ホーム > インタビュー&レポート > 怒髪天 インタビュー 「アニバーサリーイヤーが目標ではない。 まだまだやりたいことがあるから続けてきた」

怒髪天 インタビュー
「アニバーサリーイヤーが目標ではない。
まだまだやりたいことがあるから続けてきた」

怒髪天が35周年記念盤「怒髪天」をリリースした。“これぞ、人脈を生かした表営業の決定版!”と謳っている今作は、「シン・ジダイ」「やるイスト」の新曲2曲に加えて、総勢約200名のアーティストが参加したトリビュート音源「オトナノススメ~35th 愛されSP~」を収録されており、怒髪天だからこそ作り上げることができた一枚だ。今回は増子直純(Vo)にインタビューを敢行。各楽曲の制作や込められたメッセージを紐解いていく中で、怒髪天の芯にあるロックバンドとしてのポリシーを語ってくれた。35周年を迎えてもなお、揺らぐことのない確固たる想いを感じてもらいたい。

「バンドを長年やってきて培ってきたものって、仲間なんだよ」

——今作は35周年記念盤となりました。トリビュート音源「オトナノススメ~35th 愛されSP~」は誰の発案だったんですか

「メンバーで話し合って決めたね。25周年を記念した特別ライブ『オールスター男呼唄 秋の大感謝祭 -愛されたくて…四半世紀-』の時に、仲間たちに声かけて即席のバンドを組んでもらって俺らの曲を演奏してもらったんだけど、それを音源に残せなかったんだよ。だから次は音源ありきで考えてやりたいと、みんなで去年から話していて。実際にやってみたら、想像の何倍もすごいことになっちゃったね。この一曲でアルバム2枚分ぐらいの予算を使っちゃったりしたんだよ」

——レコーディングはいつ頃から取り掛かられたんですか?

「今年の2月から録り始めて締め切りは2回ずれ込んだから、出来上がってくるまでに8ヶ月ぐらいかかったかなぁ。実は完成するまで俺らはレコーディングに一切行っちゃダメなことになっていたので、どんなふうに録っているのか聴けなかったんだよ。ただ誰にどこを歌わせるという設計図は俺らで決めていて。ディレクターに意向を伝えるだけして、あとは任せていったんだよね」

——そんな設計図がありながら“想像の何倍もすごいことになった”と仰っていましたが、最初はどのような理想がありましたか?

「楽しいものになればいいと、うっすらぼんやりとしか考えてなかったんだよ。だからこんなに大げさになるとは思ってもなかったし、こんなに感動するものになるとも思ってもいなかった。中でもチバ(チバユウスケ/The Birthday)と吉川さん(吉川晃司)は断られるんだろうなと思ってたからね。“こういうのはやらない人だから、きっとやってくれないだろうな”と思っていたんだけど、チバとスタジオで会った時に“歌ってくんない?”と言ったらすぐ“いいよ!やるよ、やるやる”って答えてくれて。また吉川さんもずっと一匹狼で連んだりするのはやってこなかったから、参加してくれて嬉しいよね」

——チバさんや吉川さんだけでなく誰もが二つ返事で参加されたのは、怒髪天だからこそ実現できたものだと感じています。

「終わってから未だに“なんで呼んでくれなかったんですか!”ってメールがたくさん来ていて。そういうのも考えると、この企画はもはや生前葬レベルだね俺らがバンドを長年やってきて培ってきたものって、仲間なんだよ。そこが一番にある。だからジャンルもパンクやヘビィメタルから演歌まであるからね。ミュージックビデオも感動したなぁ。ただ俺らはひとコマも映っていない。見終わった後に、そういえば映ってなかったなと思った(笑)」

——私も今気づきました(笑)!そうでしたね!

「せっかくすごい再生回数になってるのに、本人たちが映ってないなんてね……恐ろしい(笑)。それだけのプレゼント、ご褒美をもらったよね」

「ロックバンドの宿命だから、思ったことは言ってやりたい」

——今作は新曲も収録されています。「シン・ジダイ」は今の時代への気持ちが込められた曲になりました。

「令和になってまだ4ヶ月だけど、ずいぶん前に変わったような気がするよね。元号が変わっても年を越すのとあんまり変わらなくて、自分の何かが急に変わるわけでもない。結局、何かを変えていくのは自分でしかないんだよ。でも令和になっても暗いニュースばっかりで、これからどうなっていくのか、不安も解消されるわけでもない。昔だったら“そんなもん関係ねぇよ”って斜に構えてたりしてた。ただせっかくの人生だから一回でも多くの乾杯ができるんだったら、日本の歴史においてこんなにもお祝いムードの中で年号が変わることはないと感じたから、とりあえずこの雰囲気に乗っかっとこうかなって」

