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熊川哲也が主宰するKバレエ カンパニーの次回舞台は
「クレオパトラ」を題材とした完全新作
バレエの枠に囚われない「全てが今までにない」舞台とは?

世界的なバレエダンサー・熊川哲也が主宰するKバレエ カンパニー。常に新しい挑戦と高いクオリティを保ち、日本にトップクラスのバレエの舞台を提供してきた。そんなKバレエが、原作も音楽も存在しない、完全新作を日本初演で行うことが決定した。
タイトルは「クレオパトラ」。絶世の美女として知られる古代エジプトのファラオであり、多くの人がその存在を知っていることだろう。しかしこれがバレエの題材に?数々の男性を魅了し、激動の人生を生き抜いたクレオパトラの伝承をもとに、熊川哲也がまったく新しい舞台を作り上げた。
最も重要なクレオパトラをオリジナル・キャストとして演じるのは“和製ギエム”とも評される中村祥子。彼女は、作品内でそれぞれ違うパートナーとの、異なる愛を表現していく。そして、クレオパトラの人生を彩る数々の男性のひとりとしてアントニウス役を演じるのは、バレエ王子として名高い宮尾俊太郎。今回は日本のバレエ界を牽引するこの2人に、新作「クレオパトラ」の魅力を聞いた。

――完全新作であり、バレエのステージで古代エジプトが舞台の作品ということもあり、どんな内容になるのか想像がつきません。現在は稽古中とのことですが、演じてみての率直な感想を聞かせてください。
中村「すべてが今までにない。スタイルもそうだし、振り付けも。観た方にも驚いてもらえるものになってると思います」
 
――“今までにない”とは、いわゆる多くの方がバレエと聞いてイメージしるものとは違う、ということでしょうか?
中村「もちろんクラシックバレエはベースにありますが、それを飛び越すというか、一段上がったステージになってるように感じます」
 
――宮尾さんはいかがですか?
宮尾「僕も、これはすごいものになるな、と今から感じています。音楽も壮大でエジプトの雰囲気にぴったりですし、振り付けも新しいアプローチでこれまで見たことがない表現もあります。『白鳥の湖』や『眠れる森の美女』のような動きではなく、役によってはもっと崩れた見せ方もします。それと今作では、クレオパトラ役を中村祥子さんが演じているのが、僕としては何よりオススメしたいところです。やっぱりこの作品ではクレオパトラが重要な役になるのですが、クレオパトラの美しい擬態と表現がものすごく合ってます」
 
――熊川さんいわく、中村さんのイメージでクレオパトラを振付けると伝えたとき、本気にされなかったという話もありますが(笑)、実際はどうだったんですか?
中村「まず“クレオパトラ”を演じることに『え!?』と思いましたからね。もちろん存在は知っていますが、どういう人なのかは詳しく知らないので想像がしづらかったんです。どういうバレエなのか、どういう女性でどういう生き方をしてきたのか。この題材で本当に振付ける?しかも何もないところから??と思い、難しいだろうな~って(笑)。でも演じることには単純に面白そう!と思いました。不安もありましたけど、ワクワクの方が大きかったですね」
 
――クレオパトラは、世界三大美人にも数えられる絶世の美女であり、多くの男性を惑わせるという役どころですよね。どんな人であれ、演じるにプレッシャーがありそうですが・・・。
中村「絶世の美女だからこそ、美女でなければいけないってことはないと思うんです。“絶世の美女”とは、容姿だけを言ったわけじゃなくて、話術が素晴らしいとか芯が強いとか、行動力や情熱。そういう全てのものが合わさって、それに魅了された人が多かったんじゃないかって思うんです。今回はバレエなので言葉は喋れないですが、行動や強さ、それぞれの男性に対する情熱をみせることで、美しさがみえてくるんじゃないかって思います」
 
――宮尾さんは、先ほど中村さんがクレオパトラを演じることがおすすめと仰いましたが、実際に踊っている姿を見ての感想を聞かせてください。
宮尾「素晴らしいです。今までやってきたキャリアも当然豊富ですし。振り付けも、熊川さんと祥子さんの想像力でお互いにアイデアを出し合って化学反応が起きた結晶として出来上がってます。女性らしさ、恐ろしさ、悲しいときの表情など、いろんな顔のクレオパトラの姿を、ダイレクトに感じることができる。僕が演じるアントニウスと出会うのは、クレオパトラが人生で様々な経験をした後半になるんです。そこで激しい愛となっていくのですが、素晴らしい表現をみることができます」
 
