ホーム > インタビュー&レポート > 群像会話劇から生まれる笑いによる笑い 身近さと異様さがミックスされた“ゲートコメディー” 「ビルのゲーツ」が間もなく名古屋上陸

群像会話劇から生まれる笑いによる笑い
身近さと異様さがミックスされた“ゲートコメディー”
「ビルのゲーツ」が間もなく名古屋上陸 (1/2)

1990年代後半から京都を拠点にマルチに活動する劇団・ヨーロッパ企画。劇団の代表であり、全作品の演出・脚本を手掛ける上田誠が作りだすトリッキーな劇構造に、身近な題材と非日常な設定が相まり唯一無二のコメディーを作り続けている。またヨーロッパ企画の特徴でもある日常会話から生み出される笑いに一旦ハマれば、笑い地獄から抜け出すことは困難だ。年1回の本公演では全国を巡演し、1万人以上を動員するという人気劇団。新作「ビルのゲーツ」は、とある会社員が商談をしに巨大なオフィスビルに訪れ、ゲートを開けに開けるという“ゲートコメディー”。また新たなコメディーを作り上げたヨーロッパ企画の演出・脚本の上田誠、劇団員の石田剛太、中川晴樹、本多力、客演の加藤啓にインタビューを行った。(写真左から、上田誠、石田剛太、加藤啓、中川晴樹、本多力)

「小さな事に注目して徹底的に掘り下げることで、何かが滲み出てくる

――ヨーロッパ企画は毎回作品のテーマの着眼点が非常に面白いですよね。今回は“カードをかざしてゲートを開ける”ということで、作品のイントロダクションを読んだだけで“この作品は観たい! ”と思いました。なぜこのテーマにしたんですか?
上田誠(以下、上田)「割りきった切り口で演劇を作っている劇団って以外に少なくて。僕らはコメディーなので、コメディーだからこそ描けることはなんだろうと突き詰めて題材を決めていますね。今まで目をつけていなかったけど、ここって確かに気になってたなという事柄が見つかれば、その意義は達成できるのかなと。大きなテーマを描こうとするよりも、小さな事に注目して徹底的に掘り下げることで何かが滲みでてくるという作風が得意なんですよね」

――確かにヨーロッパ企画には、そういった身近なテーマの作品が多いですよね。
上田「もともと会社員やビジネスマンの群像劇を描きたいと思っていたんです。だけどオフィスの中で起きていることは、イメージがしにくいので難しいなと。でも例えば仕事で他の会社を訪れて、入り口のゲートを開けることはあるんですよね。なので、玄関口は割りと接点があるから、そこならリアルに描けるなと。そのオフィスに入っていく行動にクローズアップすれば演劇になると思って、それは大きな手がかりでした」

――“ゲートコメディー”というテーマをみた時に、例えば他のカルチャーである音楽や映画では成立しないのかなと思ったんです。演劇だからこそ作品化できる題材というか。
上田「そうですね。最近のヨーロッパ企画の作品は、小劇場と呼ばれる会場ではなく中劇場で行うサイズになっています。そういった場所で演劇をする時は、人間の体だけではなく舞台装置も使った劇的な場面を作れないかと常々考えていて。今回だと舞台上に大きな門があって、そのゲートが開く瞬間というのはお客さんもワクワクする時間だろうなと。なのでゲートを開けようと試行錯誤して開く場面は、演劇として成り立つという感触があったんです」

――“カードをかざしてゲートを開ける”という行為は、電車だったり会社だったり誰しも身近にある行動なのに一体どんな作品になるのか予想がつかなかったんです。そこもすごく惹かれた部分でした。
上田「起承転結がしっかりした話というか、どこかで聞いたことあるような話にはしたくないんですね。“これってどんな話なの?”という驚きのある作品を作りたいという気持ちはいつもありますね。僕はもともとSFが好きで、ものすごく異様な設定に重きが置かれているジャンルなので、芝居でもそういったものをやりたいですね」

――今作はその異様さと身近さがミックスされた設定というのが、より作品の面白味や未知数な感じをつくっているのかなと。ビルにあるゲートを開けていくというイメージはできでも、一体そこでどんなストーリーが展開されるのかというのは想像できないんですよね。
上田「でも、本当にそうですよね。物語としてはビジネスマン達が大きなタワービルに呼ばれて、“よし!大きな商談をしにいくぞ”という気持ちでビルに入ったらゲートがあって、それを開けたらまたゲートがあってというところから始まります。それを繰り返して行き着くところまでいくみたいな芝居ですね。なので、その天寿を全うしようという思いで作ったので、すごい数のゲートがでてきます」

――おー。ゲートもひとつだけではないということですね。
上田「舞台上には1つしかないんですけど、それを色んな方法で何枚もあるように演出しています。もともとは100個のゲートを作ろうと目標にしていたんですけど、さすがにそれは達成できなくて(笑)。でも多数の色んな種類のゲートが登場します」

――ヨーロッパ企画は細部にまでこだわった舞台装置の緻密さも1つの特徴だと思うんですが、さき程言っていた中劇場だからこその高さや空間を活かした演出はあるんですか?
上田「ビルを登っていく話でもあるので、階段もあるんですね。ゲートも高さがそれなりにあるので、高低差は役者さんにとって負担だったんじゃないかと(笑)」

――役者の皆さんは演じていく中で高低差による大変さは感じていますか?
石田剛太(以下、石田)「本番が2時間近くあるんですけど、何度もゲートを開けていってビルを登っていくと、本当に登っているような感覚になっていきます。体力的にも疲労があって、“こんなに登ったか~”という気持ちになりますね。ただ、どんどん登っていくと高揚していくというか、もっと登っていきたいというアドレナリンが出てきますね。ランナーズハイじゃないですけど、ビルズハイみたいな感覚になりますね」
(一同爆笑)
本多力(以下、本多)「2時間マラソンをしているような感覚にはなるよね」

――作品の内容をみて主人公が明確にはいないのかなと思いました。
上田「そうですね。1人がクローズアップされるというより、ヨーロッパ企画は群像劇を描きます。石田と加藤さんが冒頭から登場する役で、そこにどんどん人が雪だるま式に加わっていったり、時には減っていったりするんですけど、“群像”というものが主役となっていますね。なのでゲートVS群像というようなイメージがもともとあったので、集団でゲートを突破していく作風にはなっています。群像会話劇をやりたかったということも、この作品の動機になっています」

 




(9月26日更新)


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STAGE DATA

ヨーロッパ企画
「ビルのゲーツ」

▼10月1日(水) 19:00
名古屋市芸術創造センター
指定-4500円
指定(当日引換)-3500円(小・中・高・大学・大学院・専門学生)
演出・作:上田誠
出演:石田剛太/酒井善史/角田貴志/諏訪雅/土佐和成/中川晴樹/永野宗典/西村直子/本多力/金丸慎太郎/吉川莉早/岡嶋秀昭/加藤啓
サンデーフォークプロモーション[電]052(320)9100
※指定[学生](当日引換)券は、当日18時より座席指定券と引換え。要学生証提示(小学生は不要)。
Pコード:438-221

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「ビルのゲーツ」
大阪千秋楽公演のレポートが到着!


ヨーロッパ企画 オフィシャルサイト