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SF・ミステリー“笑”大作!
劇団ジャブジャブサーキット インタビュー
「30年続けてもお客さんを笑わせたり楽しませるのが1番のベース」 (2/3)


「劇団側からメッセージを押しつけることが嫌いというか苦手」

――作品テーマである現代社会におけるスマホやネットなどの依存性の危惧というのは、若い世代にとってはドンピシャな題材だと感じました。タイトルからすごく惹かれましたね。
「タイトルが大風呂敷なので、色んな取材先にいって火消しにまわっているんです(笑)。もちろんモチーフやテーマにはなっているんですが、必ずしもウィキペディアやネット社会をダイレクトに批判するようなことではないです」

――あくまで作品の発想の1つだということですね。
「さっきも言ったようにあんまり劇団側からメッセージを押しつけることが本当に嫌いというか苦手なので。その辺は物語の筋の中で感じてもらえればいいなと」

――ジャブジャブサーキットの作品は、物語とメッセージ性の塩梅が絶妙だと思います。終始笑えて仕方ないのに、物語の節々から作品のテーマ性がにじみ出ています。
「はじめて観劇した時に感じたことが今でも残っていますね。今回は屋上というやりたかったシチュエーションなので、屋上に関することを全部盛り込もうと思って(笑)。例えば飛び降り自殺っぽい事件が起きたり、宇宙人がかくまわれていたり、ファンタジー的な要素もあります。現代のネット社会やWEB依存だとかの話をしても、そんなこと誰でも言っているし、今起きている事件の方が旬なのは分かっているので。このテーマで書く時に、ファンタジーをクッションにして伝えていきたいひねくれたところがあって。だからお客さんにとっては分かりやすい物語ではないかもしれない。その分いつもよりちょっと想像力をお借りできればいいなと思っています。今回僕らがやりたいことは、お客さんの想像力を借りて成立するので」

――お客さんのイマジネーション力に委ねる部分もあるんですね。
「かといって難しい話をダラダラするわけではないので、そこら辺は楽しみながら伝えていけたらいいなと」

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「さよならウィキペディア」イメージ写真

「便利さや消費中心の社会だとしても、価値観の本質を描きたい」

――“便利さに対する警鐘”という大きなテーマにしようとしたきっかけはあったんですか?
「特に何がというわけではないです。やっぱり世の中が不安定というか、政権の振るまい方をみていても、数の論理というか集団的なものを上手く動かされている危機感はあって。でもそれは政治だけじゃなくて、僕らの生活の中にも、なんだかんだいっても“イイネ”の数が多いと良いのではないかと思ってしまったり。それこそ今の高校生がSNSで友だちの数が2桁になるのが不安で仕方ないっていう不思議な現象が起きていたり。もっと人って強いもんじゃないの?っていう。賛同者がいなくても、それで死んじゃ駄目だよと。もっと少数派な意見でもいいから、それぞれに本質的なものを見つめる力だとか、一人でも戦っていこうとする力を養わないとなって。そうしたら踏みとどまることもできると思うので、それが動機ですね」

――なるほど。簡単に自殺といっても、もっと人間は強い生きものだと。
「ただ、とはいえ便利さから一歩戻せるかといったら僕自身も戻せないので。高らかに子どもたちからスマホを取り上げましょうとは賛同できないですね。手に入れてしまったテクノロジーに対して“それは使い方だよ”と言う人はいっぱいいるんだけど、それも抽象的だなと。スマホがないと生きていけない子どもたちはいて、自分の在りどころにもなっているんだから、それを規制という視点ではない所から伝えていく必要があるよなあ、と。友だちとか友情がキーワードになっているんですけど、昔からある価値観の本質を描けたらと思っていて。それが今の便利さや消費中心の社会の中でも見逃しちゃいけないことだよって。偉そうにいうとそんな感じなんですよ(笑)」

――いやいや、そんなことはないから大丈夫です(笑)。
「とはいえ大きな答えを求めているわけじゃなくて、“あの~僕は悪いけど、さよなら”ってぐらいの感じです(笑)」

――ははははは(笑)。それはとてもはせさんらしいですね。
「1回、現代のスピード感に取り残されてみたいという願望もあって。でも、一人で取り残されるのは寂しいから少しは友だちを連れていきたい(笑)。それは結構本音に近いところだったりします」

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第53回公演「ディラックの花嫁」より

「演劇を通してお客さんを笑わせたり楽しませるのが1番のベース」

――はせさんの作品にはSFの要素もふんだんにあります。なぜ昔からSF要素のある作品を作り続けているのですか?
「SFだけではなくて、それとミステリーが自分の二本柱ですね。自分の文学体験を遡っていくと、その2つにぶつかるんです。SFに関していえば、1980年後半ぐらいに演劇界の評論家や劇作家の人たちが『舞台でSFは成立しない』と言っていた時代があって、『いやいや、何言ってんだよ』っていう反骨的な気持ちもありましたね。SFの衣を借りずに人間ドラマという方が、作品としての格調が高いというのは分からないでもないんだけど。でも、所詮芝居だろうというところもあって。そういう遊びとか距離感も大事なんですよね。純文学みたいな芝居だけが芝居じゃないよね、と提示したかったんです。それと広義の意味でのSFがめちゃくちゃ好きなんですよね」

――根本にはSFが好きという気持ちがあるんですね。
「もうひとつのミステリー要素の物語を書くと、作品がグッと閉じていく感じがするんです。伏線があって、お客さんを黙して、こんな予想外のトリックで、じゃあ動機は? っていう、ある程度構築された計算が必要になってくる。お芝居でミステリーをすると閉じていくんだけど、SFは逆にどんどん広がっていくので、そのバランスが面白かったりするのかもしれないですね。今作は、SFとミステリー要素を好きなだけ入れている感じです」

――それは興味深いお話ですね。ミステリーだと密室だとか、確かにとじていくイメージがあります。逆にSFとなると、なんでもありというか。
「例えば今回でも誰かを洗脳しようとするシーンがあるんですけど。普通だと目を見つめたりしてすると思うんですけど、『さよならウィキペディア』ではあやとりをします(笑)」

――あははははは(笑)。
「相手とあやとりをしているうちにどんどん気持ち良くなっちゃうんです。そういうSFですね(笑)」

――それ堪らないです(笑)。
「堪らないでしょう(笑)? もうね、自分で作ってるんだけど可笑しくて。そういう馬鹿な遊びによって広がりがでるんですね。ミステリーだとそうもいかないじゃないですか」

――どうしてもシュールな方向になってしまいますからね。
「そうそう。だから広い意味でのSFがすごい好きなんですよね」

―SFのジャンルは、はせさんの演劇スタンスにもすごく合致している気がします。
「やっぱり演劇を通してお客さんを笑わせたり、楽しませたりしたいというのが1番のベースにありますね。テーマが伝わるかどうかよりも、手品を見てるように驚いてほしい。本心はそっちだったり(笑)。ただ楽しみながらメッセージ性も伝わるようにはなっています。でも楽しむだけの人もいていいよなと」
 




(6月23日更新)


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ザ・スズナリ
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