――宮尾さんが演じるアントニウスはどんな役どころになるのでしょう?
宮尾「アントニウスは結構激しい役どころです。最後には死が待っていますし、感情的に揺れることも多い。クレオパトラに恋はするけど、自分には子供もいるし、違う人と結婚もするしと、そんな揺れる激動の心情を伝えるようなものにしたいと思っています」
 
――中村さんは宮尾さん演じるアントニウスとのシーンはどういう気持ちで挑んでいますか?
中村「今作では、これまでになく男性と絡んでるんです。それもそれぞれ違うキャラクターを持った男性たちとなので、その中で生まれるドラマもそれぞれです。アントニウスとはものすごく愛にあふれたパ・ド・ドゥがメインとなるので、やはり普通の可愛らしい愛とは違っています。アントニウスとは、いろんなことを経験して、いろんなものを背負ってしまってから出会うという流れなんです。クレオパトラを見た男性は、みんな瞬間で恋をしてしまうので、おつきの人たちは男性に会わせないようにするという振りもあります。特に俊太郎くんが演じるアントニウスと出会うときは、クレオパトラもシーザーを亡くしたばかりで悲しんでるときで、周りは出会わせないようにしてるんだけど、それでもどうしても出会ってしまうという、もはや運命的な流れなんです。そういう展開は本当に面白くて、それを熊川さんが、誰が見ても感情移入できるラブストーリーとして振付けてくれています」
 
――いろんな男性との様々な恋愛模様も表現されるんですね。
中村「恋だけじゃないですよ。殺したりもするし」
宮尾「セックスもあるし」
 
――え!?そんな表現もバレエで?バレエというフォーマット内ではありつつも、その型に収まりきらない表現に挑戦しているんですね。ダンスとしてもこれまでにないことを求められてるんでしょうか?
中村「最初に振りを与えられたときは“え!?”と引いてしまうのもありましたよ(笑)。そう思うほど今までにないスタイルの振りもあります。でもそこで躊躇してしまうと、1番情けないものを見せてしまうと思ったんですね。熊川さんはダンサーを信じてるからこそ、そういう振りに挑戦しろと与えてくれてるわけだから、100%むき出しにして大胆に踊りました。踊ることで見えてくる感動や驚きがあるんだと思います。それはクレオパトラだけじゃなくて、ダンサーみんな同じで、みんなが挑戦しなければ成り立たないんです」
 
――それは、テクニック的なことですか?それともパフォーマンスの部分でしょうか?
中村「踊りに対する常識を取っ払うというか。でもそれはいつもやってることでもあるんです。ベーシックなバレエがあって、そこからどこか崩したり補ったりして、自分の踊りがみえてくる。だから決まりはなく、どれだけ自由にどれだけ可能性を伸ばして踊れるかというのが大切なのですが、今作で熊川さんはそれをダンサーにぶつけているような気がします。それは今まで普通にクラシックバレエをやってきたダンサーにとっては、乗り越えるには苦労するものではあるとも思ってます」
 
――宮尾さんもこれまでと違うものを求められたんですか?
宮尾「唯一、僕だけがそういうこれまでにない振りというのはないかもしれない。みんながいつもと違う振りなので、逆に僕のポジションとしてはクリーンに見せる役どころなんだと思います。とはいえ、いろんな感情表現や、パ・ド・ドゥという2人での踊りでは高い技術を要することをしますので、どれだけ表現できるかと、今までのキャリアを試されてるようには思ってます」
 
――それでは今度は、作品から離れてお互いのダンサーとしての魅力を教えてください。
中村「俊太郎くんは小さい頃から(笑)見ていて」
宮尾「小さいって(笑)。10年前ぐらいからですか?」
中村「ずっと一緒だったわけではなく、ところどころで組んで一緒に踊りながら見てきたんですけど、すごく成長したと思います。私が言うのもなんですけど(笑)。ひとりのダンサーとしてもそうだし、パートナーとしてもだし。人としての考えや感情表現がどんどん増えていったし、大きくなってるのはすごく感じます。安心してまかせられるので、バレリーナとしてはとてもありがたいですし、そういうダンサーと組めるのはすごく嬉しく思います」
宮尾「ありがとうございます(笑)。がんばります!」
 
