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SF・ミステリー“笑”大作!
劇団ジャブジャブサーキット インタビュー
「30年続けてもお客さんを笑わせたり楽しませるのが1番のベース」 (1/3)

1985年の旗揚げから現代まで、名古屋を代表する劇団のジャブジャブサーキット。劇団結成30年を迎えてもなお、小演劇界の最前線で作品を発表し続けている。主宰であり劇作家・演出のはせひろいちは、ワンシチュエーションの会話劇を持ち味に、日常と非日常の境目を切りとり、人の心の機微を描く。またSFやミステリーの要素を含みながら描く群像劇は、異星人や変人などが登場し終始クスっと笑えてしまうのも特徴だ。
新作「さよならウィキペディア」は、ビルの屋上に様々な理由で集まった人々によるSF・ミステリー群像劇。洗濯女、画家志望の少女、闇社会とつながる男、謎めいた管理人など、いかにも訳ありな人物が登場する。「都市型スローライフ」をモチーフに、現代の便利さに対するメッセージ性をもつ作品だ。
今回の取材では、はせらしいシュールな会話が多くの笑いを誘う作品でありながら、なぜ現代社会の警鐘を鳴らすともいえる力作を描いたのかを聞いた。また、演劇をはじめた当初の話からこれまでを振り返ってもらうロングインタビューとなった。

「演劇はなんでこんなに説教臭いんだろうと大っ嫌いで(笑)」

――失礼ですが、今はせさんはおいくつですか?
「54歳です」

――はじめて演劇を作られたのはいつですか?
「僕は高校演劇も大学演劇もやっていなくて、高校生の時に学校で演劇を観たんだけど、なんでこんな説教臭いことを喋るんだろうと大っ嫌いで(笑)。だから自分で演劇をやるとは思っていなかったですね」

――10代の頃は演劇嫌いだったというのは衝撃です(笑)。
「で、大学の受験に失敗して予備校に行ったら、そこで文化系の連れがたくさんできちゃいまして。ユニットを作ろうとなった時に演劇をしてるやつがいたので、手はじめに演劇をやることになったんです(笑)。僕は今でいうミニコミ誌にも参加したり、小説を書いたりしていたから『お前、脚本かけ』と言われて書いたのが19歳のときかな。その時から岐阜を中心に活動していましたね」

――演劇をはじめたのは、演劇青年でもなんでもなく成り行きだったんですね。
「今の時代のように戯曲セミナーとか演劇について学ぶ場所はないし、『演劇なんて誰が教えるものか』という時代ですから、しょうがなく演劇を観るようになりましたね。そこから独学で学んでいくと、演劇ってすげえめんどくさいなと思って。不自由じゃないですか。小説のようにどこにでもいけないし、映画のように画面を勝手に変えれないから。でも、少しずつ不自由さが面白さに変わってきた感覚があって。劇団邪楽という名前だったんですけど、ちょうどその頃に解散して。僕も就職だったし、演劇からは足を洗おうと思ってバイクを買ったり、ウインドサーフィンをはじめたりして(笑)」

――せっかく演劇の魅力が分かってきたところで辞めようと思っていたんですね(笑)。
「もう全速力で演劇から遠ざかろうと思っていたんですが、岐阜大学の演劇研究会と交流があったので軽い仲間になってて。新聞社に就職して1年目の年末に、その連中と飲みながら麻雀していたときに、なんとなくそういう感じだったんでしょうね。『まあ、劇団でも作る?』という話になって、『じゃあ、作るか!』と1985年に作ったのがジャブジャブサーキットの前身となる劇団NO-SIDEですね。そこから数えて30年演劇をしています」

「フランス映画みたいな地味で静かな作品もあっていいじゃない」

――大学時代に演劇をはじめた頃と今とでは作る感覚など違ったりしますか?
「はじめた頃は小劇場運動の第三世代ブームで、第三舞台、第三エロチカ、夢の遊眠社、青い鳥など東京ではムーブメントを作っている劇団がたくさんいて。アングラのお芝居に対抗するような明るく派手な演劇の時代でした。僕らも途中でダンスシーンは必ず入れるべきだと思っていて、そうした派手なこともやっていましたね。ただ、それが最初に話した演劇くささと直結していると気づいて(笑)。例えば映画はハリウッドが主流だとしたら、フランス映画みたいな地味で静かな作品もあっていいんじゃないかと試行錯誤している中で、いわゆる“静かな演劇”とか“関係性の演劇”といわれる90年代の演劇ムーブメントがはじまったんです。世の中には同じことを考える人もいるんだなと安心して、自分たちのスタイルに変えていきましたね。昔はもっと静かでしたけど」

