ホーム > インタビュー&レポート > 名古屋初上陸作品『パリのアメリカ人』が開幕! 「根底にある軸は戦争なのです。 みんなが傷をかかえている、それでも前に進まなければいけない。 だからこその明るさなのです」

名古屋初上陸作品『パリのアメリカ人』が開幕!
「根底にある軸は戦争なのです。
みんなが傷をかかえている、それでも前に進まなければいけない。
だからこその明るさなのです」

劇団四季の名古屋初上陸作品『パリのアメリカ人』が9月1日(日)に開幕する。本作はアメリカ演劇界で最も権威のあるトニー賞にて振付賞を含む4部門を獲得した舞台であり、ガーシュウィンの名曲が彩る舞台だ。ミュージカルには珍しくクラシックバレエをメインとした振り付けをしていることも注目だ。 舞台は、第二次世界大戦後。戦後の傷深いパリで様々なことに葛藤しながらも夢に向かい懸命に生きる4人の男女の恋愛をベースに物語は進む。 主役を演じる2人、ジェリー・マリガン役の松島勇気、リズ・ダッサン役の近藤合歓に話を聞いた。

――本作は他の劇団四季作品にないほどダンスの比重が高く、さらにベースとなるダンスがクラシックバレエというのも特徴のひとつですよね。演じる側としてはどういうところがポイントでしたか?
松島勇気「ダンスのレベルはとても高く、ものすごい技術と表現力を求められる作品だと思います。振付家であり演出家であるクリストファー・ウィールドンさんが手がける振りは、普通のバレエとは少し違うのですよね。バレエはなるべく体にストレスのかからないところに重心を持っていくのですけど、この作品ではその間逆でアンバランスなのです。そこに美しさとユーモアさが入っており、とても面白い振りだと思います」
近藤合歓「パートナーとして踊るときも、正解がよくわからないのですよね(笑)。演じながら今も探っていて、毎日ちょっとずつ違うところにポジションが入っています」
松島勇気「気持ちの良いポジションってなかなかないのですよ」
近藤合歓「本当に難しい。クラシックバレエの基本は重心が真ん中にあるのですけど、真ん中ではないところで常に何かしているのです。特に男性はアンバランスな女性を常に支えているので、より難しいですよね」
松島勇気「だからこそ美しいのですけど、踊る方の足はパンパンです(笑)」
 
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――舞台は、第二次世界大戦後のパリとなります。主要な出演者4名がそれぞれの立場で戦争を体験しており、その中での恋愛模様が描かれています。物語についてどういう解釈で演じていらっしゃいますか?
松島勇気「僕は昭和生まれですけど戦争を知らない。平成という時代も戦争がなかった。それはすごく平和で、すごく良い時代を生きていると感じているのですけど、逆に言えば戦争を知らない、平和であることが当たり前と捉えてしまっていないかとも思うのです。僕の好きな映画(映画『機動警察パトレイバー2 the Movie』。松島は押井守監督のファンだとのこと)のワンシーンで“この国の、この街の平和っていったいなんだ。世界各地では今なお内戦や人種差別、武力闘争、民族衝突が繰り返されているのに、ここは前線の後方に過ぎないと、僕らはモニターの向こうに現実を押し込み、目を背けている”というようなセリフがあるのです。それを聞くたびに胸をぐっと捕まれるような思いがするのです。劇団四季の創立者である亡き浅利慶太さんも“今の平和があるのは、あの悲惨な戦争の記憶があるからだ。知らないということが危険なのだ”って仰ってるのです。その思いがあるからこそ劇団四季は昭和三部作(昭和の歴史を語りつぐ作品『ミュージカル 李香蘭』『ミュージカル 異国の丘』『ミュージカル 南十字星』の劇団四季オリジナルミュージカル)を上演し続けてきたわけです。そして今、僕らが劇団四季として『パリのアメリカ人』という戦争をテーマとした作品を演じることにすごく意味があることだと思っています。この作品をきっかけに、知らない僕らはもっと戦争のことを学んで、そして発信していかなければいけないとすごく思います」
 
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――"戦争“といテーマはありながらも、恋愛をストーリーに置くことで重たい感触ではないですよね。テーマを前面に打ち出すのではなく、本作をきっかけに深いところまで感じてもらえたらという思いはあるのでしょうか?
松島勇気「根底にあるずぶとい軸は戦争なのです。みんなが傷をかかえている、それでも前に進まなければいけない。だからこその明るさなのです。ただみんなで恋愛して楽しかったで終わってしまうとこの作品は大失敗だと僕は思います。根底にある作品がしっかりと見えた状態で、明るい部分がみえるように日々努力しています」
近藤合歓「私もその通りだと思います。オープニング・バレエで戦後間もない、暗いイメージが描かれるのですけど、その後一気に曲も服装も、お話もどんどん明るい方向に向かっていきます。その明るさにいくまでに、メインキャラクターだけじゃなく全員が戦争を経験しているのです。何かしらの傷があるからこそ、自分たちで光を見つけなくてはいけないと進んでいく。だから明るく強くなっていけるというのを忘れないようにしないといけないと感じています。すごく愛にあふれた作品だと思うのです。それは家族の愛だったり、友達への愛だったり、もちろん恋人への愛、あとは自分の好きなものに対する愛だったりもそうですよね。戦争という辛い経験があるからこそ、愛に光を見出してみんなで明るい未来へ進んでいくのだろうと思います」

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――戦争といテーマ、ダンス、恋愛模様などいろいろな楽しみ方がると思うんですけど、初上演となる名古屋の皆様にどこを楽しんでもらいたいなどはありますか?
松島勇気「とにかくこの作品は美しい。全てがオシャレ。照明も踊りも綺麗。セットの移動もダンスに組み込まれていて、演じながら役者が運ぶのです。セットも踊るとクリストファーさんが仰ってましたね。そんな視点からでも良いですし、恋模様を楽しんでもらっても良い。その中でこういうテーマが込められているというのがちょっとでも分かってくれたらいいなと思います。戦争をテーマにした!って構えなくて観なくても別にいいですよ(笑)」
近藤合歓「全部話してくれましたね(笑)。後はやっぱりガーシュウィンの音楽がすごく美しいです。踊っている側としてもとても気持ちが良くノリやしです。初めて観る人は舞台の照明やセットだけでも、耳でも楽しめるのじゃないかなって思います」



撮影(舞台写真):
下坂敦俊



(8月14日更新)


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Stage data

劇団四季「パリのアメリカ人」

9月1日(日)よりロングラン
名古屋四季劇場

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