——また全体を通して、肩を組みながら一緒に行こうというような姿勢もあると感じました。

「特にお祝いしてるわけでもなくて、意外と普通の心情を歌っていて。新しいタイプの切り口だけど、“令和に乾杯!”という感じじゃない、素直な気持ちなんだよ。だからタイトルは『シン・ジダイ』とカタカナにした。“シン”は新しい時代の“新”でもあるし、“真”でもある。さらに信じるの“信”。つまり“新しい時代をよくなると信じたいな”という切なる想いを込めたんだよね」

——確かに、この曲は綺麗事で歌詞を書かれてはいないですよね。

「暗いニュースばっかりで、そんなに希望ないもんね。大人になって良かったなということが、もちろんほとんど多い。責任はあるけど自由にできるし、自分の人生は自分で決められる。でも大人になった弊害として嫌だなと思うのは、いろんなことを知ってしまったということがある。特に政治なんて、明るいトピックスが一個もないよね。内閣も三流芸能事務所みたいな感じになっているから、何やりたいかわからない。客寄せパンダは人気取りには必要かもしれないし、ましてや政治にはしょうがないことかもしれないけど、“パンダばっかりになっちゃったらどうするんだよ!?”っていう。本当はロックバンドだから明るくて楽しいバカな歌を歌ってたいよ。それこそ“俺らにこんな歌を歌わせるなよ!”という気分だよね」

——そう思いながらも、なぜこの曲を作ったんですか?

「ロックバンドの宿命だからね。思ったことは言ってやりたい。本当はこんなこと思わせないでほしいし、“楽しいことばっかりあったら、楽しい歌ばっかり作れるのに”とは思う。でも“なんだよ、おい!”と思ったら、それを曲にしていくのがロックバンドだし。ここんところロックバンドはコンプライアンスだのなんだのって締め付けられ気味じゃない。さらにそこに忖度しちゃってさ、自分で萎縮してる若い者たちも多いけど、もっと無責任で感情的でいいと思うんだよね。何言ったって、叩かれたって、所詮ロックバンドですよっていう。それがロックバンドのいいところじゃない。政治家じゃないんだから、そのぐらい無責任に感情的に発言していくのはすごく大事なことだと思うんだよね」

「聴いて口ずさんだ時に自分のことを鼓舞する歌になる。それが一番美しいかたち」

——もう一つの新曲「やるイスト」は、何度も〈やっちゃえ〉と歌うフレーズが耳に残ります。

「俺に限らず人生って、やるかやらないかの二択のどっちかを選んでずっときてる。今53歳なんだけどこんなに生きていて、経験上やるかやらないかと言ったら、絶対やったほうがいいね。やって失敗したら“すいませんでした”と謝ればいいし、“これは止めておこう”と反省すればいいだけ。それに対して“あの時やっときゃ良かった”と、やらずに後悔するのは一生続くし、そういったヤツらをたくさん見てきた。あの時に戻れないんだから、生きる死ぬ以外は一回楽しんやってみるのもいいと思うんだよ。さほど守るものはないよ、命ぐらいしか。それをね、無責任に軽く煽りを立てる。これがロックのいいところ」

——〈やっちゃえやっちゃえやっちまえ!〉と一緒に歌っていると、自分を鼓舞していく気持ちにもなります。

「確かに“やっちゃおうかな”って思っちゃうよね。ただ俺が作ってる歌は、“頑張れ、俺”って全部自分に向けて歌っているんだよ。そんな歌を聴いて口ずさんだ時に、その人にとって自分のことを鼓舞する歌になるといい。それが一番美しいかたちだね。“お前ら、◯◯だからやれ!”じゃないと思ってる。ロックバンドって割とそういう勘違いをしやすいけど、違うね。聴く人が口ずさむことによって、聴く人自身に向かって歌ってる歌になる。それが大事だね。たかがロックバンドのヤツが人にどうせいなんて絶対に言えない。だからみんなを引っ張って行こうとか、俺についてこいなんて思ったことはまあないね。ついてこられても困るし、みんなも困るだろうなって思うし(笑)。割と感情的に動いてるし、それで俺はいいと思うんだよね」

——こんなにもシンプルな歌詞でありながら説得力が生まれています。その点において意識はされていますか?

「歌う時に対自分ではあるけども想いを伝えるという意識はあって、それを長年やってると技術的なこともだし、本を読んだり映画を観たりするからいろんな言葉も覚える。そうなると変にアーティスティックになったりして、難しい言葉を使いたがるんだよ。でもそれって本末転倒で、音楽って耳で聴くものだから、耳だけで情報をキャッチしなきゃいけない。だからなるべく平易な言葉でわかりやすく、こうやって向かい合って話してるのと同じ言葉で書くのが俺はベストだと思ってる。歌詞はポエムを書いてるんじゃなくて、メロディに乗った時に最大限に意味が伝わるように書かなきゃいけない。それって聴き間違えないシンプルな言葉が一番いいし、そこにアーティスティックなエゴは介在する余地がない」

——ただシンプルな言葉を使い続けると、“あれも使ったな”、“これも使ったな”ってなると思うんです。

「いっぱいあるよ。避けながら作らなきゃいけないから大変ではあるけれど、それが面白いよね。ただシンプルに書くと、すごいバカに見える時もあるだろうけど、それも俺はいいと思う。賢いふりもしたくないし、何よりもみんなが分からないとダメ。詩的な表現や比喩表現も使いたくなるのはわかるけど、歌に向く向かないがあるから、もったいないと思うんだよね」

「死ぬまでに一回ぐらいは“完璧だ、これ!”と言えるライブをやってみたい」

——結成35周年を迎えた心境はいかがですか?