――では、物語にあまり抑揚がないというか。
「とはいえ今と同じでサービス精神はわりと好きだったので、驚かせたりビックリするような展開はありましたね」

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第53回公演「ディラックの花嫁」より

「ワンシチュエーションは、空間や装飾品をどこまでリアルに作れるか」

――サービス精神旺盛なのは昔からそうだったんですね。なるほどなるほど(笑)。
「ただ、照明や音楽をバンバンすることはなかったですね。わざとお客さんの方を観ないで喋ったり、色々試していました。でも、実は1番大きいのはワンシチュエーションで芝居を作るようになったこと。色んな場所を便利に行ったり来たりするのではなく1つの場所をとにかく切りとる。その手法と静かな演劇の作風が1990年頃から続いています」

――例えば名古屋には少年王者舘など、他にもワンシチュエーションで展開していく劇団がありますが、その面白さはどこですか?
「まあ、でも天野さんのところは時間も空間も飛び越えれるので見立てが自由なんですよね。例えば前作の『ディラックの花嫁』も研究室のワンシチュエーションだったので、その空間を壁とか装飾品も含めてどこまでリアルに作れるか。どこにでもなるような抽象空間ではできない、細かいリアルさからくる遊びとか仕掛けがたくさんあるので面白いです」

――ジャブジャブの作品を観た時に不思議だったのが、SFの非現実的な物語でありながらワンシチュエーションで描き続けることで、そこに日常性を感じたんですよね。
「そうですね。確かに日常性というのはひとつの武器というかキーワードだと思います。それこそ『さよならウィキペディア』は屋上の設定にしたんです。昔から屋上の芝居を作りたかったんですけど、なかなか踏みきれなくて。さっき話したリアルさの視点でいうと、よくある屋上芝居って後ろの背景が青空だったりして、そうすると“いやいや、ここ劇場だろう”という感覚が拭いきれなくて、やりたくてもやらなかったんです。今回は屋上でも近代化から取り残された6階建てのビルという腑に落ちるシチュエーションがみつかったので作ろうと決めました」

「登場人物がドラマをもって出てきてくれる」

――ワンシチュエーションの芝居は、そこで生きる人たちを描いていくので共同体という意味も派生するのではないかと考えています。はせさんにとって劇団は共同体という意識はあるんですか?
「ワンシチュエーションも劇団も、そう考えたことはないですね。もっと具体的にいうと、舞台の設定である屋上に来れる人を考えないとしょうがないところがあって。今回ダブルキャストを外しても14キャストあるんですけど、これだけの人数が自然に1つの場所に集まるために考えなくちゃいけないことは山ほどあるんですよね。ワンシチュエーションは、それなりの必然性がないと成立しなくて。逆にその状況に慣れて、必然性が見つかると作品の余計な説明がいらなくなる。登場人物がドラマをもって出てきてくれるというか。そういう意味でワンシチュエーションは、色々と助けてくれる書き方でもあるんです」

――はせさんが描きたいシチュエーションがあって、そこに条件づけていくんですね。
「テーマと条件づけと登場人物の関係性みたいなものが、“あっ! なんかいけるかな”と書きだして良い落とし所がくるときもあるし、掘り進んだところが違っていたという時もある(笑)。そしたらここまで戻して、もう少しここ掘ってみようかなと試みるんです(笑)」
 




(6月23日更新)


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STAGE DATA

「さよならウィキペディア」

▼5月21日(木)~24日(日)
七ツ寺共同スタジオ
劇団ジャブジャブサーキット[TEL]090(9922)8274


STAGE

「さよならウィキペディア」大阪公演

▼6月25日(木)~28日(日)
ウイングフィールド
一般-2800円 大学生以下-2000円
劇団ジャブジャブサーキット[TEL]090(9922)8274

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「さよならウィキペディア」東京公演

▼7月24日(金)~26日(日)
ザ・スズナリ
一般-3300円 大学生以下-2300円
劇団ジャブジャブサーキット[TEL]090(9922)8274

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