンバーがそれぞれ父親になってるから、前のアルバムよりも今作は父性みたいなものが出てると思うし。それは肩肘はって父親になった覚悟みたいなものが音にでてる訳じゃなくて、日常の中で普通に家事に参加するような感覚が音にだせてるというか。それにあと10年経ったら俺は余裕で50歳を超えるし、そうしたら人間の老いや死がもっと近くにあるわけ。その時はそういう事を曲に出来るんだと思う。OAUは自然にそれを音楽で表現できるから、それはつまり死ぬまでやれるってことでしょ。OAUという器を通して歌うことが尽きないってことだよね。で、最後に死っていうところまで曲や詞にできたとしたら、結局それはBRAHMANでやってることと一緒じゃんって、やっぱ思うから」

——BRAHMANの刹那的な表現と、OAUの歳を重ねるからできる表現の行きつく先は同じであると。

「OAUは大きくゆったりと山を登っていて、BRAHMANは険しい崖があろうと一直線で登る登山みたいなもの。だからBRAHMANは今も刹那で終わってもいいと思うから成立してる音楽だし、直線で登るリスクでがけ崩れにあって死ぬかもしれない。でも、そこをあえて直線に登るから面白いわけで、例えそこから落ちてしまったとしても後悔ないように生きてるし文句もない。ただOAUはそうじゃないから。ゆっくりゆっくり山の中を散策しながら進んで、たまには景色を見て休憩しながら「山登りっていいもんだね」って話しながら山頂に向かってるから。でも、登りきった最後に見える景色は一緒なんだよ」

インタビュー・文:菊池嘉人
 




(10月17日更新)


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Release


album「OAU」

【通常版】
3000円(税別)
TFCC-86689
トイズファクトリー

LIVE

Tour 2019 -A Better Life-

11月15日(金) 19:00
名古屋クラブクアトロ
オールスタンディング-3900円(別途ドリンク代必要)
ジェイルハウス[TEL]052-936-6041

Pコード:157-877

※チケットSOLD OUT

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Hall Tour 2020 -A Better Life-

2020年2月7日(金) 19:00
名古屋市芸術創造センター
全席指定-4800円
※中学生以上有料。小学生以下は保護者同伴に限り1名につき1名無料(座席が必要な場合は有料)。

Pコード:162-482
一般発売:11月2日(土)10:00~

以下のURLにて10/23(水) 11:00~10/28(月) 11:00にて先行受付を実施
https://t.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=1939346&rlsCd=&lotRlsCd=42253

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