「目の前のことをやってきて今がある、それでしかないよね。アニバーサリーイヤーの時って大きいイベントをやったり、こういう記念盤を出したりはあるけど、それ以外は常に粛々とバンドやってきた。いい曲を作って、いいライブをやる。昨日よりも今日、今日よりも明日、そんなふうにいいライブをしたいというそのためにバンドをやってきた。それが楽しくてやってんだよね。一足飛びにこんなに年数をやってきたわけじゃないし、最初から“35年やってください”と言われいたら、断ってたよ。嫌だよ(笑)。年数を考えてきたからではなく楽しいから続いてきたし、まだまだやりたいことがあるから続いてきた。ただこの年数やんないとできなかったんだろうなってことは多々あるよね。もっと早く気づいていればなぁと思うことは音楽に限らずある。もうちょっと若いうちにここが分かっていたら良かったなとは思うけど、それは無理だよね。自分で転ばないと、どのくらい痛いかわからない。でも最終的にはこれで良かったなと思えてる」

——怒髪天はアリバーサリーイヤーで数々のイベントをされてきました。その度に次の節目に向けて頑張ろうという気持ちも生まれて、ここまで歩んできた感覚もありますか?

「いや、アニバーサリーイヤーはやってきたことにみんながお祝いしてくれるご褒美だよね。それが目標や目的ではない。30周年を迎えて武道館をやった時も、バンドがみんなに一番できる恩返しって何かを考えて出てきたのは、やっぱり解散しないことだった。一日でも長くこの4人でやっていけるように健康に気をつけて粛々とやっていくのが、これからの変わらない目標だろうね。身体が元気じゃないとなんでもできないからね。常に真摯に向き合って、より良くなるようにとずっとバンドをやってるから、それさえブレなければ何もこうないよね。歳を重ねたら重ねたなりのことをやっていけば技術自体も上がるから、より納得のいくものが出来上がる。できなかったことができるようになったりするのは、この歳になってもどんどんあるんだよ。例えば昔歌えなかった曲がちゃんと歌えたり。若い頃に作った曲のニュアンスや思い描いていたグルーヴをどうしても出せなかった。でもこれだけやってくると“今だとこれできるな~!”ってことが多々ある。面白いもんでね」

——それは若い頃に作った曲は背伸びして作っていたから、ということもあるかもしれませんよね。

「うん、ほぼそうだね。若い頃は若く見られたくないっていう気持ちがあったから渋めのものを作ったりしたけど、全然技術も表現する仕方も追いついてなかった。ただその時はその時で、それはそれの良さがある。今やっとその楽曲をきちんと表現できるってのは……、結構かかるもんだよね(笑)」

——年またぎの大規模なツアーが始まりました。

「今回は35周年だから、アーカイブ的な部分も入ってくると思うね。昔の曲もやるから、昔から聴いてくれている人は懐かしい曲、この曲やるのかというのもあるし、最近ここ何年かで聴いてくれるようになった人は新鮮な気持ちにはなると思うね。ただアレンジはそんなにせず、なるべくそのままでやりたいんだよ。昔よりは上手くなってること、ちゃんとやったらちゃんとこうなるのかっていう差はわかると思うし(笑)。本来はこうだったんだなっていう姿がわかるライブにはなるかな。やっぱりバンドの楽曲もライブもちょっとずつ精度を上げていく、その作業が楽しいから粛々とやっていこうかなと思う。ただ前回できなかったことが今回できたり、前回できたことが今回できなかったり、ライブっていうのはそういうのがあるから、いつまでも完成しないよね。だからこそ死ぬまでに一回ぐらいは“完璧だ、これ!”と言えるライブをやってみたい。4人いるからそれぞれが考える完璧は違うから、4人とも完璧と言えるのはすごい確率じゃない。一回体験してみたいね。それに近いことは何回もあるんだけど、なかなか難しい。だから“次こそは”と思えるんだろうね」


インタビュー・文:笠原幸乃




(11月19日更新)


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Release


35周年記念盤「怒髪天」

【CDのみ】
1800円(税別)
TECI-1658
テイチクエンタテインメント

LIVE

怒髪天、もっと!もっと!愛されたくて35年。 2019~2020年日本の旅 "モノリス=ヅメリス?"

2020年1月26日(日) 17:00
ボトムライン
オールスタンディング-4500円(整理番号付・別途ドリンク代必要)
※保護者1名につき3歳以下1名まで無料、2名以上及び4歳以上チケット必要。
ジェイルハウス[TEL]052(936)6041

Pコード:149-218

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