――宮尾さんのダンサーとして1番の魅力というと、どこだと思いますか?
中村「日本人でこんなにタイツが似合う人っていない!(笑) 俊太郎くんが稽古場で衣装着てるたびに、ものすっごく似合ってる!って見とれちゃうぐらい。変態みたいだけど(笑)」
宮尾「いや、それ大事です。正装ですからね」
中村「やっぱりここまで似合うのには、スタイルがいいだけじゃなくて、ダンサーとしての品格や魅力、全てがマッチしてないといけないんですよ」
宮尾「大変なんですよ、タイツが似合うのって!(笑)」
中村「本当そう思う。日本だけじゃなく海外でも似合ってないと思うダンサーもいるし。天性のものもあるかもしれにけど、それだけじゃなく俊太郎くんの持ち味だと思うんです。何を踊っても俊太郎くんが生み出すものが見えるです。王子役だと“王子っぽいね”だけじゃない一味がいつもある。一緒に踊ってるとたまに笑っちゃうけど(笑)」
宮尾「いま、褒める時間ですよね?(笑)」
中村「もちろん!楽しませてくれるっていうのは、お客さんに絶対に伝わってるから!笑って踊ってるけど心は通わせてない場合もあるけど、笑わせてくれるってことは何かを受け取ってるってことだから。そして私にもそれによって生まれてくるものがある。そういうダンサーってなかなかいないんですね。みんなマジメすぎるんですよね」
 
――宮尾さんのダンスが与えるものによって、中村さんのダンスも変わると?
中村「そう!それを与え合う関係性って命あるものになっていくと思う。それがない人の踊りは見てわかりますからね。綺麗だけど淡々としてる。表情も笑ってるし、愛し合ってるし、お姫様と王子様なんだろうなってわかるけど、それだけ。俊太郎くんはそうじゃない何かを持ってるんです」
 
――とのことですが、宮尾さんとしては自覚してる部分ではあるんですか?
宮尾「もちろん自分の表現は考えてますけど・・・」
中村「それが笑われてるとは思ってないよね?(笑)」
宮尾「笑わそうとしてるときもあるんですよ。でも思ってないのに笑いが生まれる瞬間も確かにある(笑)」
 
――では反対に宮尾さんからみて中村さんについていかがですか?
宮尾「祥子さんはもうプロフェッショナル!自分の関わる踊り、役を追及しつくす。そこに労力を惜しんでない。それに体がまず語ってます、美しいです。それは毎日のトレーニングでもあるだろうし。役を掘り下げて追及し続けてることがお客さんにも伝わっているし、踊ってる僕たちにもすごく語りかけてきてくれる。踊りもアプローチの仕方も舞台上での立ち居振る舞いも、素晴らしいバレリーナであり、すごく勉強になります」
中村「ありがとうございます(笑)」
宮尾「まだ足りてない?(笑) ・・・さらに言うと!!人生経験も表現につながってる。恋愛、出産を経験して、またさらに人としても女性としてもバレリーナとしても、表現の深みや大きさが増していて素晴らしいと思います」
 
――「クレオパトラ」では、ダンス以外、舞台美術や音楽もこれまでになく、見どころだとのことですが、そちらはいかがですか?
中村「全て素晴らしいです!熊川さんも興奮してますからね、これしかない!って。誰かに伝える前にひとりで先に興奮してる(笑)。それぐらい熊川さん自身が題材や衣装デザインや音楽、すべてに魅了されている。それぐらい『クレオパトラ』にかけてる情熱がすごいです」
宮尾「熊川さんは自分が大好きなものはすごくこだわるし、他人のものを観るときの目は厳しい。そういう性格だから、人に何かを紹介しようというときに、絶対に良いものじゃないと紹介しないんですよ。それを、誰より自分が感動して、自信を持って皆さんにどうだ、いいだろう!って出してくるということは、見る側からしても説得力があると思いませんか?」
 
――熊川さん自身が感動しちゃってるんですね。
中村「たまに、ひとりで『いいね、いいね、いいね!きた、きた、きた!!』って言ってます(笑)」
宮尾「新作は再演されて古典になっていきますよね。『クレオパトラ』もきっと古典になっていく作品だと思うんです。その初演を観られるということは、めったに出会わない彗星を見たような、それぐらい貴重なこと。この『クレオパトラ』は、バレエを観たことがある人もない人も、ダンサーの表現の凄さ、可能性をすごく感じられる舞台だと思います。この機会にぜひ観て頂きたいです」



インタビュー・文:小坂井友美(ぴあ)



(9月 6日更新)


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Stage data

熊川哲也 Kバレエ カンパニー
Autumn Tour 2017
「クレオパトラ」

10月12日(木) 18:30
愛知県芸術劇場 大ホール
S席-16000円 A席-13000円 B席-10000円 C席-8000円
※4歳以下は入場不可。
CBCテレビ事業部[TEL]052-241-8118
Pコード:458-778

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